癖とは何なんだろうか?辞書を調べてみよう。
無意識に出てしまうような、偏った好みや傾向。習慣化している、あまり好ましくない言行。「爪をかむ―」「なくて七―」「怠け―(ぐせ)がつく」 goo辞書
習慣化しているあまり好ましくない言葉や行いの事を「癖」と呼ぶ。
習慣化している言葉や行いでも、それがポジティブな意味を持っているのなら癖とはいわないのだろう。
ということは、癖という行動は、自分か周りの人間が困っているからこそ”癖”となるわけだ。
昔から「なくて七癖」といわれるように、自分でも気づかないような癖は誰だって持っている。
今回は”癖”について、その意味や存在理由について考えてみたい。
代表的な癖(クセ)とその特徴
癖にはいろんな種類があるし、人それぞれに違ってくる。
けれど、代表的な癖はその人の精神状態を如実に表してしまう。
癖の内容 | 精神状態 |
爪を噛む・貧乏ゆすり | イライラ |
髪を触る | 緊張 |
鼻を触る・口元を隠す | 嘘をついている |
顎を引く・視線を合わせる | 敵意 |
指で何かを叩いてリズムをとる | 焦り・いらだち |
腕を組む | 納得がいかない・拒絶 |
その他にも、指の関節を鳴らす癖や、臭いものを嗅いでしまう癖、トイレで独り言を言う癖、いろんなヘンテコなクセがある。
癖とは、パターン化された行動だ。
そこには必ず、何かしらの意味があるはず。
では癖というものはどうやってできるのだろうか?
癖(クセ)が身に付いてしまう5つの原因
癖を作り上げるのレシピ、それには数種類のパターンが存在する。
ストレス
ストレスがかかった状態になると、それを回避するためにある種のパターン行動を起こすことがある。
もっともメジャーなのは「貧乏ゆすり」だろう。イライラや不安を解消するために、無意識に行う人も多いのではないだろうか。
因みに私は緊張状態に「後髪を触る」という癖を持っている。これは例えば「怒られている時」や「超美人と話している時」などの緊張状態に表れる。自分の髪を触るという行為によって逆に自分が今緊張しているのだな、と悟ることさえある。
何もしないでいる状態、はより緊張が高まる。後ろ髪をさわることで緊張が緩まっている可能性は大いにある。
特定の行動をすることで、特定の心理状態を変化させる。
癖は自分ではどうしようもない心の動きをコントロールするための習慣的行動というわけだ。
模倣(人のまね)
癖が発生するパターンのひとつに”誰かのマネ”がある。
好きな芸能人、尊敬する人、憧れのあの人、仲良くなりたい人なんかの仕草を真似して行うことで、憧れの人と自分とを同一化しているわけだ。
そしてその行為自体に満足する。
また、心理学的に人は「好意を持っている人の行動を真似する」傾向がある。
親の行動を真似ることで身に付く癖もあるだろう。一緒にいる時間の長い親友や恋人の癖がうつっちゃう可能性もゼロではないはずだ。
因みに筆者はジョジョの奇妙な冒険第3部の主人公空条承太郎の口癖「やれやれだぜ…」が口癖となっている。
例えば食卓で醤油をこぼした時などに「やれやれだぜ…」のニヒルに冷笑するわけだが、冷静に考えるとまったくどうかしている。
うまくいった経験
行動や習慣というのは、経験の積み重ねによって形成されていく。
「Aという状況の時にBという行動をしたら上手くいった」
こういった経験が積み重なると、それが癖になってしまうことがある。この場合、必ずしもBという行動が成功につながらなくてもいい。
自分がBという行動をしたからうまくいったんだ、とそう思い込むだけでいい。
こういった経験が繰り返されることで、それは習慣と化し、癖になっていく。
「大事な試合やテストのときは、左足から玄関を出る」
なんてヘンテコなクセも、因果関係のない成功体験が原因だろう。
つまり、癖とは自分の過去の経験が作り上げるのだ。
脳の構造が癖の原因ともなる
癖には遺伝的な要素や脳の構造なども関係してくる可能性がある。
独ルール大学ボーフム校の研究者らは、脳と性格の違いを明らかにするため264人を調査。サイコロジカル・サイエンス誌に8月に掲載されたこの研究では、やるべきことにすぐ取り組めるかどうかに影響を与える脳の2つの領域が特定された。
参照元:先延ばし癖は脳の構造のせいかも(ニューズウィーク)
最新の研究によると、先延ばし癖を持っている人の脳には2つの特徴があったという。
①偏桃体が大きい
②偏桃体と前帯状皮質背側部の連結が弱い
偏桃体が大きいとネガティブになりがちで、行動を後回しにすることが多くなる。また、偏桃体と前帯状皮質背側部の連結が弱いとネガティブ思考を抑えることができなくなってしまう。
その結果、「やることを後回しにするクセ」が身に付いてしまう。
これはあくまでも例に過ぎないけれど、自分ではどうしようもない癖の原因が脳の構造にある可能性は大いにあるだろう。
癖には文化も関係してくる
癖にはその人の精神状態が反映されることが多い。
わかりやすいものに「腕組み」という癖がある。腕組みには防衛や拒否の感情の表れといわれている。
例えば話し合いをしていて相手が腕組みをしたら、自分の話に納得していないというメッセージになる。
この否定を表す癖だけど、日本人は腕組する人が多いのに、面白いことにアメリカでは「腰に手を当てる」という癖を持っている人が多い。
防衛の心理が腰に手を当てる癖に現れるわけだ。
これは防衛の仕草が元々「腰にある銃に手をかける」という仕草を表すらしい。まさに銃社会アメリカという感じ。
確かに日本じゃあ「呆れた顔で腰に手を当てる」なんて仕草はドラマの中だってお目にかかったことがない。
肩をすくめる、列に並ばない、なんてのも文化が作り出した癖なのだろう。
そんなわけで、癖にはその人の生まれ育った文化なんかも関係してくるのかもしれない。
大雑把に5種類の癖の原因を上げたが、他にもいろいろな要因で癖は発生する。
原因と結果の関係は癖にも当てはまる。原因を解消する為に癖が現れるのだ。癖を行った自分に何らかのメリットがあるという事。
つまり、
癖には自分の精神状態を正常に戻す作用や、ストレス解消効果もあるのだ。
「学生が勉強中にペン回しをするクセを無理に止めさせると学習効果が下がる」
そんな面白い実験結果がある。
ペン回しは学習時のストレスを発散させる効果があり、それが学習効率を上げている可能性もあるわけだ。
よい癖と悪い癖の違い
「無意識に出てしまうような、偏った好みや傾向。習慣化している、あまり好ましくない言行」
これは最初に紹介した癖の意味だ。
癖は「あまり好ましくない言葉や行いのこと」とあるけれど、そうとも言い切れない部分もある。
確かに癖には直した方がいいものもある。
例えば「道端に唾を吐く」なんて癖は下品だし、「変な箸の持ち方」なんて癖も直した方がいいだろう。
社会的に不都合な状態になったり、周りに迷惑をかけるような癖は「悪い癖」といえる。
だけど自分のストレスを解消するために行うような誰にも迷惑をかけない行為は、むしろ自分にとってプラスになる可能性がある。
もし無理に癖をやらないようにしたら、よけいにストレスを感じてしまうかもしれない
つまり、癖の良し悪しは誰かに迷惑をかけているかいないかで分かれるわけだ。
自分も周りも困っていない癖ならなおさなくっていいけど、周りが不快に思うような癖は治した方いいってことになる。
しかし単に行動を直すだけでは改善できない種類の癖もある。
愛情不足で育ったこどもは「爪を噛む」癖があるかもしれないし、ストレスで「髪の毛を抜く」癖や、「自傷行為」なんて癖が現れるかもしれない。
これは行為を改善したとしても、その原因がある限りまた別の癖は現れる。
改善するには自分の癖の原因を知ることが大切。
それはある意味では自分の人生を見つめなおす行為なのかもしれない。
癖を観察する癖を身に着つけよう
癖にはストレス解消や自分を守る機能がある。
ペン回しを無理に止めさせた学生の学習効率が下がったように。
だから自分の癖を無理に止める必要はない。それが逆にストレスになって状況が悪くなるかもしれないのだから。
それに自分じゃどうしようもない癖だって、状況が変われば自然に消えることが多いのだ。
ある人からこんな話を聞いたことがある。
その人は八百屋で仕事をしていて、毎朝大量のダンボール箱に積まれた野菜たちを冷蔵倉庫で整理しなければならなかった。
思いのほか重い野菜、そしてトラック満杯につまったダンボール。その過酷な重労働に同僚たちはこう叫びながら、ただひたすらに仕事をしたという。
「死んだ方がマシだ!!!」
凍えるのような寒さの巨大冷蔵庫で、汗にまみれながら叫ぶ。背丈ほども積まれたダンボールに囲まれて。
私はその話に爆笑し、なぜかその後「死んだ方がマシだ!!」が口癖になってしまった。
これは「模倣」が原因の癖だといえる。
もうひとつ、私にはヘンテコなクセがある。
「ふんふ~ん♪」
みたいな適当なメロディの”鼻歌”というのは、気分がゴキゲンなときに自然と口をつくものだ。
だけど私は正反対で、落ち込んでいたり、フッと嫌な思い出が頭をよぎったり、ネガティブ思考で頭の中がいっぱいの時に鼻歌を歌う癖がある。
これは恐らく、頭の中の負の思考を、鼻歌を歌うことで遮断しようとしているからだと思われる。
これは「ストレス」が原因の癖であり、ネガティブ思考を凌ぐためにけっこう役に立っている…気がする。
なくて七癖。
人それぞれいろんな癖を持っているもの。
そしてその癖の裏には、それぞれにいろんな動機や原因がある。
自分の癖を理解すれば、自分の心理をもっと深く理解できるかもしれないし、他人の癖を理解すれば、その人ともっとわかり合えるかもしれない。
自分や誰かの癖を観察する癖を身に着つけたら、けっこう面白いかもしれないね。