「地球は球体で宇宙に浮かんでいるのではなく平面である!!」
そんな”地球平面説”をネタではなく、冗談抜きで、本気で信じている地球平面論者たちがジワジワと増えているという。
地球平面説の広がりはCNNでも報道されている。
今のところ、信者の数を示す明確な研究結果はない。ワイスさんのような地球平面論者は証拠を示さないものの、隠れ信者の数は数百万人に上ると主張するだろう。その中にはハリウッドの大物芸能人や商用機の操縦士も含まれる。
調査会社ユーガブが米国の成人8000人以上を対象に昨年実施した調査によると、地球が丸いという確信を持てない米国人は6人に1人に上る。ブラジルの成人2000人超を対象に行った別の調査では、地球が丸いという考え方について7%が否定しているという。
参照元:世界に広がる「地球平面説」 その背景にあるものは?(CNN)
たしかに私たちが普段生活する中で、「ああ、地球って丸いんだなぁ」なんて実感する場面に出くわすことはあまりない。
でも、宇宙から見た地球の写真とか、普通に見たことあるでしょ?
…と普通の人は思うだろう。
が、ガチの地球平面論者はそんな画像のすべてを「NASAの陰謀だ!」と一蹴する。
なぜ地球平面説なんてトンデモナイ理論を本気で信じている人たちがいるのか?
その陰にはキリスト教がありそうなのだが…。
地球平面説における地球の形とNASAの陰謀
まずは地球平面論において地球はどんな形をしているのかを簡単に説明しよう。
この宇宙の中心は平面状の地球で、大地の中心は北極となる。
北極を中心として平面に広がるお盆のような大地の上に、地球人全員が生活している。
そのまわりの太陽と月が順番に顔を出す。
で、南極はない。
”南極と思われているもの”は地球の端っこで、分厚い氷の壁によって塞がれている。
円盤状の大地は分厚い氷の壁で囲まれていて、その先に何があるのかはわからない。
これが地球平面説における地球の形状だ。
地球平面説は2015年くらいから少しずつ広まってきたみたい。
2017年にはノースカロライナで「第1回地球平面国際会議」が開催され、数百人の地球平面論者が参加したとか。
地球平面説は科学的には大きな矛盾を抱えている。
水平線に少しずつ消える船が説明できない。
重力が説明できない。
世界各地の時差が説明できない。
”地球の外側”が説明できない。
GPSや人工衛星が説明できない。
それらすべてが”陰謀”で片づけられたり、地球平面説独特の世界観で無理やり説明しちゃったりしている。
なぜこんなヘンテコな理論が広く信じられているのだろうか???
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地球平面説が広がっている理由とキリスト教の関係
地球平面説が広がっているのは、恐らくキリスト教のプロテスタントが大きく関わっている。
キリスト教には大きく「カトリック」と「プロテスタント」の2派がある。
超ザックリとこの2つの宗派を説明すると、長い歴史の中で変化しながら拡大していったのがカトリックで、聖書の教えを忠実に守ろうとするのがプロテスタント。
カトリックにはちょっと悪い部分もあって、信者を増やすために時の権力者を取り込んだり癒着したり、聖書の教えを拡大解釈して捻じ曲げたり、免罪符を発行して金儲けをしたり、組織化して「教皇」という身分を作ったりしている。
そんなカトリックのアンチとして中世に登場したのがプロテスタント。
「いまの教会の言っていることはおかしいよ!正しいのは聖書だろ!!?」
そんな思想。
プロテスタントは「聖書や神様の教えを忠実に守って生きましょう」というコンセプトを持っている。
地球平面説の広がりを聞いたとき、アメリカの進化論についての問題を思い出した。
ちょっと話はズレるけど、進化論へのキリスト教の対応をザックリ説明しよう。
キリスト教の、というか多くの一神教では「世界は”人間のために”神様がお創りになった」という世界観を持っている。
動物も、植物も、地球も、人間のために神様がお創りになった。
星も、太陽も、月も。
石油は太古の微生物や恐竜の化石が長い年月で変化したものなのだけど、太古に栄えた生き物たちも人間のために神様がお創りになったってことになる。
だから「サルが人間に進化した」というダーウィンの進化論は神の教えに反している。
人間は最初から人間として神様がお創りになったのだから。
そんな進化論への対応も、カトリックとプロテスタントは違う。
時代や地域によって柔軟に変化するカトリックは、進化論もぜんぜんOK!!
だけど原理主義的な性格も持っているプロテスタントは、「進化論は神の教えに反する考え方だ!」と否定的。
アメリカはキリスト教の国だけど、北部はカトリックが多く、南部はプロテスタントが多い。
南部の州では州法として進化論を学校で教えることを禁じているところもあるのだとか。
そんなアメリカ南部の聖書を熱狂的に信じる地域をバイブルベルト(キリスト教篤信地帯)なんて呼ぶこともある。
なんか似てるね、進化論と地球平面説。
さらにちょっと話はズレるけど、天動説とキリスト教の関係をザックリ説明しよう。
人類は中世まで天動説を信じてきた。
地球が宇宙の中心で、天体が地球の周りを回っているんだと。
なぜ天動説が長いこと信じられてきたかというと、天動説がキリスト教の教えとマッチしていたから。
星空のすべても、太陽も月も、すべて神が人間のために神様がお創りになった。
当然、人間が住む地球がその中心なのは当然だ。
紀元前のキリスト教が広まる前は地動説の考え方もあったのに、いつの間にか世界の主流が天動説になってしまった。
ある意味ではキリスト教のおかげで科学の発展は遅くなったといえるかもしれない。
天動説と地球平面説も、なんかすごく似ている。
地球平面説は天動説と同じように聖書の教えにマッチしているのだ。
だからこそ、地球平面説は熱狂的なキリスト教信者に広く受け入れられているのではないか。
進化論を、近代科学を否定している層の人たちが、地球平面説を支持しているのではないだろうか!?
それを踏まえたうえで、2017年から毎年開かれている地球平面国際会議の開催地域を見てみよう。
2017年第1回地球平面国際会議の開催地域はノースカロライナ州。
2018年第2回地球平面国際会議の開催地域はコロラド州。
2019年第3回地球平面国際会議の開催地域はテキサス州。
ノースカロライナ州とテキサス州は熱狂的なキリスト教信者が多い南部のバイブルベルトに属しているし、コロラド州もバイブルベルトに隣接したプロテスタントの多い地域。
*信仰する宗教の人口比率
プロテスタント | ローマ・カトリック | |
ノースカロライナ州 | 77% | 10% |
コロラド州 | 44% | 19% |
テキサス州 | 57% | 29% |
地球平面論者は、ただ地球が平らだと信じているわけではない。
「探しても地球が球体である証拠が見つからなかった!」
なんて発言に「なんて非科学的な!愚かな…」と思ってはいけない。
彼らはただ根拠もなく地球が平面であると信じているわけではなく、熱心にキリスト教の世界観を信じているわけだ。
だからどれだけ科学的な根拠を並べ立てて地球が丸いと論じても、彼らにはまるで意味がないだろう。
どれだけ科学的に論破しても、「神を信じる心」を変えることはできないはずだ。
地球平面説とオカルトの関係
進化論の否定と地球平面説は繋がっているのではないか!
というわけで、地球平面説とキリスト教を強引に結び付けて考えてみたけど…
真実は違うかもしれない。
イギリスのメディアが地球平面国際会議に出席したひとたちをインタビューしたときの回答がこちら。
2年前まで地球が平面だとは考えていなかったが、Youtubeで地球平面説を唱える動画を見てから考えが変わった!!
ただ、地球平面説を聞いて「うわ、すげえ!」と納得して信じている人たちもいる。
少数派だと思うけど。
彼らのように純粋にその論を信じている人もいるが、陰謀論と繋げて妄信している人たちもいるようだ。
他の陰謀論を信じていない地球平面論者を見つけるのは至難の業だ。地球平面論者の会議には決まって、ワクチン反対派、米同時多発テロの「真実」を知ると主張する人々、秘密結社イルミナティの会員が集う。
「王族からロックフェラー家、ロスチャイルド家に至る支配階級のエリート。世界を牛耳るこれらの集団は皆、ぐるだ」(ワイスさん)
共通の敵も存在する。「私たちの怒りのほとんどは米航空宇宙局(NASA)に向けられている」(映像作家の男性)。地球平面論者の見方では、NASAこそが陰謀の背後に控える黒幕だ。
参照元:世界に広がる「地球平面説」 その背景にあるものは?(CNN)
同時多発テロは陰謀だった!
世界は一部の特権階級に支配されている!
すべてはNASAの陰謀だ!
そんな説を真面目に信じているオカルティストたちが、地球平面論者には多いという。
今まで地球は丸いと思ってきたけど、それはすべて陰謀だった!!
彼らは地球は丸いと我々に思わせることで、莫大な利益を上げてきたのだ!!!
…と。
真実はどこにあるのだろうか?
世界は神が創ったのか!
ただ宇宙の片隅に浮かぶちっぽけな球体なのか!
陰謀説が本当で、世間は嘘にまみれているのか!
それともこの世界が進歩した文明が作り出したシミュレーションに過ぎないのか!
嘘を嘘と見抜けないといけないらしいけど、科学者が発表した論文や教科書に書いてあること、ニュースの内容が真実とは限らない。
世界は本当に平面かもしれない!!
…とはいえ、今のところ地球は丸くて宇宙に浮かんでいると考える方が享受できるメリットが多いと思うので、素直に「地球は丸い」を信じていいのではないだろうか。
追記:地球平面説を証明しようとしたじいさん、死亡!!
米カリフォルニア州で22日、地球平面説を証明しようとしていたアマチュア宇宙飛行士マイク・ヒューズ(Mike Hughes)氏(64)が、自作ロケットの打ち上げを試みたが墜落し、死亡した。
地球平面説の正しさを自分の目で確かめようと、自作のロケットを作っていたじいさんが、ロケットの墜落で死亡した。
このじいさん、世界まる見え!テレビ特捜部でも紹介されていたことがある。
そこでもロケットの打ち上げに失敗して命からがら生還したのに、ついに死んでしまったようだ。
まあ、遅かれ早かれいつか死ぬだろうな…と思えるようなクオリティのロケットだったのだけれど。
とにかく今頃天国で地球が平面なのか球体なのかを確認しているのかもしれないね。