あなたは今の自分を変えたいだろうか?
それとも、今の自分に満足しているだろうか?
私は怠け者で努力が嫌いで、ホントにもうダメ人間な感じなんだけど、それを少しでも変えたいと思って「スタンフォードの自分を変える教室」という本を読んでみた。
この本はスタンフォード大学で超人気の講義「意志力の科学」の内容についてまとめた本。
意志力の科学の講義を受けた受講生のなんと84%が、以前よりも意志力が強くなったと答えたとか。
…意志力が強くなれば、やらなきゃいけないことを後回しにして遊んじゃうこともなくなるだろうか?
というわけで、この本の中から特に私自身が感銘を受けた部分をピックアップして紹介したい。
自分自身が忘れないためにも。
意志力を向上させる具体的な方法
まず最初に”意志力”とは何かを説明する。
意志力は「やる力」「やらない力」「望む力」の3つから成り立っている。
例えば「受験勉強しなきゃいけないけど、漫画も読みたいよ~」というケースで、それぞれの意志力の作用を見てみよう。
やる力:面倒だけど頑張って勉強をやる力。
やらない力:読みたいけど漫画を我慢する力。
望む力:「頑張っていい大学入ったら絶対に楽しい!」と”自分が本当に欲しいもの”を思い出す力。
この3つの意志力にはそれぞれに違った作用があり、それらを鍛えることで私たちは自分を変えられる。
スタンフォードの自分を変える教室の面白いところは、意志力というものをあくまでも科学的に捉えているところ。
例えば「禁煙したい!」と思っている人に、「とにかく我慢して!」という精神論を押し付けたりしない。
意志力を向上させるための”具体的な方法”をアドバイスしてくれる。
ちなみにタバコのパッケージに記載されている「煙草を吸うとガンになりやすいよ」というような恐ろしい警告メッセージは逆効果で、むしろタバコを吸う本数を増やしてしまうのだとか。(理由は後述します)
では、そんな具体的な意志力を鍛えるテクニックを紹介しよう。
呼吸を遅らせる
意志力を向上させるために有効のが「呼吸を遅らせる」というテクニック。
呼吸のペースを1分間に4回~6回にする。
つまり10秒~15秒に1回くらい。
吸うときに5秒数えて、吐くときに10秒数えたりするのもいいかもしれない。
この呼吸の練習をしておくと、ストレスに強くなる。
ストレスに強くなると意志力がアップする。
なぜなら、ストレスがかかっている状態だとどんな人でも意志力が低下するから。
疲れていると怒りっぽくなったり、怒られた後に怠けたくなるのも、ストレスのせい。
お腹が減っているだけでも、人は誘惑に負けやすくなる。
意志力には個人差があるけど、誰だってストレス状況下では意志力を発揮できないわけだ。
(ちなみにタバコの怖い警告文は、それを読んだ人にストレスを与え、意志力を低下させる。その結果、タバコの本数が増えちゃうのだとか。本末転倒すぎる!)
ストレスを管理する能力をトレーニングしたり、ストレスに強くなれば、自然と本来の意志力を発揮できる。
大切なことをそっちのけで、漫画やゲームで遊びたくなったら。
やめろと言われているお酒やタバコに手を出したくなったら。
やらなきゃいけないことなのに、どうしてもやる気がわかなかったら。
試しにゆっくりと呼吸してみよう。
そうすれば意志力が復活して、今までの自分が変わるかもしれない。
運動したり散歩すると意志力が上がる
マッコーリー大学の心理学者オートンと生物学者チェンのふたりが面白い実験を行った。
実験参加者の男女24名に対してスポーツジムの会員証を無料で配布し、できるだけ多く利用するようにと勧めたのだ。
実験の内容はこれだけ。
他には何の指示もしていない。
実験終了の2カ月後、実験参加者には驚くべき変化が起こっていた。
- 喫煙、飲酒、カフェイン摂取量が減少した。
- ジャンクフードを控え、健康的な食事をするようになった
- テレビの時間が減り、勉強時間が増えた
- 衝動買いが減り、貯金が増えた
- 感情がうまくコントロールできるようになった
運動の習慣をつけると脳の自制心を発揮する「前頭全皮質」が強化される
これによって意志力が強化され、それが生活習慣の改善につながったのだ。
スポーツジムに行くとなると、なんとなくハードなトレーニングを思い浮かべちゃう。
だけど運動が激しければ激しいほど、それを継続するためにも意志力が消費されてしまうだろう。
これじゃあ意味がない。
だけど安心して欲しい。
運動は1日にたった5分でもOK!!
それだけでも十分に意志力のトレーニングになるという。
ストレスを解消すると意志力が上がる
「好きな人にフラれた…」
「仕事で大失敗をした…」
「大切なテストで散々な結果だった…」
そんな強烈なストレスを感じて落ち込んでいると、人は意志力を発揮できず、誘惑に負けやすくなってしまう。
私たちの脳はストレスをどうにかしようと思い、それを解消するための行為を私たちに強要する。
だからストレスを感じれば感じるほど、意志力を発揮するのが難しくなっちゃう。
ここで大事なのは、脳が求めている”気晴らし”が本当の意味でストレス解消になっていないこと。(脳みそって意外にアホなのだ)
ヤケ酒を飲んだり、ヤケ食いをしたり、ネットで現実逃避したり、何もやる気になれずダラダラと過ごしたり…。
確かに一瞬の気晴らしにはなるかもしれないが、それらの行為は本当の意味でストレス解消に繋がらない。
「ふう…昨日は仕事に失敗したから、めちゃくちゃに甘いものを食べて深夜までゲームをしてしまった。でもおかげでストレス解消になったし、今日から頑張るぞ~!!」
なんてわけにはいかない。
おそらくほとんどの人が脳の誘惑に負けた結果、ストレス解消どころか後悔を感じ、より強いストレスを感じることだろう。
本当のストレス解消は、精神的な安定を司る脳内物質セロトニンや、幸せホルモンであるオキシトシンを活性化させたり、体内のストレスホルモンであるコルチゾールを低減させたり、筋肉を弛緩(リラックス)させたりする作用がある。
そんな作用を持った、アメリカ心理学会がオススメするリアルガチなストレス解消法がこちら。
- 運動やエクササイズ
- 礼拝に出席する
- 読書や音楽を楽しむ
- 家族や友人とすごす
- マッサージを受ける
- 外に出て散歩する
- 瞑想やヨガを行う
- クリエイティブな趣味の時間を持つ
礼拝なんてのはキリスト教だからこそって感じだけど、もしクリスチャンなら効果的だろう。
家に神棚があるのなら、ご飯とか水をそなえてお祈りするのもいいかもしれない。
瞑想なんかは海外で大人気。
「マインドフルネス瞑想法」なんかが流行していて、ストレスコントロールに有効なのは科学的に証明されている。
でもまあ、1日5分の散歩がもっともオススメかもしれない。
「家から駅まで徒歩10分だし、これが散歩になっているはず…」
なんてのはダメ。
ただ何の目的もなく、ストレスフリーな状態で、ちょっと早歩きで、風を感じながら散歩しよう。
意志力を鍛えるトレーニング
ノースウェスタン大学の心理学者チームが、「意志力によって恋人への暴力が減らせるか」という実験を行った。
実験参加者の恋人がいる40名の成人を3つのグループに分けた。
①利き手ではない方の手で食事や歯磨きをするよう指示されたグループ
②汚い言葉を使うのを禁じられたグループ
③何の指示も出さないグループ
実験の結果、①と②のグループは些細なことでかっとなることが減り、暴力も減ったとのこと。
これは利き手ではない方を使うことや汚い言葉を使わないことそのものに意味があるわけではない。
自分がやろうとしていることを、ちょっとした意志力を発揮して変える、そのトレーニングなわけだ。
これを続けることで意志力全体も向上するってわけ。
日々の生活の中で、”ちょっとした意志力”が必要なことを決めてやってみよう。
- いつもとは違う手でスマホを操作する
- 利き手ではない方で箸を使う
- 食事のときにテレビをつけない
- 口癖を言わないようにする
- 1日5分、散歩に出かける
- 食後のデザートを我慢する
こんな風に、ちょっとだけ困難な行為を自分で選ぶことを繰り返せば、少しずつ少しずつ今までの自分を変えられるだろう。
精神論は逆効果!自分への思いやりがポイント
特に日本人は根性論が染みついているかもしれない。
「頑張れ!負けるな!!根性だ!!!」
なんて。
これが行き過ぎると、逆に意志力の低下を招いてしまうかもしれない。
カールトン大学で勉強を先延ばしにする学生を観察した、面白い実験を紹介したい。
試験直前までまったく勉強しなかった学生を調べると、その後の反省の仕方によってまったく違った傾向があらわれたのだ。
①勉強しなかった自分を責め、もっと頑張ろうと思った学生
②しょうがないよ、と自分を許した学生
この2つを比べると、自分を責めた学生ほど次の試験でも勉強しない傾向があらわれ、自分を許した学生の方が次の試験でしっかりと準備できたとか。
なんとなく自分を許した方が反省もしないし、次の改善に繋がらないような気がするけど…。
でも確かに、強すぎる自責の念は意志力を低下させるみたいだ。
「失敗した自分を許す」
そうしてありのままの自分を受け入れれば、失敗について考えるのが楽になり、失敗を繰り返すこともなくなる。
ダイエットに失敗すると、ヤケになってたくさん食べちゃう。
禁酒に失敗すると、「どうにでもなれ!」と酒を飲みまくる。
誘惑に負けると自己嫌悪に陥り、手っ取り早いストレス解消法に飛びつく。
だけどそれはストレス解消にはつながらず、地獄の悪循環が始まる。
もし失敗したら、「しょうがないよ。誰だって時には誘惑に負けるものさ」と自分自身を慰めて、自分の弱さを受け入れよう。
そうすれば、ただ激しい自己嫌悪に陥るよりも、遥かに意志力を発揮できる状態になるはずだ。
10分間待つ、あるいは10分間だけやってみる
意志力を発揮するには10分待つのが有効。
例えば「ポテトチップスが食べたくてたまらん!!」という激しい衝動を感じ、それに”やらない力の意志力”を発揮したいと思ったとき。
とりあえず10分間我慢してみる。
10分後にも変わらずそれを欲していたのだとしたら、もう我慢せずにやっちゃえばいい。
でももし、10分待ってみて誘惑が少しでも減ってきていたら、苦労せずに我慢できそうなら、それをやらない。
例えば「勉強がやりたくないッ!!!」と思い、それに”やる力の意志力”を発揮したいと思ったとき。
とりあえず10分間は我慢して勉強してみる。
10分後に変わらずに勉強したくないのなら、もう勉強をやめてしまえばいい。
でももし、10分勉強してみてもう少し続けられそうなら、そのまま勉強を続ける。
10分というのは、脳の報酬に対する受け止め方の重要なポイントなのだとか。
人間は目先の報酬に対して、その誘惑に打ち勝つのは困難。
目の前に美味しそうなクッキーがあって、「いつでも食べいいよ!」といわれれば、みんな食べちゃう。
だけど10分後の報酬となるの、脳は”ずっと先の報酬”と解釈する。
すると「すぐに手に入る報酬」よりも我慢するのが簡単になるとか。
10分我慢してやらない、あるいは10分我慢してやる。
たった10分であれば、意志力を発揮できるのではないだろうか?
目標は感染する
ここでは、意志力の中でも「望む力」を鍛える方法を紹介したい。
ポイントは「人間はどうしようもなく、まわりの人間の影響を受ける」ってこと。
たくさん食べる人と一緒に食事をすると、自分の食べる量も増えちゃう。
テレビで喫煙や飲酒のシーンを見ただけで、自分もタバコを吸いたくなったりお酒が飲みたくなる。
仲間が怠けていると、自分も怠けたくなる。
恐ろしいのは、そういった生活習慣ではなく、自分の目標すらもまわりの人間から影響を受けるってこと。
「春休みにアルバイトをやりまくってお金を稼いだ学生」の記事を読ませた学生は、自分もお金を稼ぎたくなった。
「バーで女の子をナンパした男」の記事を読んだ学生は、女の子に優しく接するようになった。
心理学者は、このように他者と同じ目標を抱いてしまう無意識の傾向を”目標の感染”と呼んでいるのだとか。
意識の高い起業家のグループ。
ダイエットを頑張るグループ。
お酒をやめたい断酒会グループ。
遊び大好き怠け者グループ。
それぞれに、いい影響、悪い影響を受ける。
自分の意志力高めるには、まわりの人間を最適化するのが有効だ。
とくに自分と同じ目標を持った人たちと積極的に付き合うのは、自分の”望む力”を鍛えるのに最適の方法なのではないだろうか。。
自分の気持ちと行動を切り離す
まず知っておいて欲しいのは、自分の思考は自分じゃあどうにもならないってこと。
「シロクマのことは考えないでください」
といわれると、どうしたってシロクマのことを考えちゃう。「考えてはダメだ」と思えば思うほど、頭の中がシロクマでいっぱいに。
ダイエットをしていて「大好きな○○を食べちゃダメだ!」と思えば思うほど、どうしても食べたい気持ちが沸き起こってしまう。
わたしたちは自分自身の思考をコントロールできると思っている。
だって、まさに”思考”は”わたしそのもの”だし、考える事柄を決めているのは当然自分だって思うだろう。
だけどそれは大きな間違い。
”思考”は自分の意志とは関係なく巻き起こり、私たちの行動を支配したり、心を乱したりする。
食べたい!
遊びたい!
怠けたい!
どうすればそんな”目的の邪魔になる思考”に打ち勝つことができるのか?
「スタンフォードの自分を変える教室」では、驚くべき回答が紹介されていた。
もうあきらめろ!
これが本書で紹介された、思考に対する対策だ。
そう、どれだけ考えるのを止めようと思っても、私たちは思考を止めることはできない。
ただ諦めて、その思考を受け入れることしかできないのだ。
そこで大事なポイントが1点。
たとえ自分の思考を受けれたとしても、その思考と同じ行動をとる必要ないってこと。
ダイエット中に「ケーキが食べたい!!」という衝動に憑りつかれてたとしよう。
「ケーキなんか食べちゃだめ!ひとくちで300kcalはいっちゃうよ!絶対ダメ!太っちゃう!」
と自制するよりも「私はケーキを食べたいと思っている。だってケーキ美味しいし」と受け入れる。
このケーキを食べたいという深い衝動は、たとえケーキを食べようが食べまいが、いつかは去っていく。
まず、思考を否定せずに受け入れることで、心を落ち着かせる。
そこで深呼吸して、自分の心の動きに注意を向ける。
自分の思考を受け入れつつも、自分の本来の目的を思い出す。
「確かに私は○○したいと思っている。だけどその思考に従い○○をする必要はない」
そう思い、台風が過ぎ去るのをじっと待つように、衝動(思考)という嵐が過ぎ去るのをただ待つ。
そうすれば、少しずつ意志力も回復してくるだろう。
- 思考は否定せずに受け入れる
- 思考と行動を切り離して考える
- 深呼吸して落ち着き、本来の目的を思い出す
これを繰り返すことで、意志力が鍛えられる。
実践するのは中々難しいけど。
意志力を高めて自分を変える方法まとめ
- 呼吸を遅らせる
- 運動したり散歩すると意志力が上がる
- ストレスを解消すると意志力が上がる
- 意志力を鍛えるトレーニング
- 精神論は逆効果!自分への思いやりがポイント
- 10分間待つ、あるいは10分間だけやってみる
- 目標は感染する
- 自分の気持ちと行動を切り離す
と、自分を変える具体的なテクニックを紹介してみた。
深呼吸と1日5分の散歩。
とりあえず、これくらいから始めてみようかな!!
恐ろしい「いつわりの希望シンドローム」とは?
…という「自分は変わるんだ!」という気持ちに冷や水を浴びせかけるのが、本書に紹介されている「いつわりの希望シンドローム」。
①失敗して落ち込む
②自分は変わるぞ!と決心する
③たちまち安心して未来に希望が見えてくる
④実際に努力をして現実を思い知る
⑤挫折して努力を止める
⑥最初に戻る
この悪循環がいつわりの希望シンドロームだ。
いつでも自己啓発書が売れまくる本当の理由。
もっとも楽しくて気分がいいのは「自分は変わるんだ!」と決心すること。
だけど努力しても中々状況は変わらないし、思ったようにいかない。
そうして挫折するけど、しばらくするとまた「変わるぞ!」と決心する。
このような悪循環を断つには、結局のところ意志力を鍛えるしかない。
”望む力”を発揮して目標を定め、やらない力で誘惑に打ち勝ち、やる力で努力を続ける。
とても難しいけど、失敗しても自分を責めずに許す。
人間は劇的に変わらないし、そうして少しずつ前進していくしかないみたいだ。
ちなみに「スタンフォードの自分を変える教室」では、さらに詳しく、さらにたくさんの自分を変える方法が紹介されているので、興味のある方は読んでみよう!!