まずは、ファミリーレストランでのあるカップルの会話を聞いていただこう。
よしお「え~っと、どれ食べたい?オレは…カルボナーラにしようかな」
よしこ「え~迷っちゃうなぁ~よしこはねぇ~山菜うどんにするぅ~」
…たまにいる、自分の事を三人称で呼ぶ女子。
なんとなく、相手の男性にか弱くて幼い印象を与え、庇護欲をくすぐる。ロリコン傾向のある男性にはモテるかもしれないけれども、同性からは「なにかわいこぶってんの!!」「女子といるときは”俺”っていってるのに!!」「家じゃステテコで生活してるくせに!!」なんて陰口をたたかれるかもしれない。
そんな自分の事を名前で呼ぶ人たちだけど、実は自分の事を”わたし”とか”ぼく”という風に一人称で呼ぶ人よりもメンタルコントロールに優れている可能性があるというのだ。
自分の事を三人称で呼ぶことのメリットについての研究を紹介したい。
自分の事を名前で呼ぶ人のメリット!!
怒りやイライラなど、ネガティブな感情はできればすぐに手放したいものだが、なかなか難しい。しかしこのほど発表された実験で、自分に対して「三人称」で語りかけるだけで感情のコントロールがずっと楽になることが分かった。実験はミシガン州立大学とミシガン大学の心理学者が行なったもので、科学系の米ニュースサイト「サイエンス・デイリー」が伝えた。
例えば、ジョンという男性がいたとする。最近恋人に振られてしまい、気持ちが動揺している。ここでジョンが自分の感情に向き合い、「俺は何で動揺しているんだ?」と一人称で自問するより、「ジョンは何で動揺しているんだ?」と三人称を使って自分に語りかける、という具合だ。
ミシガン州立大学で心理学を教えるジェイソン・モーザー准教授によると、心の中の独り言を前述のように三人称にすることで、自分自身のことでありつつ他者を見るような距離感を作ることができるのだという。自分の体験から心理的な距離感を作ることで、感情がコントロールしやすくなるのだ。
参照元:自分に「三人称」で語りかけるだけ! 効果的な感情コントロール法(ニューズウィーク)
この研究によると、自分の事を名前で呼ぶことで、感情に関する脳の領域の動きが急速に低下するという。
これは一人称と三人称の”感情との距離感の違い”から表れている。
ケーキの大好きなこうたろう君が、大好物のケーキを食べた後の感想をこう述べたとする。
こうたろう「わたしは今日ケーキを食べて、とても美味しいと感じた」
こうたろう「こうたろうは今日ケーキを食べて、とても美味しいと感じた」
”わたし”を使った方が”ケーキが美味しい”という感情と近い印象がある。対して三人称を使うと、どこか客観的で俯瞰的に物事を見ているような表現になる。そのため、「ケーキが美味しかった!」という感情が揺さぶられることが少なくなる。三人称を使うことで脳の感情領域が低下するという実験結果も、なんとなく納得してしまう。
心の中の独り言を三人称にすれば、少しだけ冷静に物事を考えられるってわけだ。
だとしたら、口に出す言葉も三人称にすることで、より感情的にならずに理論的に物事を考えられる可能性がある。
自分のことを名前で呼んで感情をコントロールしよう!!
普段から自分の事を名前で呼ぶことによって、感情との距離を適切に保つことができれば、感情のコントロールもやりやすくなる。
「みさちゃん怒っちゃうぞ~!!プンプン!!」
こういったセリフは、ミサちゃんこと美咲さん自身と、美咲さんが感じている怒りの感情に適当な距離が保たれていて、話し合いで理解し合える余地があると考えられる。
「このケーキ超おいしーー!ゆいなこれ、大好き!!」
こういったセリフは、結奈さん自身と、結奈さんが感じている感情に適度な距離が保たれている。それによって、おいしい食事に夢中になることなく、男性にとってかわいく見える仕草を冷静かつ的確に行うことができるだろう。
また、落ち込んだ時も心の中のつぶやきも意識的に三人称にすることで、心へのダメージを軽減し、感情をコントロールしやすくなる可能性がある。
仕事で大失敗して超怒られた時に、「俺ってダメな奴だなぁ~。ああ、もう仕事するの嫌だ…」と思うと、より落ち込むし、よりしんどくなる。
それよりも「聡一郎はダメな奴だなぁ~。ああ、聡一郎は仕事をするのが嫌だ…」と思うと、少しだけメンタルへのダメージが軽減され、リカバリーまでの時間が短縮されるかもしれない。
逆に嬉しい事や楽しいことは、一人称を使うことでよりダイレクトに強い感情を感じられるだろう。
「私は超嬉しい!!」
「ぼくたちはサイコーに楽しい!!」
嫌なこと、辛いこと、恨みごとなど、いろんな悪い感情は三人称で表現することで感情と距離をとれる。
感情の起伏が激しすぎて自分自身にうんざりしているような人は、試しに心の中で考えるときにわざと三人称を使ってみるのがいい。普段の会話でも自分の事を名前で呼べば、より感情をコントロールできるようになるだろう。
それにしても、自分の事を名前で呼ぶぶりっこ(死語)は計算高いといわれているが…感情に振り回されずに冷静にコミュニケーションをとっているのだとしたら、ある意味では正しいのかもしれない。
そんないつも自分の事を名前で呼んでいる冷静なぶりっこ女子が、突然”わたし”という一人称で話し始めたとしたら…それは本気で本音を話しているというサインなのではないだろうか。