地震研究者の木村政昭氏は「チリで巨大地震が発生すると、連動して日本でも巨大地震が発生するかもしれない」という考えをブログで紹介している。
今までの地震の歴史を見てみると、確かに南米のチリや、チリのすぐ上に位置しているペルーで大きな地震が起きると、日本でも連動して地震が起きている気がしないでもない。
でも、太平洋を挟んで正反対に位置する2つの地域に、何らかの関連性はあるのだろうか??
懐疑的な視点で、南米と日本の地震発生の歴史を検証してみよう!!!
チリ巨大地震と日本の関係!
まずは南米の地理から見て見よう。
チリは南米にある国で、ブラジルやアルゼンチンの西側にある細長い国。
そのチリの真上がペルー。
どちらも太平洋の南東に面していて、この地域の海域では地震がめっちゃ多い。
なぜならこの地域が太平洋プレートと隣接するナスカプレートに面しているため。
プレートに面しているチリ沖で発生する地震は「海溝型地震」と呼ばれるもの。
太平洋プレートに隣接する日本、ニュージーランド、バヌアツなどの東南アジアと同じ原因で地震が発生している地域。
ではさっそく、最近発生したチリの地震の後、日本で連動して地震が起きたかを見て見よう。
チリ沖のM7.0以上の地震と日本の震度5弱以上を観測した地震との比較
「チリでのM7.0以上の地震」が発生した時期の近辺、だいたい1カ月以内の範囲で「日本で震度5弱以上を記録した地震」をピックアップしてみた。
チリでの地震 | 日本での地震 |
2010年2月27日 M8.6 | 2010年2月27日 沖縄近海M6.9 |
2010年3月11日 M7.2 | 2010年3月14日 福島沖M6.6 |
2010年8月12日 M7.2 | 該当地震なし |
2011年1月3日 M7.2 | 該当地震なし |
2012年3月26日 M7.2 | 2012年3月27日 岩手沖M6.4 |
2012年10月1日 M7.4 | 2012年10月25日 宮城県沖M5.6 |
2013年9月26日 M7.2 | 2013年9月20日 福島沖M5.9 |
2014年3月17日 M6.7 | 2014年3月14日 伊予灘M6.2 |
2014年4月2日 M8.2 | 2014年5月5日 伊豆大島近海M6.0 |
2014年8月25日 M7.0 | 2014年9月3日 栃木県北部M5.1 |
2015年9月17日 M8.3 | 2015年9月12日 東京湾M5.2 |
2015年11月25日 M7.5 | 該当地震なし |
2016年4月17日 M7.7 | 2016年4月14日M6.5/16日M7.3(熊本地震) |
2016年12月25日 M7.6 | 2016年12月28日 茨城県北部M6.3 |
2017年4月25日 M7.1 | 該当地震なし |
2018年1月14日 M7.3 | 該当地震なし |
2018年8月24日 M7.1 | 2018年9月6日 胆振地方中東部 M6.7 |
2019年2月22日 M7.7 | 該当地震なし |
2019年3月1日 M7.1 | 該当地震なし |
2019年5月26日 M8.0 | 2019年6月18日山形県沖 M6.7 |
2021年11月28日 M7.4 | 2021年12月3日紀伊水道 M5.4 |
まずわかるのは、チリも日本と同じくらい地震が多い国ってこと。
チリでM7.0レベルの地震発生後に、日本で発生した地震はおおよそM5.0レベル。
これくらいの規模の地震なら日本では珍しくはないだろう。
このデータを見る限り、チリも日本も大きな地震が多い国だし、ほぼ関係ない気がする。
では、チリ地震と日本の地震との関係についての木村氏の発言を紹介しよう。
ーこのように、巨大地震が、太平洋を反時計周りに循環して発生していることが分かります。
以上のような規則性からみると、次の大地震は、太平洋の西側地域で発生する可能性が高いことも予想されます。
東のチリ付近で大地震が発生したら、日本列島を含む西側は要注意だということになります。
これまではチリ付近の大地震後1-6年、平均4年後に日本付近の巨大地震が発生しています。
参照元:2014年のチリ沖地震(M8.5)ー日本への影響は?(木村政昭ホームページ)
なんということだろうか。
木村氏は大地震の定義をマグニチュード8.0以上とし、チリで巨大地震発生後1年~6年の間に日本でも地震が発生するとしている。
…1年~6年って、めっちゃ期間が長すぎる気がするけど。
日本だって地震が多いんだから、そんな6年以内なんていわれたら絶対に地震来るでしょ!
だけど、マグニチュード8レベルの地震に限定するなら、数年に1度しか起こらない。
マグニチュード8レベルの地震に限定して、さらに期間を長くして検証してみよう。
チリでのM8.0以上の地震と日本でのM8.0以上の地震の比較
チリでのM8.0以上の地震 | 日本のM8.0以上の地震 |
1575年12月16日 M8.5 | M8.0以上の地震記録なし |
1604年11月24日 M8.4 | 1605年2月3日慶長地震(南海トラフ地震)M7.9~8.0 |
1647年5月14日 M8.5 | M8.0以上なし(1649年慶安武蔵地震 M7.1) |
1657年3月15日 M8.0 | M8.0以上なし(1662年寛文近江・若狭地震M7.2~7.6) |
1822年11月20日 M8.5 | M8.0以上の地震記録なし |
1868年8月13日 M8.5 | M8.0以上の地震記録なし |
1877年5月10日 M8.3 | M8.0以上の地震記録なし |
1906年8月17日 M8.4 | 1911年喜界島地震 M8.0 |
1922年11月11日 M8.5 | 1923年(大正12年)関東大震災 M7.9~8.1 |
1928年12月1日 M8.0 | 1933年3月3日昭和三陸沖地震 M8.1 |
1939年1月24日 M8.3 | 1944年12月7日昭和東南海地震M7.9 1946年12月21日昭和南海地震M8.0 |
1960年5月22日 M9.0 | 1963年10月13日択捉島沖地震 M8.1 |
2001年6月23日 M8.2 | 2003年9月26日十勝沖地震 M8.0 |
2010年2月27日 M8.8 | 2011年3月11日東北地方太平洋沖地震(東日本大震災) M9.0 |
2014年4月1日 M8.5 | 2015年5月30日小笠原諸島西方沖M8.5 |
2015年9月16日 M8.3 | 該当地震なし(最大は2016年11月福島沖M7.4) |
2019年5月26日 M8.0 | 該当地震なし |
(1662年寛文近江・若狭地震M7.2~7.6については、最新の研究でM8.0以上の大地震であった可能性が指摘されている)
1575年からの、合計17回発生したM8.0以上のチリ地震を検証してみた。
最新の2019年はまだ6年が経過していないので除外するとして、チリでM8.0以上の地震が発生して6年以内に日本でもM8.0以上の地震が発生したケースは16回中9回であった。
つまり、約56%の確率で連動して地震が発生しているということになる。
この16回の中には、今発生が危惧されている南海トラフ巨大地震も2回、含まれている。
では、チリ地震と日本の地震の関係を、南海トラフ地震の発生時期を基準に振り返ってみよう。
南海トラフ地震の歴史
1498年:明応地震/チリ地震のデータなし
↓(107年後)
1605年:慶長地震(M7.9)/1604年チリ地震M8.4
↓(102年後)
1707年:宝永地震(M8.6)/チリ地震のデータなし
↓(147年後)
1854年:安政地震(M8.4)/チリ地震のデータなし
↓(90年後)
1944年:東南海地震(M7.9)/1939年チリ地震M8.3
1946年:南海地震(M8.0)
過去の南海トラフ地震の歴史を見ると、5回中2回で発生の数年前にチリでも地震が発生している。
地球の裏側にあるチリのプレートが巨大な地震で揺さぶられることによって、遠く日本の近海にあるプレートも揺れ、溜まったひずみが爆発する!!
…そんな可能性もあるかもしれない。
南海トラフ巨大地震が発生する数年前には、40%の確率でチリで巨大地震が発生している。
この確率は高いのだろうか、それとも低いのだろうか…。
南米と日本の地震の連動性は80%以上!?
特筆すべきは1900年代以降の地震の連動性だ。
チリでM8.0以上の巨大地震が発生して、6年以内に同程度の地震が日本で発生する確率は80%以上となっている。
その連動した地震の中には、超有名な関東大震災や、直近の南海トラフ巨大地震、あの東日本大震災も含まれている。
ホントに連動性がある気がしないでもない。
では次に日本を襲う地震はいつ頃なんだろう?
問題は2019年5月26日にペルー北部で発生したM8.0の地震だ。
もし木村教授の説が正しいとするならば、1年~6年の間、平均4年後に日本で巨大地震が発生するということになる。
つまり2025年5月26日までにM8.0レベルの地震が日本を襲うってこと。
過去の歴史を振り返ると、場所は三陸沖、関東、東海のどれかである可能性が高い。
「まあ、6年に1度くらいはM8.0の地震起きるでしょ?チリ地震との関連性なんて偶然だよ」
という捉え方が出来なくもない。
地震の規模や発生時期も、一部ウィキペディアのデータを参照しているので、どう考えても完璧とはいいがたい。
でも念のため、備蓄したり防犯グッズなどをそろえたりして、地震に注意しておいた方がいいのではないだろうか。
南米で大地震が発生すると、3日以内に日本でも地震が起きる!?
2018年8月2日のSienceDailyに気になる記事が紹介されていた。
オレゴン州立大学の研究によると、巨大地震は他の大地震を誘発するが、特に”地球の反対側の地域”に強い影響を及ぼすという。
その記事がこちら→Earthquakes can systematically trigger other ones on opposite side of Earth(地震は地球の反対側の地域の地震を誘発する)
これは過去44年の地震データを解析した結果得られたもの。
ある地域でのマグニチュード6.5以上の地震が、遠く離れた地域でマグニチュード5.0以上の地震を引き起こす。
その傾向はマグニチュードが高ければ高いほど強く、特に地震発生後3日以内が危険だという。
ちなみにこの論文では「離れた地域で地震が連動する」という事実を過去の地震データから発見したわけだけど、その理由について明確にされていない。
なんかよくわかんないけど、とにかく大地震は遠く離れた地球の反対側の地域の地震リスクを上げることがわかったと。
つまり科学的な根拠は今のところないってわけだ。
だけど、過去の歴史は未来の予知の有効な手がかりであることは確か。
チリやペルーと日本は地球の反対側に地位している。
だとしたら、南米の地震と日本の地震が相互に影響を与えあっている可能性もゼロではないだろう。
もしペルーやチリでM6.0以上の地震が起きたら、少なくとも3日くらいは警戒しておいた方がいいかもしれない。
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