危機対策

南海トラフ大地震で生死を分けるかもしれない「正常性バイアス」の罠と、海溝型地震の特徴

2016年4月18日

東日本大震災の建物倒壊や津波で助かった人と助からなかった人には、ひとつの大きな違いがある。

その違いの秘密は、人間の心理的な特徴である”正常性バイアス”が握っている。

南海トラフ地震はその揺れ方の特徴から「正常性バイアスの罠」にハマらないようにすれば、生存率が格段に上がるはずだ。

南海トラフ地震の揺れ方の特徴と、危険な正常性バイアスについて紹介しよう。

災害時の正常性バイアスとは?

東日本大震災で助かった人にはひとつの共通点がある。

それは大きく揺れた時点で危機を察知し、迷いなく逃げたこと。

揺れた直後に近くの高台に避難して津波の難から逃れることができた、なんて話はたくさんある。

では逆に、なぜ多くの人が地震の後に避難せずに家の中にいて津波や倒壊の被害にあったのだろうか?

それは「これくらい大丈夫だろう」と思っていたから。

この心理が正常性バイアスだ。

 

正常性バイアスとは、人間が大地震などの日常ではありえない災害に襲われた時、先入観・偏見・思い込みの作用で、その災害を正常の範囲内と認識してしまう心のメカニズムの事。

地震大国の日本では地震に対する危機感が薄れていて、大きな地震でも”正常の範囲内”と認識してしまう可能性が高い。

避難勧告が発令されても非難しない人は「まあ、大丈夫だろ、これくらい」と思うだろう。だって生まれてから今まで、ずっと大丈夫だったのだから。

この先入観や思い込みが、逃げ遅れ犠牲者を生むのだ。

 

他人ごとだと思うだろうか?自分は大丈夫だと?

 

正常性バイアスは恐ろしいほどに自分自身を縛っている。

日本に住んでいれば、一度くらいは震度5以上の大きな地震を体験したことがあるはずだ。

その時どう思っただろうか?

「おお~けっこう揺れるな~…(でも大丈夫だろ)」

「避難するまでもないな(ハナクソホジホジ~)」

「やべっこええ~!!(でもこたつに入ったまま避難はしない)」

ほとんどの人が、念のため外に避難したという経験もないだろう。

こう思う事が正常性バイアスなのだ。

 

もちろん、少し揺れたぐらいで「うわ~!!みんなッ!!にげろーーーー!!!」と大騒ぎして、ひとりだけパニックになり一目散に逃げだすのが正しい行動とは言えない。(もし職場や学校だったとしたら「アイツは腰抜け野郎だぜ!」と後ろ指をさされるかもしれない)

正常性バイアスは”パニックを防ぐ”という重要な効果もあるのだ。

しかし、正常性バイアスのせいでいざという時に身動きが取れず、逃げ遅れてはいけないだろう。

少なくとも南海トラフ地震は「正常性バイアスの罠」に注意すれば、被害を最小限に食い止めることが出来るはず。

それは南海トラフ地震が”海溝型地震”だからだ。

直下型地震と海溝型地震

「ドカーン!」とある地域で地震が発生した場合、P波とS波という2種類の地震波が同時に発生する。

P波→振動エネルギーが小さく、スピードが早い。

S波→振動エネルギーが大きいく、スピードが遅い。

地震が発生した場合、まずスピードの速いP波が到達する。これが初期微動だ。その後、数秒遅れて本震であるS波が訪れる。(ちなみに携帯の地震速報はP波とS派のスピード差を利用してるんだよ!)

 

しかし、初期微動と本震がほとんど同時にやってくる地震がある。それが直下型地震だ。

直下型地震は今まさにいる場所の真下が震源。なので、初期微動なくいきなり大きく揺れるという特徴を持っている。(阪神淡路大震災や最近発生した熊本地震も直下型)

 

対して発生したが危惧されている南海トラフ地震は海溝型地震に分類される。

海溝型地震は海の上が震源。なので、震源から陸地にはある程度距離がある。その為、必ず本震の前に初期微動が現れるはずだ。

 

初期微動の特徴は揺れの周期が早く、振動が弱い事。

「あっ…揺れてる??」

カタカタカタ…と家具が少しだけ揺れる。これが初期微動だ。振動周波数が早く小刻みに揺れる。

この後、ドカーン!と揺れる本震がやってくる。

グラグラグラッ!と振動周期がゆっくりとしていて大きな揺れが発生する。

 

初期微動と本震との時間差は、震源との距離で決まる。震源に近ければ近いほど、その感覚は短くなるので、迅速な非難が重要になるだろう。

確かに、初期微動と本震の間隔は、場所によってはほんの数秒のところもあるだろう。しかし、その数秒の判断が生死を分けるかもしれないのだ!!

地震が発生したら!?

「地震が起きたら机の下に潜れ!」

これは現代ではもう正しいとは言えない。なぜ机の下に潜るかというと、家具の倒壊から身を守るため。もし周りに倒壊の危険のある家具がなければ意味がない。また、同様に家自体が倒壊してしまえばひとたまりもないだろう。たとえ耐震構造の家屋だったとしても、100%安全とは限らない。

机に潜っていて避難行動が遅れる方が怖い。

地震直後の正しい行動は、「もし火を扱っていたなら迅速に消す」そして「避難経路を確保する」ということ。

 

少し揺れただけでパニックで逃げてはいけないし、かといってぼけ~っと揺れが収まるのを待ってもいけない。

すぐに家の外に飛び出せるように、玄関のドアを開けておく。火を使っていたら消す。念のためガスの元栓を閉めるのも良い。そして五感を総動員して危険を察知するのが大事。そのため、もし避難バッグを用意しているのなら保管先は玄関が良いだろう。

また、南海トラフ地震は津波被害も想定されるので、初期微動の段階で避難バッグを持って家を飛び出すのも正しい選択肢のひとつだろう。(いきなり飛び出すと上から何か振ってくる可能性もあるので頭をバッグなどでカバーしながら避難)

 

 

迅速に避難を開始するためにも、日ごろから家具の転倒を防止するグッズを使用しておくのは重要。いろんな種類の転倒防止グッズが販売されているので、寝室や避難経路をふさぎそうなところにある家具に取り付けておくのをオススメする。

まとめ

①南海トラフ地震には初期微動があり、その後に本震が来る可能性が高い。津波が来るのはさらにその後。

カタカタカタカタ…と家具は揺れるような小さく早い揺れの地震が起きたら、それは初期微動の可能性がある。その直後に大きな地震が発生するかもしれない。

②小刻みの小さな地震が発生したら、正常性バイアスに惑わされずに迅速に避難を開始しよう。

その揺れはただの小さな地震かもしれない。しかしパニックになって逃げる必要はないが、落ち着いて火を消し、避難経路確保するのをオススメする。そして本震に備える。迅速な避難が自分の身を守る一番の方法なのだ。

 

最近日本はもとより世界中で規模の大きな地震が頻発している。防災グッズを揃えておくのも大事だけれど、避難意識を高めておくのも大事。その避難意識が正常性バイアスの罠にかからないために何よりも重要なのだ。

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