「死後の世界は存在する!!」
そう主張するのは、怪しげなオカルティストではない。脳神経外科の世界的権威で、数々の賞を受賞した経歴を持つ、エベン・アレクサンダー医師がそう言っているのだ。
「死後の世界なんてあるわけないぜ!」
と、もちろんエベン医師は死後の世界なんて1ミリも信じていなかったが、自分自身が臨死体験をすることによって、その考え方を180度変えてしまったのだ。
脳神経の専門家の視点から、実際に臨死体験をしてみて「やっぱり死後の世界ってあるよね」と思わざるを得ない”何か”があったのだろう。
では、その”何か”とは何だったのだろうか?
死後の世界はやっぱりある??
「トンネルを抜けると光に包まれた草原があったんです…」
「大きな川があって、そこには亡くなった家族がいたんです」
エベン医師は脳外科医として患者と接するうちに、数多くの臨死体験の話を聞いてきた。
「そんなものは、脳内物質の影響で現れた幻覚さ」
でもリアリストで非科学的なことを信じない彼は、そんな患者の話を脳作用のひとつと片付けていた。
実際に自分が体験するまでは…。
エベン医師が54歳の時、大腸菌が原因の”細菌性髄膜炎”で昏睡状態になってしまう。大腸菌が原因の細菌性髄膜炎はとんでもなく悪性で、その致死率90%以上!たとえ回復したとしても100%の確率で後遺症が残るサイアクな病気であった。
緊急入院から7日が経過し、担当医師はエベン医師の脳がはれ上がっていてほとんど機能していないと診断を下した。そして家族にこう告げた「この状態では、もう回復の見込みはほどんどありません。あと12時間で回復の兆候が見られなかった場合は、治療を中止します」
しかしエベン医師は昏睡状態の中で、臨死体験を経験し、奇跡的に回復!!しかも後遺症もみられなかったという。エベン医師は大腸菌の細菌性髄膜炎で後遺症が残らなかった、世界で初のケースとなったのだ。
不思議な臨死体験の原因を探るため、病状から回復したエベン医師は、昏睡状態にあった自分の脳の状態を徹底的に調べ上げた。
自分自身のカルテやCTスキャンのデータを精査すると、驚くべき事実が判明した!
エベン医師の体験した死後の世界
まずは、エベン医師が体験した臨死体験の内容を紹介しよう。
エベン氏はなぜか暗闇の中に立っていた。そこは奇妙なバケモノのようなものが吠えたてている不快な場所であったが、ふいに天から美しい光が差してきた。その光に向かって歩いていくと、あっという間に、周囲の闇が取り払われた。
…そこには聴いたこともないような美しい音楽の流れる、美しい世界が広がっていた。
そこでエベン医師は圧倒的な幸福感と安心感に包まれたという。
その世界を進んでいくと、美しい女性がいて「まだこちらの世界にくるのは早いですよ。戻りなさい」とエベン医師に告げたという。その後もエベン医師は現世に戻ることなく、美しい世界を飛び回り、合計で3つの世界を体験した。しかし病室で祈る家族の姿を見て「帰らなければ…」と思い、現世に無事に生還できたという。
なんともポピュラーでどこかで聞いたことのなるような臨死体験ストーリーだ。
この臨死体験について調べを進めたエベン医師は、死後の世界信じざるを得ない事実を知ることとなる。
謎の美女の正体は?エベン医師の発見した奇妙な事実
死後の世界や臨死体験は、脳内物質の作用で発生する”脳の錯覚”であるというのが一般的な考え方であった。エベン医師も脳外科医として、こういった考え方は重々承知している。
しかし、エベン医師が昏睡状態にあるときのCTスキャンを確認すると、大腸菌によって脳全体が腫れあがっており、言語や認識を司る「大脳皮質」はその殆どの機能を停止させていた。ここが正常に機能していないと、脳内で「映像」を感じることは出来ない。幻覚を見ることすらできないのだ。
たとえ大脳皮質が機能していなくても、脳幹で幻覚をみることができる可能性はある。しかし大脳皮質が機能していないと、エベン医師がみたような鮮明な映像は見ることができないという。
また、エベン医師は臨死体験中に、病室に集まる5人の親族をはっきりと覚えていた。5人が集まったのは覚醒する12時間以上前で、大脳皮質が機能していなかったとき。この事から、臨死体験がただの夢ではないと考えたのだ。
さらに決定的だったのが、臨死体験中に出てきた”謎の女性”だ。
一般的な臨死体験では、死んだじいちゃんやばあちゃんが出てきて「戻りなさいな」というわけだが、エベン医師の場合は見知らぬ美しい女性が出てきた。
昏睡状態から回復して数か月後に、意外な形でその女性の正体が判明する!!
この女性は10年以上前に亡くなっていた、エベン医師の実の妹ベッツィーだったのだ。
エベン医師は幼少の頃に養子に出されていて、実の両親の顔を覚えていない。実の両親はその後結婚して、3人のこどもを授かる。つまり、血の繋がったエベン医師の実の妹と弟ってこと。
エベン医師は昏睡状態になる前年に、50年以上ぶりに両親と再会していた。
昏睡状態から回復したエベン医師の為に、実の親が亡くなっていた妹の写真を送ってきてくれたのだ。
エベン医師の妹は不幸にも亡くなってしまっていた。エベン医師が倒れた当時、妹の姿はもちろん、妹が本当は亡くなっていることも、エベン医師は知らなかったのだ。
そんな妹が臨死体験に出てきた…。
だとしたら、あの体験は幻覚ではなく、本当に死後の世界はあるのだ!!
エベン医師はそう結論付けたのだ。
死後の世界はあるのか?
①脳は機能を停止していて、複雑な幻覚を見れる状況ではなかった。
②かつて患者から聞いた死後の世界ととてもよく似ていた。
③完全な昏睡状態で、視覚や聴覚も働いていない時に病室にいた親族5人を、臨死体験中に目撃している。
④臨死体験中に出てきた女性は、自分も知らない実の妹であった。
これらの根拠から、エベン医師は死後の世界を信じるようになったという。
はたして本当なのだろうか?
懐疑的に見るなら、死後の世界なんてあるわけないという結論になるだろう。
たとえば、本当にCTスキャンの映像を見ただけで、脳が活動しているのかわかるのだろうか?
もし、活動していないと思われていた脳が、実は機能していたとしたら、昏睡状態にありながらも周囲の状況を感じ取り、その幻覚を見ることも可能であったろう。
また、自分が知らない女性が死後の世界に出現したという事だが、それは本当に実の妹であったのか?
夢の中に出てきた人物のくわしい顔立ちまでしっかりと思い出せる人は少ない。同様に、臨死体験中に出てきた不思議な女性も、そこまで詳しくは思い出せないはず。実の妹の写真と天国の女性は似ていただけ、という可能性も否定できないだろう。
脳のある部分を刺激することで「宗教的な敬虔な気持ち」になったり「不思議なことを信じる気持ち」になることもあるといわれている。
それに臨死体験で「赤鬼や青鬼がいて、血の池があって、とんでもない地獄のような所から戻ってきた」という話を聞いたことがない。極悪人から善人まで、臨死体験では”美しい世界”が出現する。これも死に際して分泌される脳内麻薬の”快楽”の影響といえないだろうか。
懐疑的に見るなら、死後の世界があるなんて全く根拠のない話だろう。
しかし…そんな事は脳の専門家であるエベン医師も十分に承知しているはず。
それでもなお、死後の世界は存在すると主張しているなら、臨死体験には体験した人しかわからない何かがあるのだろう。
結局のところ、死後の世界を確かめるには、一度死んでみるほかない様だ。