日にち薬(ひにちぐすり)という言葉を知っているだろうか?
「身体に負った怪我も、心の傷も、時の経過によって次第に癒えていくよ」といった意味だ。
確かに時の流れで傷は自然治癒するし、記憶は曖昧になっていく。
時間は心の傷を癒してくると、だれしもが思っているはずだ。
「時間が癒してくれるはずさ…」
「10年後には笑い話になるよ」
深く傷ついてしまったときに、そんな風に慰められたことがあるかもしれないし、誰かを慰めた経験もあるかもしれない。
しかし実際のところ、そういった考え方は間違っているのかもしれない。
心理学の研究で「時間は心の傷を癒さない」という事実が判明したのだ。
その研究結果と、心の傷を癒すための最も有効な方法をお伝えしよう。
時間は心の傷を癒さないのか!!?
米心理科学会誌「Perspectives of Psychological Science」(心理科学の視点)に掲載された最新の研究結果によると、時間が人を癒す効果はないことが確認された。アリゾナ州立大学の研究チームによれば、一般的に人には、それほどの自然治癒力はない。
そのため、自然災害や長期の失業など、人生を変えるような出来事を経験した場合、回復するまでに予想以上の時間がかかる可能性も十分にある。研究によれば、人生にストレスをもたらす要因は健康状態を大幅に悪化させることがあり、その状態は数年にわたって続くこともあり得る。
参照元:「時間は心の傷を癒さない」、米研究で明らかに(フォーブスジャパン)
普通の人のメンタルは、今まで考えられてきたほどの自然治癒力はない。
心に深い傷を負った場合、時間が解決してくれるとは限らないというのだ!
確かに強烈にショックを受けた出来事は深く心に刻まれるし、似たような状況に出会うとフラッシュバックとして思い出されてしまう。
しかも思い出すたびに”嫌な記憶だけ”が強化されてしまい、実際に体験した現実よりも遥かに嫌な思い出として残ってしまう可能性もあるだろう。
さらに、心に傷を負う事で激しいストレスに晒されていると、身体的にも悪影響が現れてくる。
- うつ病になる
- すぐにイライラする
- 夜ぐっすり眠れない
- 頭痛の原因になる
- 肩こりや冷え性の原因になる
- 身体に慢性的なだるさを感じる
心に深い傷→ストレス→いろんな症状が出てくる→それがまたストレス→人生がうまくいかない→失敗→心に深い傷→ストレス…
最悪の悪循環だ。
では、心の傷を癒すためにはどうすればいいのか?
心の傷を癒すための最も有効な方法とは?
先ほどの記事では、心の傷を癒す方法として「精神力を鍛えろ!!」という対策を紹介していた。
現実的に考え、感情をコントロールし、生産的な行動を心がけることが、困難を乗り越え、回復することに向けてのカギとなる。
強くなれば、あらゆるストレス要因に対しての抵抗力も高まる。
「精神力を鍛える!」なんて解決策、個人主義・実力主義のアメリカ的解決法ともいえるし、日本のサムライや修行僧的な考え方ともいえる。
しかし精神力を鍛えることが有効な解決策となるのか?
実は精神力は筋肉と同じように、毎日のエクササイズで鍛えることができる。
鍛え方は筋力トレーニングと同じ。
精神にも少しだけ過剰な負荷を与えるのだ。
例えば人見知りを改善するには、初対面の人に話しかけるという精神的負荷を継続して繰り返す。
それを繰り返すと、自然と初対面でも人見知りしなくなる。
はじめてはいるちょっと高級なお店も、二回目ともなると少しだけ緊張が緩和されるのと同じ。
…だけど筋肉と一緒で、精神を鍛えるのもとても難しい。
途中で挫折してしまうこともよくあるし、精神を鍛えるという行為そのものが、凄まじい精神的ストレスになる。
だけど「精神を鍛える」という努力よりも、もっと簡単で有効な方法がある。
それは「同じ体験をした人たちと話し合う」ということ。
心の傷を癒したり、嫌な思い出を忘れるには”自分の心の中にあるもの吐き出す”のが良いとされている。
例えば自分の想いを日記に書いたり、ブログやネットの掲示板に書き込むのもいいだろう。
でも、もっとも有効なのは同じ体験をした人たちに話すこと。
たとえ自分の経験をまだ平静を保って話せない状態だったとしてもいい。誰かの体験談を聞いて、その話に”共感”するだけで自分にとって素晴らしい癒しとなるのだ。
例えば大好きだった異性に浮気された挙句、ゴミのように捨てられた体験で深く傷ついてしまったとしよう。
友達は「時が癒してくれるさ…」とアドバイスするが、何年たってもウジウジと考え続けてしまう。このままじゃ、異性の事を信じられなくなり、恋愛できなくなってしまうかもしれない。
そんな時に、裏切られた異性の思い出を忘れて次の恋愛に進むために最も有効なのは、「時の経過」ではなく「同じ経験をした人たちと語り合う」ということ。
同じく手ひどくフラれた過去を持つ人と飲みにでも行く。そうして、相手の酷い経験を聞いたり、自分がどれだけ傷ついたかを話す。
「共感」したり「理解」したりを繰り返しながら、改めて自分自身の心の傷と向き合う。
そうすることで、少しずつ少しずつ…心の傷が癒されていくのだ。
2ちゃんねるで癒される!?
- ペットとの死別
- 戦争体験
- 親が万引きをして捕まった
- アルコール依存症ですべてを失った
- 大親友に全財産を盗まれた
- ちょっとした誤解で失業した
- 恋人が結婚詐欺師だった
世の中には様々な悲劇があり、それと同じ種類だけ心の傷がある。
それらの傷を癒すには、同じ経験をしている人と、その体験について話し合うのが最も有効なのだ。
「このまえ借金の保証人になったばっかりに2億円の負債を抱えちゃってさ~」
「わかるぅ~!わたしなんて5億だよ?サイアクだよね!!」
…とはいっても、同じ体験を持つ人を探すのもけっこう難しいだろう。
そんな時に2ちゃんねるなどのネット掲示板やSNSで同じ経験を持つ人と話し合うってのは、意外と効果的な癒しとなるかもしれない。
もちろんネットは匿名なので、酷い暴言を吐かれて余計に傷ついてしまうかもしれない。
だけどこの匿名性も、自分の辛くて言いたくない過去を吐き出すのには有効に作用する。
方法はどうあれ、もし深く傷ついていてその思い出を早く忘れたい場合や傷を癒したい場合は、時の流れに身を任せてはいけない。
積極的に同じ経験をした人たちと話し合い、自分自身のトラウマや心の傷と向き合うのが有効なのだ!!
余談:日常のストレスは眠って忘れよう!
人生を変えてしまうような激しいストレスで負った心の傷は、生半可な時間経過では癒すことはできないので、精神を鍛えるか話し合うのオススメ。
というわけだけど、日常生活で感じるレベルのストレスなら、わりと時間の経過で癒されることがある。
なんかムカつくこと、いやなこと、かなしいこと、つらいことがあって、それが頭の中でグルグルとまわって、もう何もやる気でないし考えられない!
そんな時には”ふて寝”がオススメ。
ふて寝
不満のために反抗的になり寝てしまうことを意味する語。ふて寝は、叱られた時や自分の意見が否定された時など、他人との衝突がもとになって行われることが多い。
weblio辞書より参照
1日寝ても、翌日には同じように落ち込んでいたりする。
だけど3日くらい寝ると、わりと心の傷の痛みが減ってくる。
まさに日にち薬だ。
心の傷も身体の傷と一緒で、重症は病院に行かなくちゃならないけど、ささやかな傷なら時間が癒してくれると思う。
「電車遅延でバイトに遅刻した~」
「みんなのまえで盛大にずっこけた~」
「学校の先生をママと呼んでしまった~」
なんて心の傷を一生涯背負っていくわけにはいかないからね。