夏といえば夏休み!!
夏休みといえば海水浴!!
海水浴といえば溺死!!
毎年毎年、正月に餅を喉に詰まらせて亡くなる高齢者がいるように、必ず海水浴の水難事故で亡くなる人がいる。
水難事故を予防し、安全に海水浴を楽しむためにも、日本史上最悪の海難事故である「橋北中学校水難事件」を紹介したい。
橋北中学校水難事件は、海岸で水泳実習を行っていた中学生が”海底から亡霊に引きずり込まれて”次々と溺れ、合計で36名もの死者を出した、心霊事故としても史上稀にみる最悪な事件だ。
本当に海で死者の亡霊に足を引っ張られたのだろうか?
橋北中学校水難事件の真相とはなんなのだろうか!!?
橋北中学校水難事件とは?
36名の死者をだした「橋北中学校水難事件」は1955年、今から60年以上昔に三重県津市発生した。
橋北中学校水難事件の恐怖を語るには、あの恐ろしい太平洋戦争まで遡らなければならないだろう。
三重県津市は太平洋戦争末期、激しい空襲に襲われているのだ。
それは1945年の太平洋戦争時代、三重県津市はアメリカ軍による無差別爆撃に襲われた。この空襲は「津空襲」と呼ばれていて、死者は2,500人は以上にもなり、全損家屋1万戸以上、被災者は1万6千人以上にのぼったという。
津空襲は1945年3月12日に始まり、7月28日まで続いた。最終日の7月28日には深夜に空襲が始まり、津市市街地が壊滅!死者数はたった1日で600人にものぼったという。
炎上する家屋。多数の死者。それは正に地獄絵図であったろう。
激しい空襲が終わった後には多くの人が亡くなり、火葬しきれなかった遺体は津市の海岸に埋められたといわれている。
そのちょうど10年後…
1955年7月28日、津市を再び悲劇が襲う。
その日、地元の中学生が津市の中河原海岸で水泳実習を行っていた。
中河原海岸波は遠浅になっているので、浜辺から離れてもしっかりと足がつく。それに穏やかで波もない。溺れる心配はないので、とても安全な水泳実習に思われた。
しかし、浜辺から50メートルほどの地点で、異変が発生した。
しっかりと足がつくし、海は穏やか、しかし生徒たちが次々と溺れだし、沖へ流されていったのだ!!
「何者かに足首をつかまれた!!」
「黒い塊のようなものが迫ってきた!!」
「防災頭巾とモンペ姿の女に海に引きずり込まれた!!」
溺れたけれども、一命を取りとめた女生徒は、後にこう証言した。
この事故で合計で49名が溺れ、内13名は病院で意識を回復したものの、36名の死者が出る最悪の水難事故となった。
命を取り留めた女生徒の恐ろしい証言から、「幽霊が女生徒たちを海に引きずり込んだ!!」と新聞や週刊誌で話題になったという。
「津空襲で海岸に埋葬された遺体も36体だった」なんて尾ひれの付いた噂話まで流れる始末。
その真相は不明だが、橋北中学校水難事件は日本史上最大の水難事故であることは事実であるし、もしかしたら日本史上最大の心霊事故なのかもしれないのだ!!
橋北中学校水難事件の真相とは?
橋北中学校水難事件はなぜ発生したのだろうか?
本当に幽霊が女生徒たちを海に引きずり込んだのか?
今では、橋北中学校水難事件は離岸流と呼ばれる、沖へと向かう強い海流によって引き起こされたという説が有力になっている。
それ以外にも逆潜流(ぎゃくせんりゅう)や湧昇流(ゆうしょうりゅう)などの潮の流れが原因であるともいわれているし、澪(みお)と呼ばれる海底の窪みが引き起こした渦が原因ともいわれているが、結局のところ何らかの”海流の異常”がこの事件を引き起こしたとされている。
はたして本当にそうなのだろうか?
ホントに強い離岸流が発生していたとしても、子どもでも足がつく遠浅の海で、しかも天候がよくて波が穏やかな日に、50名近くの生徒が同時に溺れるほどの”激流”が発生するだろうか?
当時の記録をもとに推論してみよう。
①被害者は全員女性であった。
②中河原海岸ではちょうど10年前、悲惨な出来事が起きていた。
③離岸流は発生していた。
④幽霊を見たという目撃証言がある。
以上の4つの記録から、あるひとつの事実が浮かび上がってくる。
橋北中学校水難事件の原因…それは集団ヒステリーだったのではないだろうか?
集団ヒステリーは何らかのきっかけで、集団のたくさんの人が同時にヒステリー症状を起こすこと。痙攣、失神、過呼吸、異常な興奮、幻覚や幻聴、恍惚状態、などの症状が発生する。
もし、集団ヒステリーが海の中で起こっていたら?
いくら足の立つ遠浅の海でも、溺れてしまうことは確実だろう。
そして当時の中川原海岸では、集団ヒステリーが起きやすい状況が整っていたともいえる。
①女生徒だけで水泳のテストが行われていた。
当時の中河原海岸では、北側が女子、南側が男子と分けられて、それぞれに水泳のテストが行われていた。
つまり被害が発生したのは、女性だけの集団ということになる。
実は集団ヒステリーは女性の方が起きやすい。しかも精神的に未成熟な中高生の女子。
集団ヒステリーを起こしやすい危険な遊びのひとつに「こっくりさん」がある。こっくりさんは霊を呼んで質問をする遊びだけれど、集中しすぎることやオカルティックな要素によって、集団ヒステリーが起きやすい状況を作り出す効果がある。
実際にかつて、こっくりさんが原因の集団ヒステリーで、女生徒がケガをしたり失神したりして新聞に載った事件が何度も起きている。こっくりさんが流行した昭和の時代だけど。
その殆どの事件で、被害者は女性だ。
また、こっくりさんと似たようなオカルト・ゲームに「チャーリーゲーム」というものがある。これもこっくりさんと似ていて、鉛筆を使って幽霊に質問をするというもの。
海外ではチャーリーゲームで生徒がパニックを起こすという事件が、多数報告されている。海外でも同様に、事件の被害者は女生徒だ。
「女生徒だけの集団」が集団ヒステリーが起きやすい状況を作り出していた可能性はあるだろう。
②中河原海岸ではちょうど10年前、悲惨な出来事が起きていた。
きっと女生徒たちの間では、10年前に自分たちが住む津市に悲惨な空襲があったことを知っているだろうし、中河原海岸にまつわる”怪談”みたいなものもあったのかもしれない。
水泳のテストが行われていた待ち時間に、「ここで昔、たくさんの人が死んだんだよぉ~」「きゃぁぁ~」「こわぁ~い!!」なんていう話をしていたら…?
その恐怖や不安は、ちょっとしたきっかけで爆発する可能性があるだろう。
例えば…
③実際に離岸流が発生していた
女生徒たちが恐怖と不安を共有しているとき、本当に離岸流が発生したらどうなるだろう?
陸地から沖へと向かう流れに足を引き込まれた女生徒が、「きゃあ!!」と叫び声を上げるだけでいい。
或いは、真っ黒い海藻の塊が足に絡みついただけだっていいだろう。
たった一人の女生徒が恐怖の声を上げるだけで、その恐怖は一瞬のうちに集団に伝播し、パニックが巻き起こる。パニック状態の女生徒を見た他の生徒は、ますます恐怖を煽られヒステリーを引き起こすだろう。
「見えない足先には、得体の知れないナニカがいるかもしれない!!」
圧倒的な不安と恐怖!激しい動機と汗で、身体が動かなくなくなる。うまく呼吸ができない。手や足が震える。そのまま失神してしまう女生徒もいたはずだ。いくら遠浅とはいえ、海で失神したらどうなるかは言わずもがなだろう。
離岸流はただのきっかけに過ぎない。女生徒たちは離岸流で溺れたわけではなく、離岸流、或いは何らかの自然現象がきっかけの集団ヒステリーで溺れたのではないだろうか。
④幽霊を見たという目撃証言がある。
「海の中に幽霊を見た」という証言をしている女生徒は、ひとりではなく複数いるという。
もし橋北中学校水難事件の原因が、何らかの異常潮流だとしたら、これらの奇妙な証言は出てこないだろう。
「幽霊を見た」という目撃証言は、集団ヒステリーによる幻覚や幻聴である可能性が高いのではないだろうか。
もし本当にこの水難事故の原因が幽霊だったとしたら、南側の遠浅で水泳のテストをしていた男子のところにも幽霊が現れていたはず。しかし、男子生徒のところに幽霊は現れていないし、女生徒を助けに海に飛び込んだ先生たちも目撃していない。
このことからも、これらの事故の原因が、思春期の女性特有の強い感受性と協調性が引き起こした集団ヒステリーである可能性が高い。
もちろん、本当に幽霊が現れて女生徒たちを海に引きずり込んだ可能性もゼロではないだろうが…。
事件は週刊誌によって怪談に変化した
「36名の死者が出る最悪の水難事故の原因は集団ヒステリーであった」という予測したわけだけど、その真相はわからない。
実際は”みお”や”離岸流”かもしれないし、もっと他の原因の可能性だって大いにある。
だけど、この事件が恐怖の怪談として語り継がれていくようになった原因は明確で、当時の週刊誌の力が大きく働いている。
週刊誌は事件発生の直後から「10年前の同じ日に空襲があった」という偶然と海難事故を結びつけて、「水中から空襲で亡くなった人たちが引きずり込んだ」という話を面白おかしく書き立てた。
その日の授業で一緒に海に入っていた女生徒が、当時の週刊誌のインタビューを受けている。
「何者かに足首をつかまれた!!」
「黒い塊のようなものが迫ってきた!!」
「防災頭巾とモンペ姿の女に海に引きずり込まれた!!」
溺れたけれども、一命を取りとめた女生徒は、後にこう証言した。
このように先ほど紹介したが、実はこんなことを生き残った女性とはひとことだって言っていない。
なのに発売された週刊誌の紙面では「彼女が何かに足首をつかまれて引きずり込まれそうになった」というような怪談ストーリーがでっち上げられていたという。
「面白ければ嘘を書いたって良い」
今の週刊誌と変らない、そんな考えがこの怪談を作り上げたのだ。
海水浴は気を付けよう!!!
私も昔、海水浴で溺れかけたことがある。
しばらく波に揺られてフラフラしていたら、いつの間にか足のつかない場所まで流れていた。
そのときはやたらとボディボードが流行していて、沖に流されそうになっていたところをボディボードに乗っていたおっちゃんに助けられた。あの時、ボディボードが流行していなければ、今頃私は海の藻屑になっていただろう。
ありがとう。見知らぬおっちゃん。
ちなみに、海へと引きずり込もうとする幽霊を目撃はしなかった。そこで昔、たくさんの人たちが死んだ歴史があるのかはわからないが、泳げないんだからそりゃ溺れる。
この体験から言わせてもらうと、海水浴は意外と死ぬ。
それを踏まえたうえで、しっかりと安全に留意して海水浴を楽しもう!!
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