危機対策

M7の巨大地震が1時間も前に予測できる!それを可能にする新しい観測方法とは?

2016年10月4日

京都大学の研究室が行った発表によると、電離圏を観測したデータを利用することで、巨大地震発生が20分~1時間前に予測ができる…可能性があるという。

どうやって??

果たしてそんなことが可能なのだろうか!?

電離圏の電子量を観測することで地震を予測する!

地震大国である日本では、「緊急地震速報」という形で地震予測を発表している。

緊急地震速報は地震発生直後に震源から発生する”P波”と”S波”の伝達速度の違いを利用し、震源から離れた各地域で地震波が到達する時間を予測!その結果をテレビや携帯より迅速に知らせ、地震が発生する前に注意喚起するシステムだ。

しかし、地震発生を予測するといっても、今のところせいぜい数秒~数十秒が限界。

自分のスマホに緊急地震速報が届いてから、身支度して戸締りして火元を消して「テッシュは持ったよな…よし、じゃあ避難しよう!」とはいかないのだ。

緊急地震速報が届いたら、その数秒後には地震発生!我々にできるのは、即座に地震に備えて身の安全を確保することくらい。

 

しかし、もし地震発生の20分~1時間前に予知できる観測方法があったら?

いろんな地震対策ができるはずだ。

津波被害が想定される地域では、高台までの避難を安全に行えるだろう。エレベーターに乗っていたら、余裕で外に避難する時間が得られる。

もちろん、避難に際してティッシュやハンカチを忘れることもないだろう。

 

それを可能にするのが、従来のP波・S波ではなく「大地震発生直前の電離圏異常」を利用した観測方法だ。

電離圏異常を利用した地震予測の問題点

地球を取り巻く大気の一番外側は、分子や原子が電離した領域である「電離圏」が広がっている。

2011年の東日本大震災発生直前に、電離圏の電子密度が異常なほど高くなっているのが観測された。これをきっかけに、電離圏の電子量と巨大地震の関係について研究が進んでいる。

地震予知で有名な早川正士教授も、電離圏の異常を利用して地震予知をしようと研究している一人だ。

なぜ大地震の直前に電離圏の電子量に異常が発生するのかは不明。一説には、プレートの圧力が原因で、地下の岩盤が割れ、その瞬間に発生する電子の影響ともいわれている。(この電離圏の異常が地震雲の原因なんて説もある)

正確な原因は不明だけど、2004年のスマトラ島沖地震(M9.1)や2010年チリ地震(M8.8)でも、電離圏の異常は確認されている。

どうやら、地震が発生する前には、電離圏に異常がみられるらしいのだ。

 

「じゃあ、電離圏の異常をよ~く観察すれば地震予測出るんじゃね?」

と思うかもしれないが、事はそう簡単ではない。電離圏を使った地震予知には、たくさんの問題点がある。

電離圏で異常が発生するのは、M8.0以上の超巨大地震で、M7.0以下の地震では電離圏の電子数に異常が検知されることは少ない。

それにすご~く電離圏で異常が発生しているのに、まったく地震が発生しないこともしばしば。

電離圏と地震の関係はまだまだ不可解なことが多い。

これじゃあ、なかなか正確な地震予知はできないのだ。

電離圏を利用した地震予測は、広く誰もが行うことができる

いままでのデータ分析では、とてもじゃないが実用的な予測は難しかった。

しかし京都大学から今回発表された観測方法を使うと、それらの問題点がクリアできるという。

その方法とは、一つのGPS観測局だけで異常を検知するのではなく、複数のGPS観測所の観測データを利用すること。

複数のデータを計算し、”データ上の予測”と”実際に観測された電子数”を比較することで、地震予知の精度を上昇させることができるというのだ!!

詳しくは、論文の概要に載っているので引用しよう。

本研究では、従来の研究で用いられてきた、一つの GPS 観測局だけで異常を検知するのではなく、はるか数十億光年の彼方にあるクエーサー等の電波星(準星)から放射される電波を、複数のアンテナで同時に相関を取ることで受信可能にする電波計測技術である VLBI(Very Long Baseline Interferometry: 超長期基線電波干渉法)にヒントを得ました。

まず、それぞれの GPS 観測局で、観測データを基に電子数を予測します。予測した電子数と実際に観測される電子数との違いを予測誤差とし、予測誤差が大きければ異常が大きいと判断します。次に基準となる GPS 観測局と周囲の複数 GPS 観測局とで得られた予測誤差の同時刻相関を取り、その総和を計算することで異常検知における時間精度を高め、更に、ノイズに対する頑強性―信号対雑音比(SN 比)―を格段に増大させることにより、約1時間以上前から異常が検知できた

参照元:マグニチュード7以上の大地震の直前予測の可能性(京都大学)

うん、わけがわからないね!

 

この計算予測は、国土地理院が運営するジオネットというサイトで確認できるデータだけで行うことができるという。

ジオネットはこちら

つまり特別な観測装置など必要なく、ネットで確認できるデータを利用して、日本人のだれもが地震予測を行うことができるのだ。

本研究成果は、マグニチュード7以上の大地震発生1時間前から 20 分前の直前予測の可能性、マグチチュード7以上の大地震警報システム構築に道を開くものであり、今後国土地理院の GEONET で公開するデータ等を用いて、本手法の異常検知能力の第三者検証が進むことが期待できます。

誰しもがこの方法を検証できたとしたら、より精度の高い計算方法が見つかるかもしれない。

英語の論文にその計算式らしきものが載っていたのだけど、これまた恐ろしいほど訳が分からなかった。

でも、日本中の頭のいい人が計算すれば、きっと近い将来地震予測が可能になるだろう。

 

凄まじい被害が想定されている南海トラフ巨大地震も、発生の1時間前に正確に予測できたとしたら…その被害は最小限に食い止められるのではないだろうか。

オススメ記事:内閣府「南海トラフ巨大地震の被害と対策に係る映像資料」の内容を簡潔にまとめてみた。

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