これは1998年アメリカのスペースシャトル「エンデバー」の宇宙飛行士が撮影した写真。ねつ造ではなく、正真正銘の本物。
そこには宇宙空間に浮かぶ奇妙な物体が写っている。
…これこそがブラックナイト衛星(黒騎士衛星)だッ!!
一説には13,000年前から地球の周りを回っているとされ、その正体は謎に包まれている。
宇宙人が地球人を監視するために設置したのか?
1万2,000前に滅んだとされるムー大陸の超古代文明が打ち上げた人工衛星か?
それとも、ただの宇宙ゴミなのか?
いろんな説が乱れ飛んでいるが、ついにその正体が判明した。
1998年当時にエンデバーのミッションに参加していたスタッフのひとりで、現在は宇宙ジャーナリストのジェームス・オバーグ氏が”ブラックナイト衛星の真実”を語ったのだ。
ブラックナイト衛星とは何なのか?今どこを飛んでいるのか?その正体とはなんなのだろーか!?
ブラックナイト衛星(黒騎士衛星)とは何なのか?
「地球の周りを2つの謎の衛星が周回している!!」
このような報告が最初になられたのは、1954年のアメリカでのこと。
UFO研究家のドナルド・キーホーが発表し、それを新聞が取り上げる形で広まった。
これがブラックナイト衛星にまつわる伝説の最初の1ページだ。
1954年といえば、ソ連が人類最初の人口衛星「スプートニク1号」を打ち上げる3年も前のこと。当然のことながら、1954年の人類には人口衛星を打ち上げる技術はない。
「謎の衛星は宇宙人が作ったのか?」
「ソ連が秘密裏に打ち上げたのでは?」
当時のアメリカはこの謎の衛星で大いに盛り上がったが、結局のところ、そんな奇妙な衛星を発見することはできなかった。
だが…
謎の衛星についての報道がなされた6年後の1960年、なんと本当に地球の周りを回っている謎の物体が観測されることとなる。
世界中のどの国もその謎の物体を打ち上げたと公表しておらず、謎は深まるばかり。
そうして謎の物体は「ブラックナイト衛星」と名付けられた。(黒騎士は”正体不明”というニュアンスを持っている)
このブラックナイト衛星、なんと50年以上昔から謎の電波を発信し続けているという。
最初にその奇妙な電波を受診したのは、あの伝説的科学者二コラ・テスラ。
それ以降も世界中の天文学者がこのブラックナイト衛星からの電波を受信しており、1928年にはノルウェーの科学者ハルスが傍受しデータを報告している。
さらに時は過ぎ、1973年。
スコットランドの天文学者ダンカン・ルナンが、1928年に記録された奇妙な電波を研究し、恐るべき秘密を解き明かした。
この電波を解析した結果、電波の発信元は13,000年前に月の近くに存在していた衛星からであり、その衛星はうしかい座エプシロン星の宇宙人が地球に送り込んだものだと判明したのだ!!
ルナン自身はブラックナイト衛星について言及していないものの、「13,000年前に月の近くに存在していた衛星」と「地球を周回する謎のブラックナイト衛星」が結び付けられ、この発表に以降は「ブラックナイト衛星は13,000年前からから地球を回り続けていた」と語り継がれるようになった。
そして1993年、ついに謎に包まれたブラックナイト衛星がクリアな状態で撮影された。
エンデバーの搭乗員が宇宙ステーション建設ミッションの途中に撮影したものだ。
「ついにブラックナイト衛星が捉えられたぞ~!!」
NASAの発表したこの画像に、世界中のUFOファンやオカルティストがお祭り騒ぎの大フィーバー。
この写真によって、1950年代から語り継がれてきたブラックナイト衛星の都市伝説が完成することとなる。
写真に写るブラックナイト衛星が本物であるとしたら、我々人類は13,000年も前から何者かによって監視されて続けていたわけだ。
観測者は人類の進化をゼロから観察できただろう。きっといいデータが得られたに違いない。
でも、エプシロン星の宇宙人だって?
話がぶっ飛びすぎている。
それよりも、どこかの国が密かに打ち上げた人口衛星だとか、人口衛星の残骸であるとか、隕石の破片であるという方が現実的だ。
はたしてブラックナイト衛星は本当に存在するのか?
存在するとしたら、今も地球の周りを回り続けているのだろうか??
一連のブラックナイト衛星にまつわる都市伝説の真相とは?
ではブラックナイト衛星の都市伝説を最初からひも解いてみよう。
まずは1953年の「地球の周りを謎の衛星が周回している」という報道。
そもそも1940年代後半~50年代のアメリカは空前のUFOブームに沸いていた。あの有名なUFOが墜落したという「ロズウェル事件」も1947年だし、「ケネス・アーノルド事件」も1947年、UFOにアメリカ空軍機が撃墜されたという「マンテル大佐事件」も1948年。今でも語り継がれる重大なUFO事件のほとんどは、この時期に発生している。
そんな時代で、自称UFO研究家ドナルド・キーホーはUFOに関するウソ、大げさ、紛らわしい記事を書きまくり、生計を立てていた。さらには、怪しげなUFO団体も主宰している。
彼の記事は99%がデタラメなので、「地球の周りを謎の衛星が周回している」という話も眉唾ものだろう。
1960年にアメリカ海軍が捉えた謎の衛星は、ソビエトのスパイ衛星なのではないかとされていたが、実際には空軍の衛星「ディスカバラー8号の残骸」であることが判明している。
天文学者ダンカン・ルナンが発表した「13,000年前の謎の電波」については、後年ルナン自身が「非科学的であった」と認めている。
そして問題のブラックナイト衛星の写真。
これについては宇宙ジャーナリストのジェームス・オバーグが、NHKのコズミック・フロントNEXTという番組でその真相を語ってくれた。
オバーグ氏はNASAのエンジニアとして22年間勤務した経歴を持っている。
さらに1998年当時のスペースシャトル「エンデバー」のスタッフのひとりでもあった。
そんな彼が番組で語ったブラックナイト衛星の真相を紹介しよう
これ(ブラックナイト衛星)は宇宙人の衛星なんかではありません。
私の友人の恥ずかしいミスなんです。
宇宙ステーションを建設するために、ジェリーは船外活動をしていました。
彼の任務は宇宙ステーションを断熱ブランケットで覆うことでした。
その作業中、宇宙服に固定されていたはずのブランケットが外れ、流されてしまったんです。
この件についてジェリーに聞いたことがあるんですが、彼は「申し訳ないことをした」と言っていました。
他のクルーがその時の様子を撮影していました。ブランケットは戻ってくることはなく、次のミッションでやり直すことになりました。
飛んで行ったブランケットは数日のうちに大気圏に入り、燃え尽きました。
地球のどこかで光って見えたはずです。
ブラックナイト衛星だと思われる画像の正体は、宇宙飛行士ジェリー・ロス氏が船外活動で過って落とした耐熱ブランケット。
これが真相だ。
ブラックナイト衛星は今でも地球の周りを回っている…わけはない。
1998年にこの断熱ブランケットは大気圏で燃え尽きている。
番組では断熱ブランケットが外れて宇宙空間に流されていく映像も紹介された。
この結論を疑う余地はないだろう。
それにもしホントにブラックナイト衛星なんてものが存在するのなら、今の技術であればいとも簡単に観測できるだろう。観測されていないってことは、もともとそんなものは存在しなかったってわけだ。
宇宙ステーションを覆うはずの断熱ブランケットだそう。フォルムが角ばっているし、とてもじゃないが”衛星”には見えないね。
宇宙飛行士ジェリー・ロスの苦悩
ブラックナイト衛星について当時の宇宙飛行士ジェリー・ロス氏に聞いたことがあるというオバーグ氏。
ジェームス・オバーグ「いま話題になってるブラックナイト衛星って知ってるか?そう、あれだよ、君が船外活動でミスった時の写真さ。あれが今、謎の衛星ってことで世界中で話題になってるんだ。13,000年も前から地球を周回してるんだってさ!すごいよなぁ、まったく。ねえ、ジェリー。正直なところ、この大騒動の当事者としてどう思っているんだい?」
ジェリー・ロス「…申し訳ないことをした」
まったく、なんてデリカシーのないことを聞くんだい、オバーグさん。
それにしても、ジェリー・ロス氏は誰に謝っているのだろうか?
少なくともこの話題を振ってきたオバーグ氏ではないだろう。
恐らく自分の些細なミスが原因なのに、世界規模で大騒動になってしまったことで迷惑しているNASAスタッフや、フェイクニュースに踊らされる人々に対する謝罪だろう。
若かりし日のジェリー・ロス氏。現在は御年70歳を超えている。(画像はwikipediaより参照)
ジェリー・ロス氏は超真面目な性格で、7回のスペースシャトル・ミッションを経験した優秀な宇宙飛行士だ。
今でもテレビ番組であのブラックナイト衛星画像が出てきたら、気まずそうな、申し訳なさそうな顔をしているかもしれない。
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