東海地震を前提とした「大規模地震対策特別措置法」が1978年の法制化以来、はじめて抜本的に見直されることになった。
今まで重点的に検討されてきた「防災対策」が、「減災対策」へと大きく方向転換されそうだ。
では、防災と減災の違いとは?
その違いをシンプルに説明しつつ、南海トラフ巨大地震に向けた減災の具体的方法について紹介しよう。
防災と減災の違いとは?
まずは防災と減災の違いをシンプルに説明しよう。
防災とは?→災害が発生しないようにする対策。災害が起きた場合にも被害を出さないことを目指す取り組み。
減災とは?→災害は起こる前提での対策。災害時に発生し得る被害を最小化するための取り組み。
ニュアンスが微妙でわかりづらい。
たとえば”泥棒被害”を災害と仮定して、その防災と減災の違いを見てみよう。
- 防災→防犯装置をつける。鍵を2つ取り付けるなど。
- 減災→貴重品は分散して保管する。現金や貴重品は自宅にあんまり保管しないようにするなど。
となるだろう。
防災と減災はその方法が重なり合う部分も多く、かなりの部分で同じ意味を持っている。
そんな中での「減災」の特徴は、災害の発生も、被害の発生も受け入れて、その中で”どうやったら被害を減らせるか”を考える取り組みってわけだ。
首都圏直下型地震でも、南海トラフ巨大地震でも、巨大地震では大きな被害が想定され、それを防ぐことは難しい。
最近では、巨大台風で恐ろしい被害が巻き起こった。
これらの大災害の被害をゼロにするのは、どんな対策を取っていようとほとんど不可能!
それよりも「被害を最小限にする」ことの方が重要になってくる。
南海トラフ地震の防災対策が再度検討される理由
「あす起きてもおかしくない」とされ、約40年前に防災対策が始まった東海地震。予知に疑問符がつく一方で、東海だけでなく南海トラフ全域への警戒が必要になってきた。政府が28日に設置した作業部会は、予知を前提に東海地震を特別扱いしてきた体制からの脱却を目指すものといえる。
参照元:東海地震「警戒宣言」見直し 南海トラフに大震法拡大 「東海偏重」脱却目指す(産経新聞)
大規模地震対策特別措置法が1978年の法制化以来、はじめて抜本的に見直されることになった。
見直しポイントはたくさんあるだろうけど、大きくふたつ。
①地震観測の対象となる地域を拡大し、それに合わせて観測体制を検討しなおす。
⓶地震予測が難しいことを前提として、防災ではなく減災の対策を検討する。
東海だけでなく南海トラフ全域への警戒が必要になってきた
大規模地震対策特別措置法は大地震が発生した場合の対策を取り決める法律だけど、前提として発生が危惧される「東海地震への対策」があった。
そのため、プレートの動きを観測する機器も、東海地方を中心にたくさん設置されている。しかし最新の研究では、東海地震が発生するのをきっかけに、南海トラフが連動して同時多発的に大地震が起きる「南海トラフ巨大地震」の可能性が高くなっている。
今後の見直し内容によっては、集中的な観測ポイントが東海地方だけはなく、もっと南西まで拡大されるだろう。
おすすめ記事:絶対に知っておくべき、南海トラフ大地震と東海地震や南海地震の違いについて。
予知を前提に東海地震を特別扱いしてきた体制からの脱却
「東海地震は予知できる!!」
大規模地震対策特別措置法はこれを前提に、さまざまな対策を練ってきた。
東海地震の前兆を察知した場合、政府をトップとして各機関が迅速に連携し、住民の避難などを行う取り組みがあるのだ。
その手順をかなり省略して紹介するとこうなる。
- 気象庁が東海地震の前兆を察知!!
- 気象庁長官から内閣総理大臣に地震の前兆の報告!!
- 閣議を経て警戒宣言発令!!
- 地震災害警戒本部設置!!
- 交通規制(新幹線の運行中止)や店舗の営業中止(銀行営業停止)危険区域からの避難!!
…長いっ!!
常識的に考えてせっかく前兆を察知できたとしても、こんな手順を踏んでたら地震発生前の対策なんでできないだろう。
とにかく東海地震の前兆が現れたら、こうしようね、ああしようね…と政府はいろいろと議論を重ね、対策を立ててきた。しかしそもそものスタート地点である「東海地震の前兆を察知する」ということが困難であることが分かってきた。
(東日本大震災も、熊本地震も、予知できた地震専門家が皆無であったのをみれば、そりゃそうだろという感じだ)
このことから、政府は東海地震は予測できることを前提とした防災対策から、いつ発生しても被害を最小限にする減災対策へと地震対策の主軸を方向転換するだろう。
(たいして信頼性の高くない地震予知を参考にして様々な規制を行ったら、莫大な経済的損失につながる。そもそも、これらの対策は実現不可能ともいわれている)
「やっぱり南海トラフ巨大地震はいつ起こるかわからないよ。だからいつ起こっても被害を最小限にとどめるように、普段から対策しておこうね」ということ。
では、防災ではない減災の具体的な対策とはどんなものなのだろうか?
自分たちでできる7つの減災対策
内閣府は減災対策として7つのポイントを挙げている。
①自助、共助
自分の身は自分で守るのが「自助」、地域や身近にいる人どうしが助け合うのが「共助」。自分の身は自分で守れるようにしておこう。
②地域の危険を知る
住んでる地域の危険度や避難所を確認しておこう。地域のハザードマップを常備しておくのも大事。
木造建築が多い下町は火災や倒壊の危険性が高いので、「地域の危険を知る」という対策がもっとも重要だ。
③地震に強い家
1981年以前に建てられた住宅は耐震基準が満たされていない可能性がある。その場合、耐震診断を受けて適切な対策を行おう。市区町村に問い合わせれば、業者を紹介してくれたり、助成金が出る場合もある。せっかく税金を払っているわけだから、こういった行政サービスを活用しよう。
④家具の固定
大地震では家具の転倒でけがをする可能性が高い。便利グッズで固定したり、家具の向きを見直して対策を講じよう。
とくに寝室には、倒れるような大きな家具は置かないほうがいいだろう。
⑤日ごろからの備え
防災セットを用意したり、しっかりと備蓄をしておこう。水や食料の備蓄は最低でも3日、できれば一週間分をしておくのが良いとされている。
⑥家族で防災会議
巨大地震は家族がバラバラにいる時に起きる可能性もある。安否確認や避難場所などの話し合いをしておこう。
⑦地域とのつながり
阪神・淡路大震災で、家の下敷きになった人々の多くを助け出したのは、家族や近所の人たちであった。普段から地域のつながりを大事にしよう。
*くわしくは内閣府の「減災の手引き」を見てみよう。
「巨大地震はいつ起こるかわからない」
普段は忘れがちなこの事実。当たり前だけど、とても大切だ。
地震大国日本に住んでいるのなら、これだけは肝に銘じておかなければならないだろう。
個人レベルでは地震を予知したり食い止めることは不可能なので、日ごろからしっかりと減災対策を行うのが大事というわけだね。