危機対策

スーパーサイクルによる南海トラフ巨大地震はいつ頃発生するのか??

2018年6月22日

次に発生する南海トラフ地震は、今までになく規模が大きく、その被害も想定を超えるかもしれない。

その理由は、次の南海トラフ地震がスーパーサイクルのタイミングで発生する可能性があるからだ。

 

超巨大地震の発生と関係する「スーパーサイクル」という考え方は、2004年のスマトラ沖地震をきっかけにしてアメリカの研究者が提唱し始めた。

巨大地震は同じ地域で繰り返し発生するが、その繰り返しの間にも”ひずみ”は蓄積され続け、何度かに1度、今までの規模を遥かに超える超巨大地震が発生するという。

これがスーパーサイクル。

2011年に発生した東北地方太平洋沖地震は、まさにスーパーサイクルで引き起こされた超巨大地震であった。

 

このスーパーサイクルによって引き起こされる地震で、今の日本で最も危惧されるのが南海トラフ巨大地震だろう。

 

南海トラフ地震は100年~150年の周期で発生するといわれてきたが、最新の研究によると、それよりも長いスパンで、さらに巨大な地震が発生する可能性があるという。

その超巨大な南海トラフ地震は、周期的に見ていつ頃に発生するのだろうか?

東北地方太平洋沖地震が普通の地震と違う2つの点

地震のスーパーサイクル理論を理解するには、2011年の東日本大震災で発生した東北地方太平洋沖地震の事例を見るのが最適だ。

まずは、地震が発生するメカニズムを簡単に説明しよう。

同じ地域で地震が繰り返し発生するのは、地下深くの地盤に圧力がかかって”ひずみ”が溜まっているからだと考えられている。

このひずみを生み出すのが、1年に数センチづつ動き続けるというプレートだ。

プレートとプレートがぶつかり合う場所では少しずつ、でも確実に”ひずみ”が溜まりづけ、その”ひずみ”が限界に達した時に、蓄積されたエネルギーが爆発して地震が発生する。

 

プレート同士がぶつかり合って境界線にエネルギーが蓄積される→ギリギリの限界を超えて地盤が破壊される、或いは大子ぼな”ズレ”が生じて巨大地震が発生する→大地が大きく揺れてエネルギーが解放される

 

このようなメカニズムによってプレートとプレートの境界線にある地域は、ある一定の期間を置いて地震が繰り返し発生することとなる。

日本は「太平洋プレート」「ユーラシアプレート」「北アメリカプレート」「フィリピン海プレート」の4つのプレートが重なり合っている、世界的にも珍しい地震大国ってわけだ。

 

しかしながら2011年の東日本大震災は、このプレートテクトニクス理論では説明できないほどのトンデモナイ巨大地震であった。

 

近年の宮城県沖の巨大地震の時期と規模を見てみよう。

発生時期規模
1835年7月20日M7.0前後
1861年10月21日M7.3
1897年2月20日M7.4
1933年6月19日M7.4
1937年7月27日M7.1
1978年6月12日M7.4
2005年8月16日M7.2
2011年3月11日M9.0

宮城県沖は平均すると約37年のサイクルで巨大地震が発生しているという。

しかしながら、2011年の東北地方太平洋沖地震は2つの点で今までの地震とは違っている。

 

ひとつめはスパンが短いということ。

2005年のM7.2の地震からわずか6年しか経過していない。

2005年に地震が発生してひずみが解放されたと考えれば、たった6年で大規模な地震が発生するのはおかしい。

 

もうひとつが地震の規模だ。

以前の地震はその殆どがM7.0くらい。対して東北地方太平洋沖地震はM9.0。

マグニチュードは1違うと、そのエネルギー規模は30倍も増える。M9.0の地震は、M7.0の地震に比べると単純計算で900倍もの規模になるのだ。

これは過去の地震と比べてもとてつもなく異常な事態と言えるだろう。

 

この東日本大震災における2つの異常事態を明確に説明するのが「地震のスーパーサイクル理論」だ。

巨大地震は繰り返し発生するけれど、それで完全に”ひずみ”は解放されず、蓄積され続ける。そうして何度かに1度、今までとは比べ物にならない規模の超巨大地震が発生する。

これがスーパーサイクルという考え方。

 

2011年の東北地方太平洋沖地震が今までとは違うサイクルで発生したこと、そしてあり得ないほど大規模であったことも、それがスーパーサイクルによって引き起こされた地震であったとしたら説明がつく。

 

そこで気になるのが「次にスーパーサイクによって引き起こされる超巨大地震はどこで、いつごろ発生するのか?」ということだ。

日本においては具体的に2つの地域が危険視されている。

スーパーサイクルによって引き起こされる巨大地震はどこで発生するのか?

スーパーサイクルによって引き起こされる地震、その危険地帯は「北海道東方沖」と「南海トラフ地域」のふたつだ。

北海道東方沖はスーパーサイクルによる地震が約400年のスパンで発生している。

今現在、その400年はすでに経過していて、いつ超巨大地震が発生してもおかしくない状態に突入しているという。

政府の地震調査研究推進本部も、北海道東方沖で巨大地震の可能性が高まっていることを発表している。

詳しくはこちらで→北海道東方沖に超巨大地震が迫っている!?その発生確率と気をつけるべきこと。

 

北海道東方沖も危険だけれど、人口が密集した地域がダイレクトに被災する南海トラフもかなり危険だ。

南海トラフの”普通の大地震”の周期は100年~150年といわれている。

  • 684年 白鳳地震
  • 887年 仁和地震
  • 1096年 永長東海地震
  • 1099年 康和南海地震
  • 1361年 正平南海地震
  • 1498年:明応地震
  • 1605年:慶長地震(M7.9)
  • 1707年:宝永地震(M8.6)
  • 1854年:安政地震(M8.4)
  • 1944年:東南海地震(M7.9)
  • 1946年:南海地震(M8.0)

その中でもスーパーサイクルによって引き起こされたとされるのが、1707年の宝永地震

宝永地震は、東海地震、東南海地震、南海地震という3つの地震が同時多発的に発生したとされていて、他の地震よりも一回りデカい地震であった。

  • 東海大地震(静岡沖)
  • 東南海大地震(三重・和歌山沖)
  • 南海地震(徳島・高知沖)

これらの3つの地域の地震が連動したとしたら、そりゃあヒドイ地震であったろう。

 

地震の専門家である産業技術総合研究所の宍倉正展氏によると、スーパーサイクルによる南海トラフ地震は約400年~600年周期で発生しているという。

宍倉さんが橋杭岩の貝殻の年代測定をした結果、宝永地震を起点として遡ると約400年から600年周期で大規模な地震による大津波が複数回起きていることを突き止めたのです。

「前回のスーパーサイクルの巨大地震は宝永地震かもしれない。次の南海トラフ地震は(宝永・1707年から)300数十年(経ったとすると)、(400~600年周期に)短いかもしれないが、(スーパーサイクルに)なってもおかしくない」(宍倉正展さん)

参照元:【特集】南海トラフ地震の「スーパーサイクル」とは? 次は超巨大津波の可能性も

現在は、1707年の宝永地震から約310年ほど経過している。

「スーパーサイクルの周期は400年~600年なのでちょっと短いかもしれないけれども、今発生してもおかしくない」と宍倉氏はおっしゃっているけど…

 

あと90年くらいは大丈夫ってことではないだろうか!?

もちろん、普通の大地震は発生するかもしれないが。

 

まあ、そんな楽観的な考えは置いておいて、もうひとり、南海トラフでのスーパーサイクルを危険視している専門家がいる。

高知大学名誉教授の岡村眞氏だ。

岡村名誉教授は西日本の地質を調査することで、過去3500年もの南海トラフ地震の歴史をひも解くことに成功した。

 

…その結果は恐るべきものだった。

 

なんと、今から約2000年前に、宝永地震の2倍以上の規模の津波を引き起こした超巨大地震が発生していたという。

宝永地震の堆積物は30センチ、対して2000年前の地震での堆積物は70センチであったのだ!!

70センチの堆積物が発生するほどの地震なんて、想像するだけで恐ろしい。

 

①宝永地震レベルの超巨大地震は300年~700年程度のスパンで発生している。

②宝永地震よりも遥かに巨大な地震も2000年前に間に1度だけ発生している。

 

この岡村名誉教授の調査によって2つの事実が導き出された。

1707年の宝永地震から310年経過している現在は、300年~700年という発生スパンに突入している。

そう考えると、南海トラフ巨大地震はいつ発生してもおかしくないといえるだろう。

追記:1800年前にも巨大地震が!

もし南海トラフ巨大地震が発生したとしたら、その震源域に近い和歌山県はかなりの被害を受けることが想定される。

そんな和歌山県の最南端、串本町には笠嶋遺跡がある。

笠嶋遺跡をよ~く調べると、1800年くらい前に大量の土砂が堆積していて、当時の集落が崩壊していたことがわかった。

この集落が崩壊したのは、1800年前にスーパーサイクルによって引き起こされた南海トラフ巨大地震が発生した可能性がある。

或いはそれは、先ほど紹介した「2000年前の巨大地震」と同じものなのかもしれない。

 

研究者はこの地質をボーリングし、約7500万年前までさかのぼって馳走を調べてみた。すると100~150年の感覚で隆起と沈降を繰り返していることがわかった。

これは定期的に発生した南海トラフ地震の影響であった可能性があるという。

南海トラフ地震は定期的に発生していて、次の地震は迫ってきているのかもしれない。

結局のところ南海トラフ巨大地震はいつごろ発生するのか?

地震の研究は、研究者によってそれぞれに見解があり、どれが正しいとは言えない。

「地震は周期的に発生しない」とする専門家だっているし、地震の発生メカニズムは未だにわからないことだらけだ。

起点となる宝永地震もスーパーサイクルによって引き起こされているかは不明だし、ホントにスーパーサイクルがあるのかもわからない。

だけど、いつか必ず地震は発生する。

 

南海トラフにおけるスーパーサイクルの周期は、400年~600年という説と、300年~700年という説の2つがあった。

どちらにしても、その周期には幅があり、正確に発生を予測することは難しいみたいだ。

 

でも、なんとなく1707年宝永地震からみると、310年経過した現在はスーパーサイクルの周期に入ったばかりという印象を受けなくもない。

 

ひょっとしたら、あと100年くらいまったく地震が起きないかも…?

なんて思っていて、いきなり明日発生する可能性もゼロではない。しかも、2000年前のレベルの巨大地震が。

あの、東日本大震災がそうであったように…。

 

結局のところ、いつでもどこでも油断はできないし、日本に住んでいる限り地震への備えは必要不可欠なようだ。

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