2016年4月に発生した熊本地震は、まずM6.5の大きな地震が発生し、その後それよりも規模の大きなM7.3の本震が発生した。
熊本地震は「巨大地震の後には、それより小さい規模の余震が続く」という地震の常識を覆してしまったのだ。
気象庁は熊本地震が発生した際に「今後3日間に震度6弱以上の余震が起きる可能性は20%」と公表した。しかし、すぐさまM7.3の本震が発生し、この発表が原因で被害が拡大したかもしれないと非難されることになる。
この経験を踏まえて、余震の確率をパーセント表記から倍率表記に変更するという。
「余震の確率は10倍です」
そう言われても、なんのこっちゃわからい。
倍率表記の正しい意味や読み方を紹介しよう。
地震の発生を"倍率"で発表するとはどういうことなのか?
先の熊本地震では、「今後3日間に震度6弱以上の余震が起きる可能性は20%」と気象庁が公表し、「余震20%?それなら大丈夫!」と安心して自宅にとどまった人が、その後やってきたM7.3の大地震で被害に会うという事態になった。
この事例ように、余震の確率を発表したとしても、それがかなり低い確率の”安心情報”として捉えられてしまうことがあったのだ。
それを改善するために、これからは地震の発生リスクをパーセントではなく倍率で表現するという。
具体的には下記のように発表内容が変更される。
地震発生直後は、基本的に最初の大地震と同程度の地震への注意を呼びかける。(今までは巨大地震の後の余震は、本震より小さいものという考え方だった)
地震発生から1週間程度経過した後は、上記に加え、余震確率に基づいた数値的見通しを加える。
最大震度○以上となる地震の発生確率は「当初の1/○程度」「平常時の約△倍」といった表現での発表。
これって、めっちゃわかりずらい。
当初の1/○程度って何?
平常時の△倍?
これがどういう意味を持つのか、わかりやすく説明しよう。
大きな地震が発生した場合、防災活動の参考にするためにも、地震調査委員会はある程度規模の大きな地震の発生確率を計算して発表する。
例えば大きな地震が発生した後に「余震の確率は30%」と発表したとしよう。それは、地震発生からだいたい3日以内に発生する大きい余震の確率を意味している。これからは、最初の地震と同じくらい大きな規模の地震についての注意喚起も同時に行われる。
そうして一週間が経過した後は、余震の確率が倍率表現になる。
「当初の1/○程度」というのは、”地震発生から3日以内に余震が発生する確率”がどれくらいの割合で減少したのかを指し示す。例えば余震の確率が30%で、一週間後に「当初の1/2程度」と発表されれば、余震の確率は15%に減少したということになる。
しかし地震の確率をパーセントで表示されても、それがどれくらい危険なのかはわからない。
3日に1回地震が発生しているような地震多発地域だとしたら、余震の確率30%という発表は「日常」ってことになるだろう。
地震の危険性をよりわかりやすくするために、パーセントではなく「平常時の約△倍」という倍率表現も併せて発表するる。もし余震の確率が10%であったとしても、「平常時の10倍」という表現であれば、まだまだ油断できない状態であることが一目瞭然だろう。
最大震度5以上となる地震の発生確率は「当初の1/3程度」「平常時の約20倍」です。
と、これからはこのような表現で注意喚起されることになる。
今までとは違い「マグニチュード→震度」「余震→地震」へと表現を変えて発表されるようになるのも注目だ。
マグニチュードよりも”震度”で表現したほうが、より地震による被害をイメージしやすいので、これからは積極的に”震度”を使っていく。また、今までは「余震の発生確率は…」と表現していたところを「地震の発生確率は…」という風に変更している。余震という言葉は、規模が小さい地震というイメージがあるが、次に起こる地震が規模が小さい保証はどこにもないからだ。
地震の確率は天気予報とは違う
「降水確率は30%です」という天気予報だったら、「まあ、ほとんど降らないだろうな」と思っちゃう。
地震の確率も同じで「地震の確率は30%です」と言われると、「30%だったらほとんど発生しないだろうな~」って無意識に思ってしまうだろう。
これは、結構危険だ。
そこを「地震の確率は30%です」ではなく「平常時の約20倍です」と表現されたら、「えっ!20倍!?ちょっとヤバいな~」と思ってしまうはずだ。
地震の確率を倍率で表現する意味が広く知れ渡れば、防災意識も高まるのではないだろうか。