日本人形の髪の毛が伸び続ける…そんな奇妙な話を聞いたことはないだろうか?
日本人形、特に女児の市松人形は、かつて本物の髪の毛を植毛して作られていたという。
その事実を知るだけでも、なんとなく気味が悪い。
本物の髪の毛とはいえ植毛されているのだから、本来なら伸びるわけがない。
人間の髪の毛は毛根で毛母細胞が増殖しているから伸びるわけで、日本人形に装着された髪の毛に毛根はないはず。
…しかし、人形の髪の毛が伸びるという不思議で不気味な事例は、日本中にたくさん存在する。
そこには何かしらの”科学的な根拠”があるのだろうか!?
日本人形の髪の毛が伸び続ける理由とは?
日本でもっとも有名な髪が伸び続ける人形といえば「お菊人形」だ。
まずはお菊人形の怪談を要約して紹介しよう。
時は大正時代。
札幌で開かれていた大正博覧会に訪れていた男は、店先に置かれていたある日本人形に目が留まった。
その可愛らしい日本人形を、まだ3歳の妹である菊子のために買ってあげたのだ。
菊子はその人形をすっごく気に入り、いつでも一緒に遊んでいたという。
…しかし菊子はそのすぐ後、流行り病で幼くして亡くなってしまう。
悲しみに暮れる両親は、菊子の大好きだった人形を棺桶に入れて一緒に弔ってやろうとしたのだが…。
なぜか人形を入れ忘れてしまう。
しょうがなく人形を仏壇に供え、菊子を供養したのだ。
しばらくすると、両親は奇妙なことに気付く。
人形は切りそろえられたおかっぱ頭だったのだが、その髪の毛が肩まで伸びていたのだ。
「日本人形に菊子の霊が乗り移った!!」
人々はそう信じ、その人形はいつしか”お菊人形”と呼ばれるようになった。
その後戦争がはじまり、お菊人形は供養のために寺に預けられた。
その寺には現在でもお菊人形が保管されており、その髪の毛は今も伸び続けているという…。
お菊人形は超有名な怪談。
作り話ではなく、実際にお菊人形はあるお寺に安置されている。
それ以外にも、全国には何体も「髪が伸びる人形」が存在する。
髪が伸びる人形の怪談は、ただの創作として一蹴できないだろう。
「火のない所に煙は立たぬ」ともいわれているし、何かしらの”根拠”があるからこそ、全国に髪の伸びる人形の怪談があるはず!
本来伸びるはずのない人形の髪の毛は、どのような仕組みで伸びているのか?
お菊人形の真相に迫る6つの仮説を紹介しよう。
人毛すこし伸びる説
先ほども紹介した通り、市松人形にはかつて本物の人間の髪の毛が使われていた。
人間の髪の毛は、抜いた後でも少し伸びる可能性がある。
一説には人形に使われる接着剤(ニカワ)の中に、髪が伸びるための栄養素が含まれていたためともいわれている。
実際、市松人形に使われていた人毛は、人形完成後もちょっとだけ伸びるので、髪が伸びるのを待ってからおかっぱに切りそろえられていたという。
確かに少しくらい伸びる可能性はあるかもしれないが、お菊人形のように肩まで伸びるだろうか…?
湿度や温度の変化説
雨の日の髪の毛はクセが強く出て、スタイリングしにくくなる。髪の毛ってのは湿度や温度の変化に劇的に影響を受けるのだ。
それは日本人形に使われた人毛も同じ。湿度や温度などの変化で、人形の髪の毛も少しくらい伸び縮みする可能性はあるだろう。
不揃いになったおかっぱにびっくりした人が、それを尾ひれをつけて話しまわったのかもしれない。
髪の毛二つ折り説
市松人形の髪の毛は、長めの髪を二つ折りにして頭部に縫い付けているため、片方の髪の毛が引っ張られると折り目がズレて長くなってしまう。
そのため髪の毛が伸びたように見えてしまう…そんな説もある。
これがもっとも現実的な説だろう。
二つ折りの髪の毛が、何らかの理由で片方にズレたとするなら、おかっぱが肩まで伸びたとしても不自然ではない。
だけど…お寺に安置されてだれも手を触れない状態の人形の、しかもその髪の毛が、伸びるほどズレるものだろうか??
やっぱり創作説
「髪の毛が伸びる不気味な人形」という恐怖の物語が、本邦において最初に登場したのは1962年に発売された「週刊女性自身8月6日号」なのだという。
「昭和三十三年三月三日の雛の節句に、鈴木助七さん(36)という炭鉱夫が寺に預けにきた。
『私の娘です。かわいがってください』という、謎めいた言葉を残して、鈴木さんは遠い本州に出稼ぎに行った。
そして、そのまま帰らなかった。
人形は堂の片すみに置かれたまま…忘れるともなく忘れられて。
三年めの夏。
住職の今川準応師(59)は、二晩続けて不思議な夢を見た。水をあびたように、ぐっしょりぬれた鈴木さんが、枕もとに立った。
…突くような声で、うったえるのだった。
「娘の清子の髪の毛を切ってやってください…」
今川住職は、童女の人形をとり出して、見た。
思わず、恐怖の叫びをあげた。背すじを、冷たいものがはしった。
…髪がのびていた!
耳までしかなかったオカッパが、耳をこえて腰のあたりまで
週刊女性自身8月6日号より参照
この記事に登場するのがお父さんの鈴木助七さんと、娘の清子さん。
お菊人形の物語は”お兄さんが妹菊子へのお土産”として人形を買い与えたわけだけど、そこらへんの設定が微妙に違う。
では、いつからお菊人形が登場するかというと、1968年の「ヤングレディ(7月15日号)」。
そこで初めて、最初に紹介した兄と菊子とお菊人形の物語となる。
ちなみにこの2つの記事は、まったく同じ記者によって書かれている。
存命しており、心霊研究家の山口敏太郎氏はこれらの記事を書いた記者に直接取材を試みたが、取材拒否されたとか。
真相は闇の中だけど、限りなく怪しい話といっていいだろう。
住職頑張っている説
よくテレビのバラエティ番組では、海外のわけのわからない宇宙人ミイラを見つけてきては、そのDNAを採取し、科学的に分析している。(「カッパのミイラを調べてください」なんて依頼されてDNA分析をする技術者はどう思っているのだろうか?)
その結果はだいたい謎のままで終わるけど、たまに「動物のものですね」なんて気の抜けた真実が暴かれることもある。
髪の毛が伸び続けるお菊人形もこのように科学的に分析すれば、何らかの理由がわかるかもしれない。
しかし、お菊人形が安置されている寺は、そういった調査の許可を出さないのだという。
安置して供養しているというのならば、ある意味で当然の対応であろう。
しかし…もしこのお菊人形を調べられては困る理由があったとしたら?
話題作りと村おこしのために、髪の毛が伸び続けるお菊人形をでっちあげた、その可能性も否定できないだろう。
お菊人形の話が全国に広まったのは、先ほど紹介した週刊誌の記事がきっかけ。
その記事の内容も信ぴょう性に欠けるものだ。
ひょっとしたら、当時の週刊誌の記者と住職が裏で手を組んでいた…のかもしれない。(だからその記者は取材を拒否したのかも)
そして今宵も寺の住職は、人形の髪の毛を伸ばす細工を施している…のかもしれない。
ちなみにこの寺に安置されたホンモノのお菊人形は、お腹を押すと泣くというオモチャみたいな構造をしているとか。
だとしたら、ちょっとした細工で髪の毛を伸ばせるような構造にもなっているかもしれない。
ホントに魂が乗り移っている説
今までの説を聞いて、ほとんどの方が「な~んだ、お菊人形なんてデタラメじゃあね~か!!」と思ったことだろう。
確かにそうだ。
人形に幼女の魂が憑りついて、髪の毛が伸びるなんて、そんな非科学的な話があるわけがない。
…しかし
本当に人形に死者の魂がとりつき、その影響で髪の毛が伸びている可能性も否定できない。
その根拠はいたってシンプル。
お菊人形の写真を見れば一目瞭然だ!!!
クッソ怖いッ!!!
怖すぎるやんけ!!!
なんか、見てるだけでゾッとする!!!
瞳も口元も、今にも動き出しそうだ!!!
私は霊感ゼロだけど、お菊人形には「マジで魂が宿っているんじゃないか?」と理由もなく思ってしまう迫力がある。
いや、大迫力がある。
夜中にトイレに行ってドアを開けた時に、便器の上にお菊人形が立っていたとしたら、脱糞してそのまま気絶する自信がある。
「北海道万博のお土産だよ!」と言って渡された箱の中身がお菊人形だったら、その相手を一生恨む。
”恐怖”という感情が”本能が教えてくれる危険信号”だったとしたら…この人形は危険な何かがあるはずだ。
人形には不思議な力が宿るとも、人の魂が宿るともいわれている。
血の涙を流すマリア像もあるし、丑の刻参りには藁人形を遣う。
殺人鬼の魂が乗り移って虐殺を繰り返す”チャッキー人形”だってある。
人形は存在そのものが”人間の魂を受け入れる器”という側面もあるのだ。
だとしたら、お菊人形に人間の魂が宿っていたとしても不思議ではないだろう。
死刑になった殺人鬼の魂がとりついたチャッキー。生前の恋人の魂がとりついたティファニー人形もあり、カップルで殺人を繰り返す!
人形の髪が伸びる理由まとめ
人形の髪の毛はなぜ伸びるのか?その説をまとめてみよう。
- 人毛すこし伸びる説
- 湿度や温度の変化説
- 髪の毛二つ折り説
- やっぱり創作説
- 住職頑張っている節
- ホントに魂が乗り移っている説
はたしてどれが本当なのか?
それとも真実はまったく別のことろにあるのか?
その真相は不明だが、少なくともお菊人形には人を引き付ける何らかの魅力があるのは確か。
人形の髪の毛が伸びる理由は不明だが、もしその真実が解き明かされたら…AGA(男性型脱毛症)の有効な治療法が開発されるきっかけになるかもしれない!!