自己啓発

原因と結果の法則は嘘!病気や貧困や失敗の本当の理由

2022年5月6日

「原因と結果の法則」とは1903年にジェームズ・アレンが著した言わずと知れた大ベストセラーの自己啓発本だ。

その本の内容を一行で表現するとこうなる。

 

自分の”思考”が自分の人格・人生・環境・を創っているのだから、自分の考え方を変えることで人生はよりよくなるよ!

 

仏教における”因果”と同じで、善い行いが幸福をもたらし、悪い行いが不幸をもたらすという考え方。

「思考は現実化する」とか「7つの習慣」なんかの自己啓発のベストセラーも、「原因と結果の法則」の影響を強く受けている。

 

だが、本当に原因と結果の法則は存在するのだろうか?

もし大きな病気になってしまったとしたら、その原因は自分にあるのか?

もしお金がなくて満足にものを食べられない人がいたとして、その貧困の原因は彼自身の努力不足にあるのだろうか?

 

今回は原因と結果の法則の悪影響や問題点について考えてみたい。

原因と結果の法則が社会に及ぼす最も大きな害悪

原因と結果の法則が本当なのか?

それとも嘘なのか?

それを語る前に原因と結果の法則がもたらす悪影響について簡潔に説明したい。

 

端的に言えば、原因と結果の法則は自己責任論を増長する。

 

あの人が貧乏なのは努力不足。

成績が悪いのは勉強時間が短かったから。

スポーツで1位になれなかったのは練習が足りなかった。

病気になったのは普段の食生活がボロボロだったから。

 

あの人が成功したのはしっかり勉強して勤勉に働いたから。

トップの大学に行けたのは眠るのも惜しんで勉強したから。

オリンピックで金メダルを取れたのは誰よりも練習したから。

健康な一生を過ごせたのは毎日運動してバランスの良い食事を心がけたから。

 

わたしたちは多かれ少なかれ、結果には原因があると思い込んでいる。ごく自然とそう思い込んでいるはずだ。

そんな”原因と結果の法則”の進んだ社会が現在のアメリカだといえる。

アメリカは「努力すれば成功できる!」というアメリカンドリームの思考が蔓延している。

原因と結果の法則、因果の法則、自己責任論。

もちろん自分の人生に振りかかる不幸も自分に原因があるってことになる。

するとどうなるか?

 

「原因と結果の法則」を信奉する国は社会保障にお金をかけない、弱者に厳しい社会システムになってしまう。

 

だって、貧困になるのはその人の努力不足なんだから。

努力すれば報われるシステムを用意しているんだから、あとはもう自分で頑張れと。

頑張って成功した人間が怠け者を助ける義理はないと。

アメリカには皆保険制度はないし、保険の加入は自分で判断する。

病気になって困るのも、働かないで貧乏なのも、すべて自己責任だ。

もちろん「生活保護」なんてズルい制度を利用するなんてもってのほか!

「少しでも動けるなら、どんな仕事でもいいから働いて金を稼げ!!」

とまあ、原因と結果の法則を頭から信じているとこんな考えになる。

 

でも、ホントに人生のすべては”自分の想い”で決まるのだろうか?

原因と結果の法則が嘘である理由

原因と結果の法則が出版されたのは100年前だが、その時代と現在ではもう全く、すべてが違ってしまっている。

現代の科学は、原因と結果の法則が成立しないってことを悲しいほど明らかにしている。

病気からみる原因と結果の法則

原因と結果の法則では病気すらも自分の思いが引き寄せているとされる。

しかしそんなのは大きな間違いだ。

病気が遺伝的な原因によって発症した場合、その人個人には何の責任もない。

遺伝子が原因なのに、どれだけ自分の考え方を変えたところでその病気は治らないだろう。

がんが発症するリスクも、糖尿病が発症するリスクも、生まれつきの体質で決まっている部分が多い。

 

病気にならないために健康的な生活を送ることは大切だ。

病気になったとしてもそれを受け入れて前向きに生きるよう自分の考え方を変えるのも大切だろう。

だけど、一部の生活習慣病を除いた多くの病気はその人のライフスタイルが原因ではない。

 

何らかの理論に反論するときに「~な人もいる」という文言を使うのはなんだか卑怯な気がする。

しかし、あえて使いたい。

何もしないでもがんになる人もいれば、100歳までヘビースモーカーで健康な人もいる。

今現在地球上に存在しているすべての病人を調べ、その病気の原因を検証したとして、病気発症に関して「個人の責任であるケース」と「個人に責任がないケース」はどちらが多いか?

おそらく個人に責任がないケースの方が多いのではないだろうか。

貧困からみる原因と結果の法則の間違い

最近では「貧困の連鎖」についての研究も進んでおり、残酷な事実が次々と発見されている。

親が貧乏であれば、その子どもも、さらにその孫も貧乏である確率は高くなる。

貧困国に生まれた場合、生涯貧困であり続ける可能性が高い。

これは紛れもない事実だ。

 

貧困国に生まれることや、貧困層の家庭に生まれることは、その人個人に何の責任もない。

努力できる環境、目標を設定して頑張れる環境がまったくないとしたら、どれだけ優秀な才能があったとしても成功はできないだろう。

今現在、この地球上にいる上位1%の大金持ちをすべて調べてみて欲しい。

貧困国の貧困層出身がひとりでもるだろうか?

関連記事:親ガチャが正しいという事実を突きつける研究結果と対策

寿命からみる原因と結果の法則の間違い

原因と結果の法則を信じている人は、健康的な生活を心がければ長生きできると信じている。

長生きに良いとされる食事を心がけ、寝たきりにならないように運動し、ボケないように地域とのかかわりを続ける。

それでもなお、寿命に関しても生まれつきの要素が強い。

 

2019年に理化学研究所が110歳以上の長寿者を調べ、特殊なT細胞を持っていることを発見した。

この細胞を持っていると老化のスピードが遅くなる。

とくに健康寿命が長く、100歳を超えてもボケることがなく、死ぬ寸前まで元気に動けるという。

このT細胞を”偶然”持っていたとしたら、なんにもしなくても健康で長生きできる。

 

もちろん健康的な生活も無駄ではない。

しかしそれが必ず長寿に繋がるわけではないってことを知っておく必要はあるだろう。

スポーツから見る原因と結果の法則

スポーツの世界は「原因と結果の法則」が通用しないのが目に見えてわかるあからさまな世界だろう。

まず、生まれつきの体格。

大きければバスケットボールや格闘技に向いているし、逆に身体の小さな人は成功できない。

小さければフィギュアスケートや競馬騎手、水泳の飛び込みに向いているし、逆に身体の大きな人は成功できない。

筋肉の付き方も個人差があり、同じ筋トレをしてもまったく同じ結果にはならない。

だれもがウサイン・ボルトと同じ練習をして、同じ結果を得られるとは限らない。

また、生まれた月がスポーツに大きな影響を与えるのは有名な話だ。

関連記事:努力は無駄なのか?プロ野球選手は4月生まれが多い理由から見る成功者の共通点。

 

スポーツで成功できないのは努力が足りないから。

そんな風に思うのは、ちょっと厳しすぎるだろう。

原因と結果の法則と偶然

原因と結果の法則では”偶然”はないとされるが、人生において偶然というのは凄まじい影響力を持っている。

誰だって調子のいい日もあれば悪い日もある。

体調が悪い日もあれば、なぜか絶好調の日だってある。

そんなバイオリズムのなかで”たまたま”調子のいい日に試験だったりスポーツの大会だったりがあったら、それだけで結果に大きな影響を及ぼすだろう。

 

統計学的に研究すると、参加者が多ければ多いほど偶然の要素が強くなるという。

 

運の要素が介在する余地のあまりないシンプルな「100メートル走」を例に説明しよう。

ある2人をランダムに集めて100メートル走で競ってもらうとする。

3回勝負したとして、恐らく足が速い人の方が3回とも勝つだろう。

この場合、”運”によって勝負が決まる可能性はかなり低い。

 

では、この競技を1万人集めて行ったらどうなるだろうか?

1万人を集めてトーナメント方式で100メートル走大会を行ったとして、それを3回繰り返したら…

おそらく3回とも優勝者は異なる可能性が高い。

なぜならその日の体調、気候、気分、そんな偶然が結果に大きく影響を及ぼすから。

おそらく1万人を集めた100メートル走大会のトップ100位くらいまでは、何度繰り返しても実力が拮抗したトップレベルの選手たちで固まる。

だけどその先の領域で誰が勝つかについては、偶然が大きな影響を及ぼすだろう。

(ちなみに運の要素があまりない100メートル走ではあるが、世界記録がでたときの”風向き”を検証するとほどんどが追い風であったという。逆に向かい風が吹いていると、それだけでもう新記録がでる確率は劇的に下がる。このような偶然の要素が、あらゆるスポーツには存在している。)

 

恐ろしいことに、地球人類の人口は70億を超える。

ビジネスであれ、スポーツであれ、学問であれ、競うあうべき参加者はとんでもなく多い。

わたしたちは「原因と結果の法則」がそのまま通用するような、のんきで牧歌的な時代に生きていないとわかるだろう。

原因と結果の法則が通用しない世界の生き方

スティーブ・ジョブスやビル・ゲイツも生まれた時代が数年ズレていたとしたら、あれほどまで成功しなかったといわれている。

わたしたちの人生ってやつは、原因と偶然が強く絡み合いながら結果をもたらしているわけだ。

原因と結果の法則は嘘であり、病気や貧困や失敗の本当の原因は偶然である、ともいえるだろう。

 

もしあなたが病気だったとしても、それはあなたのせいではなく運が悪かったから。

もしあなたが貧乏だったとしても、それはあなたのせいではなく運が悪かったから。

もしあなたが失敗しても、それはあなたのせいではなく運が悪かったから。

自分の身の回りに起きた不幸の原因を自分に求めると、それが悪循環となってますます不幸になっちゃう。

偶然だからしょうがない、そう思えることも大切だろう。

 

原因と結果の法則は完全に正しいわけではないということが理解できたうえで、さらにひとつの大きな事実をお伝えしたい。

原因と結果の法則を信じている人の方が、より経済的に成功しやすい。

このような研究結果もある。

 

原因と結果の法則は正しくはないが、それを信じていた方が目標に向かってちゃんと努力できるし、メリットが多いのもまた事実。

しかし原因と結果の法則を信じすぎていると、失敗した人、不幸な人に優しくできな思いやりのない人になっちゃう可能性もある。

結果を得るには努力も大事だけど、環境や偶然も大きな影響を及ぼすってことをきちんと理解するのが大切だろう。

(ちなみに努力すればするほど成功から遠ざかる努力逆転の法則(エミール・クーエの法則)なんかも存在する。

世の中は努力すれば目標に近づくってわけじゃあないのだ)

 

いま大成功を収めているYouTuberや芸能人や起業家を見て欲しい。

彼らが手にしている報酬(結果)は、本当に彼らの努力(原因)に釣り合っているのか?

それを考えるだけでも、原因と結果の法則だけを妄信するのが危険なことがわかる。

 

では、こんな理不尽な世の中に一矢報いるにはどうすればいいのか?

例えば「めっちゃ美男子で性格もよい好青年」と「顔も性格も普通以下の一般的青年」がいたとしよう。

この2人の青年が好きな女の子と付き合えるかどうかを考えてみたい。

 

めっちゃ美男子で性格もよい好青年はみんなにモテモテで、告白の成功率は実に90%以上!

だけどメンタルが弱く、告白して断られたらすぐに諦めてしまう。

対して顔も性格も普通以下の一般的青年は告白しても成功率は30%以下。

だけどメンタルが強く、断られても諦めないし、何度か告白して無理だと思ったらすぐに次の女の子を探す。

 

この2人を比較したとして、どちらが好きな人と恋人になる確率が高くなるだろうか?

おそらく長期的に見た場合、普通の青年の方が好きな人と付き合える可能性は高いだろう。

 

なぜそうなるか?

簡単に言えば、繰り返せば繰り返すほど偶然の恩恵を受けられるからだ。

大事なことなので、言葉を変えてもう一度言おう。

何度もチャレンジすればラッキーが転がり込むことがある。

 

自分ではどうすることもできない”偶然”に作為的にアプローチするには、回数を増やすしかない。

簡単に言えば、たくさん宝くじを買って当選確率を上げるってわけだ。

 

なにかに失敗しても「運が悪かったな~」と、自分を責めずに運のせいにしちゃう。

誰かが失敗しても「運が悪かったね」と、相手を責めない。

そうして次、また次と、楽しみながらチャレンジすれば、偶然にも”結果”を得られる可能性も高くなるのではないだろうか。

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