音楽教室にジャスラックの工作員が2年間も生徒として潜入調査を行っていた!
そんなニュースが飛び込んできた。
どうやらジャスラックは教材として使われていた音楽の著作権料を徴収しようとしており、それに反発した音楽教室との訴訟問題になっているらしい。
近年、ジャスラックの著作権徴収がいろいろと問題になっている。
飲食店や美容室や雑貨店などで流れるBGMにも著作権が発生し、店側はジャスラックに著作権料を支払う必要があるというし。
著作権料を払わない店に対してジャスラックは裁判所に提訴するってんだから、店側はたまらない。
それにしても、昔はそれほどジャスラックの著作権徴収が厳しくなかった気がするんだど…。
なぜ最近はジャスラックの著作権徴収が厳しくなってきたのだろうか??
ジャスラックの著作権徴収と音楽市場の衰退
まずは、ざっくりとジャスラックの著作権徴収の内容をみていこう。
- 演奏からの著作権
- イベントや店内のBGM
- カラオケ
- ライブハウス
- パチンコ・パチスロで使われる曲
- インターネットでの音楽利用
- インタラクティブ配信(音楽・動画)
- CM・広告で使われる音楽
- テレビ・ラジオ・映画でかかる曲
- CD・ブルーレイなどの記録媒体
- レンタルビデオ・レンタルCD
これらすべてで著作権料が発生し、大なり小なりジャスラックにお金を支払う必要がある。
集まったお金は作詞者、作曲者、編曲者に分配され、それが素晴らしい音楽を作り出す原動力となるわけだ。
ジャスラックがいなければ、ミュージシャンは正常な音楽活動ができなくなってしまう!!
ジャスラックは音楽業界になくてはならない、とっても大切な仕事をしているのだ。
そんなジャスラックの近年における著作権料収入の推移がこちら。
参照元:https://www.jasrac.or.jp/release/pdf/19052201.pdf
毎年1,100~1,150億円くらいは収入があるんだね。
でも、音楽業界が衰退しているといわれる昨今、それでも著作権料収入は減らないのだろうか?
というわけで、次は日本レコード協会が発表している「生産実績・音楽配信売上実績 合計金額推移」を確認してみよう。
データで最も古い2005年と、最新の2018年を比べると、音楽業界の構造の変化がよくわかる。
オーディオレコードの売り上げは半分以下になっていて、音楽配信の売り上げは約2倍になっているのだ。
CDが売れなくなってきた時代にネットを介した音楽配信が伸びているけど、
…残念ながら総合的な音楽コンテンツの売り上げは下降の一途をたどっている。
私が若いころと言えば、もうおこずかいを貯めてCDを買うのが大変だった。
アルバム1枚3000円!!
CDをレンタルしてテープに録音して聞いたり、友達から借りたり…。
とにかくティーンエイジャー時代のささやかな収入の30~40%以上は音楽に使っていたと思う。
今はどうだろう?
音楽はネットで無料で聴けるし、スマホの代金も払わなきゃいけない。
おそらく音楽に費やすのは、収入の1割以下になっているのではないだろうか?
これはもう全世代共通で、一部の音楽好きは別としても、音楽にお金を使うということそのものが必要ない時代になってきている。
私だってCDを買う枚数がすっかり減ってきているし。
だからこそ、ミュージシャンはライブに活路を見出している。
音楽は無料で提供して、ライブに来てもらって、お金を使ってもらう。
そんなビジネスモデルに変化してきているわけだ。
…でも、ミュージシャンがライブで自分の曲を演奏しているのなら、ジャスラックにお金を払う必要はないよね。
CDは売れない。
ネット配信もパッとしない。
ミュージシャンはライブでお金を稼ぐ。
そんな時代になってきているとしたら、当然、ジャスラックの著作権料収入だって少しは下がるはずだ。
だけど、ジャスラックの著作権料収入は下がるどころか、むしろちょっと上がっている。
つまりこれは街の音楽教室に2年も特殊工作員を潜入させるような、ジャスラックの凄まじい企業努力のたまものではないだろうか?
著作権料収入が毎年横ばいなのを考えると、まず最初に「今年の著作権料収入は1100億円を目指す!!」というような企業目標があり、それを達成するために社員たちは頑張っていると考えられる。
たとえCDの売り上げが悪かろーが、音楽シーンが盛り上がっていなかろーが、ジャスラック社員は著作権料が未徴収の場所を探しだし、懸命に徴収するわけだ。
ジャスラックの徴収活動に批判的な論調が多い。
無理で強引な徴収活動の”ひずみ”みたいなものが、問題点として浮かび上がっているのかもしれない。
これは想像だけど、ジャスラックに勤務している社員って、きっと音楽が大好きな人が多いと思うんだよね。
著作権を徴収することが、ミュージシャンの活動の糧になると、ミュージック・シーンの活性化に繋がると信じて頑張っていると思うんだよ。
だけど会社から押し付けられた無理のある徴収活動そのものが、音楽業界全体に暗い影を落とすことにもなる矛盾…。
現場の社員は胃が痛いだろうね。
2年間もジャスラックのために音楽教室に通ってた人なんて、どんな想いを胸に授業を受けてたんだろう?
発表会にも出たっていうし、生徒や先生との”絆”だってあっただろうに…。
というわけでまとめると、CDがガンガン売れていた時代は、ジャスラックは何の努力もせずに大金を得ることができた。
昔はライブハウスで演奏するコピーバンドへの著作権料なんて考えなくてもよかったし、ゆる~くやってても自動的に金は入ってきた。
だけどCDが売れなくなった時代は、ネットの音楽配信など音楽を楽しむ環境が多様化し、著作権徴収が困難になってきた。
だから無理な徴収や強引な徴収をしなければいけなくなってきた。
そこらへんに、ジャスラックの著作権徴収の問題点があるのだろうね。
私の印税収入(著作権料)はどこに消えたのか?
私は若いころず~っとバンド活動をやっていて、プロにはなっていないものの、インディーズで1枚だけCDを出している。
もう10年も前の話だ。
このCD、バンドのみんなで苦労して、心を込めて作った会心の作品なんだけど…恐ろしいほど売れなかった!!!
その当時所属していた小さな音楽事務所は、新宿の小さなマンションの一室にあったのだけど、とうの昔に潰れている。
バンドも何年も前に解散した。
だけど、驚くべきことにバンドのCDはAmazonで検索するとまだ販売していて、購入することができるし、MP3をダウンロードすることもできる。
それどころかアマゾン・ミュージック・アンリミテッドに加入していると聴くこともできる。なんでアマゾンミュージックでは聴けないのに、アンリミテッドで月額料を支払うと聴けるようになるのかよくわからん。
itunesで検索しても購入することができるので、恐らく他の音楽配信サービスでも購入することができるのかもしれない。
今現在も販売されているが、もちろん売れていないだろう。
当然、印税収入なんて得られていない。
まあ、それはいい。
それはいいとしてだよ。
今現在販売継続中のCDが奇跡的に売れたりダウンロードされた場合の印税収入はどこにいくのだろうか??
だってさ、管理する会社もないし、バンドも消滅しているんだぜ?
恐らくAmazonで売れたら、売り上げはAmazonの懐に入るだろうし、ジャスラックはちゃっかり著作権料収入を得るのだろう。
まあ、そこらへんの事情はまったくノータッチだったので、著作権管理をジャスラックに任せていたのかもわからないけど。
とにかく、きっと音楽配信サービスでは、今となっては著作者が不明のインディーズの曲ってたくさんあると思うんだよね。
今さらジャスラックに「著作権料を振り込め!!」とは言わない。
もし仮に著作権料があったとしても、5円くらいだろうし。
ただ言いたいのは、昔やってたバンドのCDが今でもダウンロードで購入できることが指し示すように、著作権関係ってすご~~くグレイな世界だと思うんだよ。
そのグレイな世界で、恐らくジャスラックもたくさんのメリットを享受していると思うんだよね。
音楽教室は著作権料を払うべきルールだと思う。
コピバンをステージに立たせるライブハウスも著作権料を支払うべきなんだろう。
だけど…
そこらへん、もっとオフホワイトな感じて許容した方が「NO MUSIC NO LIFE」な世界になると思うんだけど、どうですかね~?