- 幼いころからゲームをしているとストレスに強くなる
- ゲームによって記憶形成、空間的定位、戦略的計画、微細運動技能に関連する脳の領域が増大する
- ゲームは創造性、判断力、状況分析能力、読解力、注意力を向上させる
- ゲームはストレス軽減作用がある
- 子どもの頃からのゲームは道徳心を育む
- ゲームはIQ(知能指数)を高める
こどもの頃からゲームをやりすぎると、キレやすくなるとか、凶悪犯罪を起こすとか、我慢できない大人になるとか言われている。
これがいわゆるゲーム脳ってやつ。
ゲームの影響で脳の前頭前野の機能が低下するらしい。
そうすると、理性的な判断力が低下してしまうのだとか。
最近凶悪犯罪が増えているのも、子どもの頃からゲームをやり続けた世代が大人になっているからなのか…??
しかしながら、最新の研究ではゲームをプレイすることのメリットが次々と判明している。
「ゲーム=悪」では、けっしてないのだ。
”ゲームで遊ぶことによる良い影響”についての研究を知れば、子どもも、大人も、そして高齢者だって、全員が健康のためにゲームで遊びたくなるはず。
そんなゲームにまつわる研究の内容を紹介しよう。
ゲームが脳に及ぼす好影響とは!?
まずは、最初に紹介した”ゲーム脳”ってやつの誤解を解いておこう。
ゲーム脳は2002年に出版された「ゲーム脳の恐怖」という書物で初めて登場した”造語”だ。
著者は独自の調査で、ゲームが脳に及ぼす悪影響を調べ、それをまとめて出版したわけだ。
このゲーム脳という考え方は「子どもにゲームをやらせたくない親」たちに大ウケ!当時はテレビでもよく紹介されていた。
だけどこれ、脳の検査手法や考え方に根本的な問題点があったり、科学亭に矛盾していたりと、今では専門家の間で完全否定されている。
ゲームをやったからといって、脳の機能が衰えたり、キレやすくなるわけじゃないのだ。
それっきり「ゲームは脳に悪い」という研究結果はきかなくなった。そして近年、むしろ「ゲームは脳によい」という真逆の研究結果が、世界中で発表されている。
それらの研究を紹介したい。
ゲームは実務的のスキルを育む!
シンガポールマネージメント大学の研究チームの発表によると、ビデオゲームに熱中した時期が幼いほど、切り替えコストと混合コストにうまく対処できる能力を獲得しているということだ
出展:【最新研究】ビデオゲーム開始年齢が低いほどストレスに強い人物になれる(おたぽる)
混合コスト→複数の作業を同時進行でこなすことでかかる余計なストレス。
切り替えコスト→ひとつに集中せずに複数の作業を切り替えてやった場合にかかる余計なストレス。
多様な種類の作業を要求される現代社会で、それらの作業を切り替えたり、同時進行でこなす事はすさまじいストレスとなっている。
ゲームはそれらの作業効率を上げ、ストレスを軽減する効果があるのだ。
こどもの頃からのゲーム体験が有効だけど、大人になってからでもゲームをすればストレス耐性が高まるという。
脳科学的にもゲームによってマルチタスク能力が高まることは証明されている。
ゲームは暴力衝動やうつとは全く無関係
イギリスの研究機関が1800人のこどもを対象に行った研究がある。
8歳~9歳の時にアンケート調査を行い、15歳になった時に再びアンケート調査を行った。
その結果、暴力的なゲームが行為障害を引き起こしたり、うつ的な傾向を増長するような結果にはならなかった。
「ゲームと青年期後半の行為障害との相関は弱い」との結論がなされたのだ。
ゲームをやっているからといって、特に悪影響があるってわけじゃない。
ゲームは脳の機能を活性化させる!
「スーパーマリオ64」をプレイさせた実験で、記憶形成、空間的定位、戦略的計画、微細運動技能に関連する脳の領域が増大することが明らかになった。アルツハイマーなど、脳の特定の領域が萎縮する精神疾患の治療に役立つ可能性もある。
出展:「マリオ」ゲームで脳の特定の部位が発達:研究結果(WIRED)
ドイツにあるマックスプランク人間発達研究所とセント・ヘドウィグ病院シャリテ大学医学部の共同研究によると、ゲームをすることで脳のある領域(右海馬、右前頭前皮質、小脳の灰白質)が大きくなる事が分かった。
脳が委縮してしまうアルツハイマーの改善に、ゲームが役立つかもしれない。
これとは別の研究だけれど、ゲームをやることによって頭頂皮質、前頭葉、前帯状皮質の機能も向上し、集中力や注意力がアップするという報告もある。
ゲームは判断力を強化する!
2011年にミシガン大学の研究チームが行った画期的な研究では、ゲームの内容が暴力的であるか否かに関わらず、ゲームをすると、男女ともに創造性の顕著な向上が見られました。
ロチェスター大学の科学者らが、ゲーミングに関する研究で認知力のデータを調べたところ、ペースの速いゲームをする人は、遅いゲームをする人よりも、素早く正しい判断ができるという、貴重なライフスキルを習得することがわかりました。
ゲームをやればクリエイティブで創造的な人間になれる。しかも、ハイスピードのアクションゲームをやることで、素早く正しい判断力が養われる。
ゲームは芸術家や、プロスポーツ選手にもオススメなのだ。
ゲームで根本的に頭がよくなる!
ドイツにあるルール大学ボーフムの心理学者が、ゲーマーの記憶と脳についての研究を発表した。
行った実験の内容は、1週間に15時間以上アクションゲームをやっている17人のゲーマーと、ぜんぜんゲームをしない17人とを集め、天気を予測するカードゲームを行うというもの。
このゲームは気象予測タスク(weather prediction task)という名前で、どうやら確率の学習についての心理実験のようだ。
使用される4つのカードには、それぞれに晴れになる確率と、雨になる確率が設定されていて、それを使って天気を予測するゲーム。(詳しいルールはわからないけど…)
この気象予測タスクをゲーマーと普段ゲームをやらない人にやってもらった結果、圧倒的にゲーマーの方が成績が良かったという。
この結果に、研究者はゲーマーがいかに素晴らしいかを熱く語っている。
Our study shows that gamers are better in analysing a situation quickly, to generate new knowledge and to categorise facts – especially in situations with high uncertainties.
(われわれの調査によれば、ゲーマーは状況を素早く分析し、新しい知識を生み出し、事実を分類し、特に高い不確実性のある状況下では高いパフォーマンスを発揮するだろう)
このドイツの心理学者、絶対ゲームめっちゃ好きやろ!!
とにかくゲームが趣味の人は、まったくやらない人よりも頭の回転が速い傾向があるようだ。
暴力的なゲームで遊んでも悪影響はない!!
若者の攻撃的行動と暴力的なゲームとの間に相関関係がないとする研究結果を英オックスフォード大学のインターネット研究所が発表し、注目を集めている。
これは同研究所がRoyal Society Open Science上で発表したもので、それによると英国内の14、15歳の若者の攻撃的行動について両親からヒアリングした結果に、EUおよび米国で用いられているゲーム内のバイオレンス度の評価システムと掛け合わせて影響の有無を調べたところ、相関関係がないことが判明したというもの。
とくに海外のゲームの中には、まったく信じられないような暴力的で残酷なゲームがある。
ゲームの中とはいえ、殺人や強盗などの犯罪行為をして楽しんでいる子どもたち…。
親から見れば「教育に良いわけない!!!」と思うだろう。
しかし子どもは、大人が思っている以上に頭がいいしタフだ。
ゲームの事はゲームの事とわかっているし、それを現実社会に持ち込むことはない。もしフィクションが現実の行動に悪影響を及ぼすなら、昔に比べて犯罪率は高くなり、凶悪犯罪も増えているところ。
しかし現実にはそんなことは起こっていない。
日本でも年々犯罪率は低下しているし、凶悪犯罪も減っている。
今の団塊世代が10代だったころは、校内暴力が問題になり、凶悪犯罪もたくさん発生していた。
それに比べれば、今は天国みたいに平和な時代になっているのだ。
この事実だけみたって、激しい描写のゲームが犯罪を誘発する要因にならないのは明らかだ。
ゲームはストレスを軽減する作用がある!
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンが2014年に実施した研究で、研究者たちが491人の対象者を調べたところ、1週間でゲームに費やした総時間(主にファーストパーソン・シューティングゲームとアクションゲーム)と、「仕事関連のストレスからの全般的な回復」との間には相関関係があることが分かりました。
参照元:科学が証明する「ゲームのストレス軽減効果」(ライフハッカー)
どれだけ過酷なブラック企業で働いていたとしても、ゲームを趣味に持つことで、そのストレスが軽減されるかもしれない。
なぜなら、ゲームで遊ぶことはストレスからの回復を速める作用があるからだ。
ひとときでも現実から離れ、ゲームの中で思いっきり遊ぶ。
そうすることで悩みやストレスが軽減されるのは、ゲーム好きなら一度は経験したことがあるだろう。
強いストレスにさらされる現代人にとって、ゲームはますます重要な位置を占めているのだ。
ゲームは道徳心を育む!!
イギリス南部にあるボーンマス大学の研究者たちが、11歳から18歳までの166人の未成年を対象に、「ビデオゲームのプレイ習慣」および、何が正しくて何が間違っているかを判断する際の思考プロセスである「道徳的発達」を測定するアンケート調査を行いました。
アンケートを分析したところ、暴力的なタイトルを含む多種多様なジャンルからより多くのビデオゲームをプレイしたと回答した若者が、道徳的推論能力を測定するテストで高いスコアをたたき出したことが判明しています。
参照元:若いゲーマーは道徳的推論能力が非ゲーマーよりも高い?(ライブドアニュース)
ゲームは正しいことや間違ったことを判断する「道徳的推論能力」を発達させる効果がある。
特に影響が強かったのが12~14歳の子ども。
ゲームでは”やっていいこと”にはたくさんのメリットがあり、”ダメなこと”にはペナルティが課されることが多い。
そこから子どもたちは多くを学ぶのだろう。
まったくゲームをやらせていないと「やっていいことと悪いことの判断がつかない大人」になってしまうかも!?
やっぱり子どもには、たくさんゲームで遊ばせた方がいいみたいだ。
ゲームは子どもの知能を高める
ABCD研究(米国で行われた脳の発達と子供の健康に関する長期的研究)に参加した米国で暮らす9~10歳の子供9855人を対象に、彼らの「画面を見ている時間(スクリーンタイム)」が分析されている。
それによると、子供たちの1日の平均スクリーンタイムは、テレビ・動画視聴2.5時間、テレビゲーム1時間、SNS30分だった。
注目すべきは、それから2年後のデータだ(対象になったのは5000人)。
最初の調査で平均よりも長くゲームで遊んでいた子たちは、IQが平均より2.5ポイント高くなっていたのだ。
また、テレビやSNSは子供の知能にプラスにもマイナスにも作用していないこともわかった。
なお、IQのスコアは読解力、視覚的空間処理、記憶力、思考の柔軟性、自制心のテストに基づいており、この結果は、遺伝的な影響や社会経済的な影響を考慮した上でのものだ。
この研究の面白いところは、ゲームをプレイしている時間が多かった子どもの方がIQが高くなったという事実。
先天的な要素や学校での教育の影響などを抜きにして、ゲームで遊ぶと頭がよくなるということがわかったわけだ。
テレビを見たりネットをするぐらいなら、ゲームをしている方が遥かに有意義であることがわかる研究結果だ。
ゲームは子どもの読解力や注意力を高める
ジュネーブ大学が伊トレント大学と共同で行った研究では、アクションゲームをすることで子供の読解力や注意力が大きく向上しうることが分かった。この成果は今年1月、行動科学に関する学術誌『Nature Human Behaviour他のサイトへ』に掲載された。
これまでの研究からも、学習障害の1つである読字障害を持つ学童は、市販のアクションゲームがプラスに働くことが分かっていた。特に読む速さの向上や注意力散漫の軽減に効果があるという。
勉強で最も大切なのは国語(読解力)だといわれている。
数学でも物理でも、問題の意味をしっかりと理解しなければ回答を導けないからだ。
さらにこの国語(読解力)がない子どもに、読解力を教えるのはメチャクチャ難しいとされている。
もしゲームをするだけで読解力が向上するのなら…
とくに幼少期であればあるほど、ゲームを積極的にプレイさせた方がいいだろう。
ゲームは遠隔手術の技量を格段に上げる
長時間ジョイスティックを操ってゲームをすることで培われる優れた手と目の連係スキルは、世界最先端のロボット手術ツールを使いこなすのに必要な能力と同じであることが、テキサス大学医学部(UTMB)の最新研究によって明らかになった。
(中略)
被験者たちは、20種類のスキルについて評価された。
例えば、針を通したり、器具を持ち上げたりといった手術動作において、安定して物をつかむ能力などだ。
テストに参加した高校生は、TVゲームを1日平均2時間プレイしており、大学生の中には1日4時間という人もいた。彼らの手術スキルはUTMBの研修医たちと同レベルであり、場合によっては上回るケースもあった。
ただし、ロボットを使わない腹腔鏡手術のシミュレーションでは、当然ながらUTMBの医師チームに軍配が上がり、ここでは医師が面目を保った。
参照元:ゲーマーは外科医と同レベル:遠隔手術の腕前(WIRED)
ゲームは空間認知能力や手先の器用さなどの能力をアップさせることができる。
技術の発達により、在宅ワークや遠隔操作での仕事が増えれば、このような”ゲームで培われた能力”が大切になってくるのではないだろうか。
ゲームの影響まとめ
明治時代には「小説なんか読むな!バカになるぞ!!」と言われてきた。
それが今や、小説を含めた読書は教養のひとつとなっている。
活字を読むと脳に良いとか、想像力が活性化するとか、理論的思考が養われるとか…。
まったくいい加減な話だ。
ともあれ、今回紹介したゲームについての研究結果をみてみると「ゲームなんかやるな!バカになるぞ!!」という時代は、もうそろそろ終わるのかもしれない。
ゲームは脳に良い影響を与える。
そしてやりすぎたとしても、決してキレやすくなったり、うつになったり、暴力的になるという事はない。
最新の実験結果を見ると、脳の活性化のためにはアクションゲームを一週間に最低でも15時間以上プレイしたいところ。
「ゲームは1日1時間以内よ!」
なんていっていたら、1週間に7時間しかゲームができない。
「ゲームは1日2時間以上やりなさい!!」
そんな時代が訪れてもおかしくはないだろう。
「え~!でも、ゲームなんてなんも考えないで遊べるし、ホントにメリットあるの??」
そう思うかもしれない。
この日本には、そんな当然の疑問を吹っ飛ばすような、ゲームのメリットをその人生で証明しているような現人神(あらひとがみ)がふたりいる。
鈴木史郎氏と加山雄三氏だ。
彼らは高齢にもかかわらず、生粋のゲーマー。
特にふたりとも、バイオハザードでプロ級の腕前を持つことで知られる。
自分なんてバイオハザードでは、マグナムやショットガンを駆使しながら「ひーこわいよー」とプレイしているのに、このおふたりはナイフ一本で簡単にクリアしてしまうというのだから驚きだ。
鈴木史郎氏は免許の更新にテストで、ゲームのやりすぎであまりにも反射神経が研ぎ澄まされているため、その指導教官に「反応が早すぎて逆に危険だ」と言われた、という伝説すらある。
この事例をみるだけでも、ゲームが脳を活性化させているのがわかるだろう。
これからの日本は、世界がまだ体験した事の無いような超高齢化社会に突入する。
この高齢化社会を乗り越えるカギは”ゲーム”なのではないだろうか?
こどもの頃からマリオカートをやりまくっていたら、アクセルとブレーキを踏み間違える事なんてないだろう。
もしかしたら、これからマリオゲートボールや、老人ホームを舞台にした恋愛趣味レーションゲームが発売されるかもしれない。
そんなゲームをやりまくった、反射神経の研ぎすまされた老人たちが活躍する国、それが近い将来の日本の姿かもしれない!!