2018年4月9日に、めったに地震の起こらない島根県でM6.1の地震が発生した。
立て続けに4月14日4:00には、北海道東部でM5.4の大きめの地震が発生し、同日に愛知県西部ではM3.5、M4.6と中規模地震が頻発した。
なんだかちょっと地震が増えてる気がしないでもない。
実は1138年前の880年にも島根では大きな地震が発生しており、そのあとに南海トラフ地震が発生したことがあった。
その時の状況が現在と酷似しているというのだ!!
9世紀に発生した地震の時期と地域がこちら。
- 863年 越中・越後地震
- 864年 貞観大噴火 富士山の噴火する
- 868年 播磨国地震 M7.0程度
- 869年 貞観地震(じょうがんじしん)三陸沖の巨大地震 M8.3
- 869年 地震風水の災 肥後国(熊本)
- 878年 相模・武蔵地震 M7.4(首都直下型地震)
- 880年 出雲地震(島根) M7.0
- 887年 仁和地震(南海トラフ巨大地震) M8.0~8.5
次に近年の日本を襲った大きな地震がこちら
- 2007年 中越沖地震
- 2011年 東日本大震災
- 2016年 熊本地震
- 2018年 島根地震
その関係を表にすると下記になる。
9世紀 | 21世紀 |
863年 越中・越後地震 | 2007年 中越沖地震 |
869年 貞観地震 | 2011年 東日本大震災 |
869年 地震風水の災 | 2016年 熊本地震 |
880年 出雲地震 | 2018年 島根地震 |
887年 仁和地震(南海トラフ巨大地震) | ?? |
こうって並べてみると、なんとなく関係がありそうな気がしないでもない。
約1100年も昔の地震と21世紀の地震が奇妙にリンクして見えてくるではないか。
「うへぇ!!こいつはやっべーぞ!!逃げなきゃ!!!」
気の早い人は必要最低限のものだけ持って海外移住を計画するかもしれないけど、少しだけ冷静に考えてみてほしい。
恐らくこれらの2つの地震群には何の関係もないだろう。
確かに南海トラフ巨大地震はいつ起こるかわからないし、常に備えておく必要はある。
だけど1100年前と現在の地震の状況が少しだけ似ているからといって、すぐに南海トラフ大震災と結びつけるのは間違っている。
島根で大きな地震が発生した後に南海トラフ地震が起きたケースは1件だけ
島根はもともととても地震が少ない場所で、M6.0以上の地震はめったに起こらない。
そんな中で記録に残っている島根県が震源の地震はこちら。
- 880年 出雲地震 M7.0
- 1026年 島根県西部 万寿地震 M7.5
- 1778年 島根県西部 M6.5
- 1872年 浜田地震 M7.1
- 1997年 島根県境付近 M6.6
- 2018年4月 島根地震 M6.1
次に南海トラフ地震の歴史を遡ってみよう。
- 684年 白鳳地震
- 887年 仁和地震
- 1096年 永長東海地震
- 1099年 康和南海地震
- 1361年 正平南海地震
- 1498年:明応地震
- 1605年:慶長地震(M7.9)
- 1707年:宝永地震(M8.6)
- 1854年:安政地震(M8.4)
- 1944年:東南海地震(M7.9)
- 1946年:南海地震(M8.0)
この地震の年表を確認するとわかることが2つある。
ひとつめは、島根で発生した大きい地震が南海トラフ地震に結び付くわけではないということ。
島根地震で発生した地震のうち、発生から10年以内に南海トラフ地震が発生したケースは880年の出雲地震だけ。たったの1件しかないのだ。
これが複数件あれば、何らかの関連性も疑えるかもしれないけれど、たったの1件だけじゃあ「ただの偶然」ですんでしまうだろう。
もうひとつは、地震は周期的に起きていないということ。
今現在、地震発生メカニズムを考えるにあたって「プレートテクトニクス理論」が主流となっている。
プレートテクトニクスによる地震発生メカニズムを超簡単に説明すると、「地震はプレートが動くことが原因で発生する」という考え方のこと。
地球は超巨大な岩盤であるプレートが複数枚組み合わさって出来ていて、日本もプレートの上に存在している。このプレートが毎年数センチ動き、それがプレートとプレートの境目で衝突することで、エネルギーが蓄積される。それが限界を超えて弾けることで大地に亀裂が入ったり、プレートが揺さぶられることで大地震が発生する。
「プレートが動く距離はある程度一定であるから、蓄積されるエネルギーも一定であろう。だからこそ、地震も周期的に発生する。地震の歴史を見ても、同じ地域に同間隔で巨大地震は発生しているじゃないか!!」
という風にみんな考えているわけだ。
だけど先ほど紹介した島根地震や南海トラフ地震の歴史を見て欲しい。
周期性なんてまったくないがな!!
優しいまなざしと大きな懐で数十年レベルの誤差を受け入れられるのなら、地震は周期的に発生していると言えなくもないけど…。
確かに地震はプレートの境目に集中しているし、プレートテクトニクスの考え方はある程度正しい。しかし地震発生のメカニズムはいまだ正確には判明していないし、最新の地震学をもってしても地震予測は不可能であるというのが現実だ。
実際、地震大国日本も何十年も前から国民の血税を使って地震研究を推進してきたけれど、事前に地震を予測できたことはたったの一度もない。
地震発生に周期性はないし、たとえどれだけ地震が一定のパターンに沿って発生しているように見えたとしても、それがそのまま未来の予測に当てはまるわけではないだろう。
オススメ記事:「間違った学説に頼るな!」地震学者ロバート・ゲラー教授が語る地震予測が不可能な理由について。
南海トラフ巨大地震がいつ発生するのかは誰にもわからない
というわけで、現在の地震発生のパターンがどれほど9世紀の状況と似ていたからといって、これから南海トラフ巨大地震が発生するわけではない。
もちろんこれは地震が発生しないというわけではない。
南海トラフ巨大地震がいつ発生するのかは誰にもわからないということだ。
もしホントに歴史が繰り返すとしたら、864年に貞観大噴火が起きているし、現在の日本でも富士山が大噴火するかもしれない。環太平洋造山帯の火山群も活性化して噴火を繰り返しているし。
とはいえ、富士山が噴火するかどうかも、まったく誰にもわからないだろう。
「地震が起きる?バカバカしい!不安を煽ってんじゃあねーぜ?」
と完全否定して、地震が起きることから目を背けたり、地震への備えを疎かにしてはいけない。
「昔の地震発生パターンと完全に一致しているじゃないか!!怖いよ~!!」
と過度に不安になってもいけない。
いつもの通り生活し、もしもの時のための地震への備えを万全にしておくのが一番大切なのではないだろうか。