「2位じゃダメなんですか?」
かつて話題になった、民主党政権時代の蓮舫議員の発言だ。”必殺仕分け人”として名をはせた蓮舫議員によって、日本の次世代スーパーコンピューター開発費も削減の対象となった。
このことからわかるように、次世代スーパーコンピューターには巨額の開発費が投じられている。
必然的に、日本が世界に誇るスーパーコンピューター「京」は、その巨額の開発費に見合う”成果”を求められている。
スパコン京に期待される成果のひとつに「防災・減災に資する地球変動予測」がある。
そんなわけで、京の桁外れの演算能力を利用し、「首都直下地震が発生した場合のシミュレーション」が行われた。
今までのシミュレーションとは比較にならないほどに精度の高いデータ。
そこからわかった意外な事実とは何なのだろうか?
首都直下地震のシミュレーションが教えてくれること
スパコン京が東京都心で最大震度7の首都直下地震が発生した場合のシミュレーションを行った。
内閣府が2013年に発表した「首都直下地震の震度分布図」は、最小範囲が50m×50mの情報量であった。
しかし京が行ったシミュレーションでは1m×1m範囲での震度解析が可能!!
極端な話、2人の人間が並んで立っていたとして、それぞれの感じる震度の違いすら計測できるという事だ。
さらに、地下深くの地層の動きまでも、1m単位で解析することに成功。
これによって首都圏に広がる約32万の建物1軒1軒の揺れ方の違いまでも、緻密に割り出したのだ。
そこから導き出された、首都直下地震の特徴とは?
①地盤が柔らかくても耐震構造の建物であれば揺れが軽減される
都心の東側は埋め立て地が多く、柔らかい地盤が広がっている。そのため、その上に建てられた建造物は揺れやすい。
しかしそんな中であっても、大きく揺れた建物と、あまり揺れない建物の間に大きな差が現われた。
その違いは建物の耐震構造にある。
隣接する建物が大きく揺れたとしても、柔らかい地盤に対応してしっかりと耐震対策のとられた建物はそれほど揺れないという事が分かったのだ。
②首都直下型地震は高層ビルなら意外と被害が少ない可能性がある
新宿に広がる高層ビル群を解析したところ、意外な事実が分かった。
まわりの建物が大きく揺れているにもかかわらず、高層ビルは意外と揺れていなかったのだ。
その理由は首都直下地震の揺れ方の特徴にある。
2011年の東日本大震災は海溝型地震であった。その特徴は振動周期が長く、揺れ幅が大きい事。
東日本大震災のような長い周期の揺れでは、超高層ビルが大きく揺れるのだ。(私は東日本大震災当日、高層ビルの15階で勤務していたが、あまりにも揺れすぎて気持ち悪くなった。ガチで死ぬかと思った)
対して首都直下地震は、短い周期の揺れである可能性が高いという。その特徴は小刻みに揺れること。超高層ビルは小刻みな振動に強く、揺れを吸収することが可能なのだ。
首都直下地震が発生しても、超高層ビルの被害は意外に少ない可能性がある。
③1981年5月以前に建てられた古い耐震基準の木造家屋は、大きな被害をこうむる可能性が高い
建物のひとつひとつの揺れ方の違いが判明した、スパコン京のシミュレーション。そこでわかったのは、同じ震度で同じ地盤でも、建物によって揺れ方に大きな違いがあるという事であった。
住宅地の揺れ方の差は、その耐震基準にある。
1981年5月以前に建てられた古い耐震基準の木造家屋は、それ以降に建てられた住宅よりも遥かに大きな被害をこうむる可能性が高いことが、改めて確認されたのだ。
しかし、たとえ新しい耐震基準で建てられた建物でも安心してはいけない。適切なメンテナンスをしていなければ耐震性は維持できていない場合があるからだ。もし1982年に建てられていたとしたら、築30年以上になる。当然の事だろう。
被害を最小限に食い止めるのに大切なこと
スーパーコンピューター京の首都直下地震シミュレーションでわかったのは、建物の構造で驚くほど揺れ方が違うという事実。
山を切り開いて出来た住宅地は比較的地盤が強いといわれているし、埋め立て地は地盤がゆるいといわれている。しかしそれと同じくらい重要なのが、建物の耐震構造なのだ。
今自分が住んでいる住宅の耐震構造を確認すると共に、もし耐震構造が甘かったり築年数が経過しているとしたら、適切な補修や補強などをすることが大事。そうすれば、首都直下地震の被害を最小限に食い止めることができるだろう。
とはいえ、「家のリフォームなんて出来ない!」「引っ越すのも難しい」という人も多いだろう。
せめて地震対策として、家具の転倒防止グッズで家具を固定しておくべきだろう。しかし震度7レベルになると、生半可な転倒防止グッズではまったくの無意味という意見もあるので注意してほしい。
がんばれ!スパコンK
日本が誇るスパコン京は、スパコン世界性能ランキングで1位だったものの、その座を他のスパコンに明け渡した過去を持つ。
しかし2015年のGraph500(スパコン解析性能の世界ランキング)では、7月・11月と二期連続で再び1位に返り咲いた。
「1位じゃなきゃだめなんです!!」
スパコン京の「防災・減災に資する地球変動予測」の成果によって、これから起きるであろう首都直下地震や南海トラフ巨大地震の被害が最小限に食い止められることを期待したい!