臨死体験とは人間が死の危機に瀕した時に体験する不思議な現象の事。
世界中にはいろんな国があり、文化や宗教があるが、この臨死体験には驚くほどの共通点がある。
それは何故なのだろうか?
臨死体験をした芸能人の体験談と共に、臨死体験の正体を様々な角度から検証してみよう。
一般的な臨死体験の体験談
「あぶねぇなぁ~まったく」
よしおは呟いた。
交通量の多い道路に隣接した公園で、無邪気にボール遊びをしてるこども。それなのに、親達はおしゃべりに夢中だったからだ。
なんとなく視線をこどもに向けながらも、その公園の横を通りかかる。すると、そのこどもが誤ってボールを変な方向に蹴ってしまった。
「あっ!」と思う間に道路に飛び出すこども。
キキキキーーッ!!!
迫りくるトラックのブレーキ音が響き渡る。
「くそっ!!!」
とっさにトラックの前にダイブし、こどもを胸の中に抱えた。
ドーン!!
激しい衝撃音と共に、全身に振動が。
…そしてよしおの意識は暗い闇の中に沈んだ。
ふと気づくと、そこは真っ暗な空間だった。
その真っ暗の中にポツンと光が。
光に導かれ、トンネルのような真っ暗な場所を抜ける。するとそこには、光に包まれた花畑が広がっていた。
地平線まで見渡せるような花畑には、いろんな色の花がそよかぜに揺らいでいる。
すると遠くに流れる川が見える。そこまで歩くと、こどもの頃に亡くなった祖父と飼っていた犬のポチが。
「じっちゃん!!」
「おお、よしお。大きくなって、まあ。でもな、お前はまだこっちに来るには早すぎる。戻るんじゃ~」
「わんわんわん!」
「ポチもいる!うわぁ~元気?…でもじっちゃん、どういうこと?」
悲しそうな、それでいて嬉しそうな顔で親指を立ててグッと突き出し、見つめてくるじいちゃん。
「くう~ん!」
ポチが鳴く。
すると唐突に、後ろから自分を呼ぶ声が。
「よしお!よしお!!」
ふり返ると、次の瞬間に景色が一変し、まばゆい光に包まれる。よしおはあまりの眩しさに目を瞑った。
…そうして再度目を開けてみると、そこは救急病院のICU。目の前には泣きながら自分の名前を叫ぶ母親と恋人の姿、そしてその隣にはボールで遊んでいたこども。
よしおはトラックにはねられるが、奇跡的に生還したのであった。
…というストーリーが、世界各国に共通する臨死体験のもっともポピュラーな内容だ。
ベルギーのリエージュ大学では、臨死体験をした154人の協力者の体験談を分析した。
その結果、臨死体験にはある種のパターンがあることが発見された。
- 平和な気持ち(80%)
- 明るい光(69%)
- 人との出会い(64%)
- 未来予知的なビジョン(4%)
日本でも外国でも、臨死体験のビジョンはあまり変わらないみたいだ。
また、アメリカの心理学者レイモンド・ムーディは、九死に一生を得て臨死体験をした人たち150人から話を聞いて、臨死体験には9つのパターンがあることを発見した。
- 奇妙な音を聴く
- 表現しようのない安らぎと無痛感
- 体外離脱体験
- 暗いトンネルを通って行く感じ
- 天に上っていく感じ
- しばしば死んでいる親類に出会う
- 神のような精神的な存在との遭遇
- 生涯の回想
- 肉体への回帰
日本の臨死体験もだいたい同じだから、「臨死体験」というのは人類共通のなにかがあるのだろう。
そんな臨死体験は、多くの芸能人も実際に体験している。
臨死体験をした芸能人の体験談
ビートたけしの臨死体験
ビートたけしは1994年にバイクに乗っていて事故を起こし、生死の境をさまよった。
その際に、なんと臨死体験をしていたとか。
「街灯の下に倒れてたわけ。それで(車にひかれず)助かったんだけど。あとで麻酔打って手術するときに夢だか何だか知らないけど、上から自分が倒れてるのを客観的に見たような気がする」
ビートたけしはこんなウソをつく人ではないし、臨死体験も脳の錯覚だと思ってる。
だけど、それでも幽体離脱っぽい体験をしちゃうわけだ。事実として。
加藤茶の臨死体験
加藤茶が体調不良で入退院を繰り返していた時期のこと。
たくさんの薬を服用していたのだけれど、その中のひとつが自分の体質と会わずに、なんと死にかけたという。
そのときに、恐ろしい臨死体験をしたとか。
「三途の川で向こう岸に、長さんが見えて、慌てて引き返したの!!」
ドリフターズのメンバーは、厳しくてギャラの分配もガッツリ持っていくリーダーのいかりや長介に不満を持ちつつも、頭が上がらない状態であった。
そんな長さんを見て引き返せたからこそ、今の自分は生きている。
冗談交じりでホントかウソかもわからないけど、もう亡くなったいかりや長介に感謝の気持ちがあるのはホントなのではないだろうか。
千原ジュニアの臨死体験
千原ジュニアもビートたけしと同じように、2001年にバイク事故を起こして4日間意識不明の重体。生死の境をさまよったことがある。
そこで夢と現実が混ざり合ったような、奇妙な臨死体験をしたとか。
なぜか、千原ジュニアは吉本社内の広報にいる。
そこにはマンスリーよしもとという雑誌に使う芸人の写真がたくさん。
その写真の中に、リットン調査団の二人がヘンテコなお花の格好をしてるコントの写真があったという。
「うわ、これ面白そうなコントだな~見たいな~」
と思って吉本から帰ろうとして、その途中で事故にあってしまう。
するとお花畑でお花の格好をしたリットン調査団が、スローモーションで走ってくるという驚くべき展開に。
リットン調査団は「こっちこい!こっちこい!」と千原ジュニアに語り掛けるけど、「ぜったいに行ったらあかん!!」と思う。
それで目が覚めると。
すさまじく変な状況であるものの、「知人がでてくるけど行っちゃだめだと戻ってくるパターン」のひとつだ。
一説には、心肺停止状態から蘇生した人の20人に1人くらいは、何らかの臨死体験をしているとか。
なぜ、臨死体験は起きるのか?
それは死後の世界を垣間見ているのだろうか??
臨死体験のメカニズムとは?
世界中の神話や言い伝えの中に「洪水による破滅」が描かれている。地域的に遠く離れていて、まったく別の文化、宗教なのにもかかわらずだ。
それと同様に、人種・文化の違いにもかかわらず、人間が体験する臨死体験には驚くほどの共通点がある。
- 自分の姿を空から眺める
- 自分の人生の走馬燈を見る
- 安らぎに包まれる
- トンネルを抜ける
- 大きな川が流れている
- 光につつまれる
- 亡くなった人達に会う
なぜこんな共通点があるのか?
理由はふたつしか考えられない。
①世界共通のシステムとして、そういった世界がある。
②人間共通のシステムとして、そういった体験をしている。
このどちらかだろう。
世界共通のシステムとして、そういった世界がある。
死後どうなるのか?
あるいは本当に、ダンテが旅したようなサタンのいる地獄があるかもしれない。
閻魔様がいて鬼たちが拷問に精を出す地獄かもしれない。
ソウルソサエティみたいな感じの世界があるのかも。
宗教によっては死後の世界を認めていないところもあるだろう。
文化や人種、国によって死後の世界の解釈は千差万別。
でも実は、全世界で共通の死後の世界がホントに存在して、そこに至る道こそが臨死体験の正体…なのかもしれない。
だとしたら、世界中の人間が臨死体験として共通の風景を見るのも納得できだろう。
脳のメカニズムが臨死体験を作り出している3つの説
「臨死体験は人間の生理現象のひとつ」といった考え方があり、専門家は様々な仮説をたてている。
それらの仮説を紹介しよう。
エンドルフィンによる幻覚説
心肺停止!ヤバい!!もう死ぬかも!!!
そんな人生最強の緊急事態に脳もパニック!
しかし生き残るために、猛烈に活動を開始するのだ。
その脳の活動が、臨死体験をさせているのだとか。
実際、心肺停止になると、脳が普段よりも活発に活動するという事が実験で判明している。
死に瀕して脳が酸欠状態。
すると、酸欠や死へのストレスを緩和するために、脳内物質のエンドルフィンがドバドバと大量放出!
その結果、痛みや死への恐怖などの感情が和らぎ、様々な幻覚を見るという説がある。
側頭葉の過活動説
また、脳の側頭葉の影響も考えられれる。
側頭葉は感覚情報や記憶の処理を司る部位。
ここが心肺停止状態による酸素欠乏で異常な働きを見せると、奇妙な幻影や声を感じる可能性がある。
また側頭葉には”シルビウス溝”という部位があり、そこが刺激されると幽体離脱と似た幻覚を見るともいわれている。
もしかしたら瀕死の状態による脳内の変化で、このシルビウス溝が刺激されている可能性もあるだろう。
麻酔の影響説
病院で使用する麻酔薬、これもまた幻覚を引き起こす可能性がある。
たとえば劇薬のケタミンは大脳皮質の働きを抑制し、大脳辺縁系を刺激する。
この作用で幻覚や夢を見ることが多いとか。
ケタミンに限らず、多くの麻酔薬は脳全体の働きを抑制する。
それらの影響であり得ないような奇妙な夢を見てしまい、それが臨死体験に繋がっている可能性もある。
おしっこがしたいときにびしょ濡れになる夢を見ちゃうように、眠っているときの状態は夢の内容に大きな影響を及ぼす。
死にかけている緊張状態に見る夢は、いわゆる臨死体験っぽいものが多くなる。
他にも臨死体験の原因として様々な説が考えられているが、完璧に臨床実験を説明しているものは今のところ存在しない。
死の危機に瀕した脳の活発な活動が臨死体験の正体であれば、世界中の人間が臨死体験として共通の風景を見るのも納得できだろう。
ちなみに「死の直前に脳が活性化する」という現象は、マウスの実験でも確認されている。
マウスを使った最近の研究によると、心臓が完全に停止した後も脳内では複数のフェーズに分かれた活動のバーストが見られた。
その結果起きる幻覚が、臨死体験の原因とされている。解離性麻酔薬の一種のケタミンを人間に投与すると、体から離脱したりする感覚やスピリチュアルな体験や幻視や記憶の蘇りが見られるという研究結果もある。
参照元:臨死体験の謎を解く「脳内ドラッグ」 死の直前30秒間に放出(Forbes)
世界中に伝わる死後の世界や臨死体験は、脳の機能が見せた幻想なのかもしれない。
死ぬのって怖くない?
もしホントに全世界共通の死後の世界があるとしたら?
臨死体験の幸せな光に包まれる印象から推察するに、きっと楽しい世界に違いない。
もし人間の生理現象や脳の錯覚として臨死体験があるとしたら?
脳内物質のおかげで、死ぬ瞬間ってのは孤独で怖いものじゃなく、幸せな感覚に包まれているに違いない。
どちらが正しいのかわからないし、そのどちらも違っているのかもしれない。
でも考えてみると、人間最大の恐怖である”死ぬ”という事も、そう悪いもんじゃない気がしてこないだろうか?
いやいや、やっぱり怖いですよ~!!