自由に動けるネズミと、わざと狭い空間で動けないようにしたネズミを同じケースに入れると、自由に動けるネズミは閉じ込められた仲間のネズミを助けようとするという。
なぜ、ネズミは仲間のネズミを助けるのだろうか?
そこには、人間を含めた哺乳類全体が持つある本能が隠されていた!!
”親切”や”優しさ”の正体とは?
ラットが狭い場所に閉じ込められた仲間を積極的に助け出すことは、過去の研究ですでに実証されている。ラットはこのとき、その仲間に共感して助け出そうとするように見える。
しかし今回、催眠鎮静剤や抗不安剤に分類される薬「ミダゾラム」を投与されたラットは、投与されていないラットに比べて、ケージに閉じ込められた仲間を助け出す可能性が低いことがわかった。
(中略)
「誰かを助けると、通常はいい気分になります。他者を助けることは、いわば一種の麻薬のようなものなのです」とメイソン教授は言う。「これは、おそらく進化の過程で獲得した哺乳類の特質なのでしょう。互いを助けることは、種の繁栄にもつながるのです」
参照元:「誰かを助ける」のに理由はいらない(哺乳類なら):研究結果(WIRD)
ネズミは閉じ込められた仲間のネズミを見ることで「あいつ、つらそうだな~」と共感する。
辛さに共感するということは、自分にとって凄くストレスになる。
そのストレスを解消するために、閉じ込められたネズミを助けようとする。
つまり「優しさ」という行為は、自分の心的ストレスを解消する行為ってわけだ。
この実験で面白いのは、ネズミに「ストレスを緩和させる作用のある薬剤」を投与すると、仲間のネズミを助ける確率が低下するってこと。
じゃあ苦しんでる仲間のネズミを助けないでなにをするかというと、おやつの入ったケージの方に行っちゃう。
ストレスを感じないから、仲間のネズミが閉じ込められてるのを見ても、自分ではストレスを感じない。自分のストレスを除去する必要がないから、本来の優しさが発揮されない。
他人への共感と、それに伴うストレスが、やさしさの原動力になっているのがよくわかる実験だ。
性善説は正しい!?
このネズミの実験を、そのまま人間に当てはめて考えることはできないだろう。
人間は他人の不幸に際して、打算的に優しくすることもできるし、純粋にストレス解消や快楽のために優しくするってわけでもない。
ただ、この実験結果を見ると、人間も含めた哺乳類は、お互いに助け合うようにできているし、助け合うことに快楽を感じるようにできているんじゃないだろうかと思える。
つまり、人間の本質は”善”なのだと。
せいぜん‐せつ【性善説】:人間にはもともと善の端緒がそなわっており、それを発展させれば徳性にまで達することができるとする説。孟子が唱えた。
せいあく‐せつ【性悪説】:人間の本性は悪であり、たゆみない努力・修養によって善の状態に達することができるとする説。荀子 (じゅんし) が唱えた。
goo辞書より参照
このネズミの実験は、人間が性善説に成り立つことを示しているのではないだろうか。
人間の中には確かに他人をイジメて面白がったりするやつもいるし、テレビで他人の不幸を見て笑うし、犯罪を侵したり、他人を虐げるヤツもいっぱいいる。
だけど本能的な部分では、誰かが悲しいと思っていたらストレスを感じるし、誰かが幸せそうに笑っていたら自分も嬉しくなる。それが、人間の本質である気がする。
もちろん、他者と共感する能力を育まなかったり、社会の常識を学ばなければ、人間はすぐに悪の道に堕落してしまうかもしれないけど。
地球にやさしいストレス解消法
誰かに親切にすると、めっちゃ良い気分になるし、ストレス解消にもなる。
メイソン教授は「他者を助けることは、いわば一種の麻薬のようなものなのです」とすら言っている。
仕事で失敗が続いたストレスから麻薬に走り、薬物依存症になってしまう。
失恋が続いて酒に逃げた結果、アルコール依存症になってしまう。
就職活動が上手くいかずに、パチンコ屋に入り浸った挙句、ギャンブル依存症になってしまう。
みんなストレス解消のために、間違った方法を取っているといっていいだろう。
仕事で失敗してクタクタに疲れて帰る電車の中では、ご老体に積極的に席を譲る。
失恋が続いて心がズタズタになってしまったら、迷子の子猫のために飼い主を探してあげる。
就職が上手くいかずに滅入っているなら、アマゾンで頼んだ商品をいつも届けてくれる運送会社スタッフに「いつもありがとうね!」と缶コーヒーを差し入れしてあげる。
親切依存症になっちゃうくらい過剰な親切は逆効果かもしれないけど、「ああ、今日はイライラするなぁ~」とか「なんか気が滅入ってるなぁ…」とか、理由もなく気分が落ち込んでいるときなどは、意識して誰かに親切にすることでいい気分転換になる。
誰かに親切にするってことは、もっとも効率的に幸せになれる方法のひとつなのではないだろうか。