アメリカのシエラ国有林には悪魔の渓谷(Devil's Gulch)と呼ばれる不気味な場所がある。
2021年8月、この悪魔の渓谷のハイキングコースに向かった親子3人と飼い犬の全員が不可解な死を遂げた。
死因は不明。
遺体発見後、”未知の危機が見つかった”という理由から、周辺すべてを立ち入り禁止にするという処置がとられた。
なぜ親子3人ばかりか飼い犬までも死んでしまったのか?
銃で撃たれたわけでも、動物に襲われたわけでもない。
落雷でもない。
自殺でもない。
地中から発生したガスによる一酸化炭素中毒を疑ったが、近くに廃坑などの発生源はない。
近くの川に有害な藻類が大量発生していたことから、その水を誤って飲んだのではないかとも思われたが、毒物による中毒症状も見られない。
…後日判明した死因は意外なものであった。
公園での不可解な死、その意外な原因
米ヨセミテ国立公園に近いカリフォルニア州のシエラ国有林で、ハイキングに出かけた一家3人と飼い犬1匹が遺体で見つかったことを受け、森林当局がハイキングコースや一帯のキャンプ場を封鎖した。
死亡したのはジョン・ゲリッシュさんとエレン・チャンさん、1歳の娘のミジュさん。捜索隊が8月17日、シエラ国有林を流れるマーセド川の近くで遺体を発見した。一緒にいた飼い犬のオクシも死んでいた。
シエラ国有林は28日、遺体が発見されたサベージランディトレイルで「未知の危険が見つかった」として、安全を期すために一帯のキャンプ場や道路、ハイキングコースへの一般の立ち入りを禁止すると発表した。9月26日まで封鎖を継続する。
この報道がなされた数か月後、当局は家族と犬の死因は熱中症であると発表した。
米ヨセミテ国立公園に近いシエラ国有林のハイキングコースで今年8月、一家3人と飼い犬1匹が死亡しているのが発見された件で、地元当局は21日、一家の死因は熱中症だったと明らかにした。
カリフォルニア州マリポサ郡のジェレミー・ブリーズ保安官は、死亡したジョン・ゲリッシュさん、エレン・チャンさん、1歳の娘のミジュさんについて、熱中症にかかり脱水状態にあった可能性もあると述べた。当日の厳しい環境の中にさらされたことが原因だったという。
当時の悪魔の渓谷のハイキングコースは、気温が42~43度にもなっていたとか。
さらに日陰も少なく、かなり危険な環境であったとのこと。
家族は2.5リットル入る容器を持っていたが、それは空っぽであった。
犬の死についても、高熱にさらされたことが原因であることがわかった。
それにしても、家族が3人とも、さらには飼い犬までもが”同時に”熱中症になることなどありえるのだろうか?
熱中症でなぜ、人は死ぬのか?
長いこと高温にさらされると、人間は熱中症になりさまざまな障害があらわれる。
人間の脳や内臓は熱に弱く、最終的にはショック症状を起こして機能不全を起こしてしまい、最終的には死に至る。
…恐ろしい!
熱中症、なんて言葉のイメージから「暑すぎて死ぬ」くらいしか思っていなかったけど、「全身の細胞がぶっ壊れて死ぬ」に近いわけだ。
そんな熱中症の症状には段階があるので、それを簡単に紹介しよう。
軽度の熱中症の症状
- 立ちくらみ
- 筋肉痛
- 大量の汗
中程度の熱中症
- 頭痛
- 吐き気
- 嘔吐
- 倦怠感
重症の熱中症
- 意識障害
- けいれん
- 運動障害
もし中程度まで熱中症が進み、飲み水もない状態で、しかも人里離れたハイキングコースにいたとしたら…
重症になるまでに時間はかからないだろう。
そうなれば身体は動かなくなり、あとは死を待つしかない。
熱中症の恐ろしい症状を見ると、悪魔の渓谷で家族と犬の全員が熱中症で死亡するのもおかしくないと感じる。
日本でも毎年たくさんの人が熱中症で亡くなっている。
炎天下の自動車に閉じ込められた子どもが熱中症で亡くなる悲惨な事故もよくある。
軽度の熱中症の症状があらわれたら危険と判断し、迅速に対処した方がいいみたいだ。
もし炎天下でずっと活動するようなことになったら、しっかりと水分補給したり、帽子をかぶって対策を取らないと、意外とあっさり死んでしまうかもしれないぞ!