今までの睡眠学の常識では「休日の寝だめでは日々の睡眠不足を補うことはできない」とされていた。
毎日4~5時間しか眠れずに睡眠時間が足りていない状態のまま休日になったとして、「明日は休みだ~!」と昼過ぎまでグッスリ眠っても、日々の睡眠不足を解消することはできない。それどころか、悪影響まであるとすら言われてきた。
しかしながら、スウェーデンはストックホルム大学の研究チームが行った大規模な研究調査によると、週末に朝寝坊して”寝だめ”をしていたグループの死亡率が低下したという。
その研究結果とともに、正しい寝だめの方法も紹介したい。
休日の寝だめは効果がないといわれるたったひとつの理由とは?
なぜ、今まで休日に朝寝坊して長時間眠ることが良しとされてこなかったのか?
その理由はひとつ。
体内時計のリズムが崩れるからだ。
休日前に夜更かしして、しかもたっぷりと12時間寝てしまい、起きたらもうとっぷりと日は暮れて夕方…。しかも明日は朝から仕事。
これじゃあ、体内リズムはボロボロもボロボロ。起きてから12時間もたたないうちに、また寝なくてはいけなくなる。
これはまあ、極端な例にしても、休日だからといっていつもより眠る時間が長くなると体内時計が乱れて睡眠の質が低下する。
週末に乱れた体内時計は、次の一週間の生活リズムを乱してしまい、結果的に頭がぼ~っとしたり、集中力が低下したりといった悪影響が表れてしまう。
これが、休日に寝だめをしてはいけないとされるたった一つの根拠だ。
誰もが平日にズタボロに身体を酷使してしまい、休日に泥のように眠った経験があるだろう。
起きた後の圧倒的なスッキリ感、そして何とも言えない後悔…。
確かに休日の寝だめはあまりお勧めできないなぁ~と思ってしまう。
実際、寝だめをすることは健康に取って悪影響を及ぼすという研究もある。
寝だめは危険とする研究結果が!
コロラド大学睡眠研究所のケネス・ライト所長は、「平日に続いた睡眠不足を週末の寝だめで補おうとしても、平日になってまた睡眠不足が続けば、体内で血糖値をうまくコントロールできない状態は改善されない」と解説し、「再び睡眠不足の生活に戻れば、長期的な健康に悪影響を及ぼしかねない」と指摘する。
(中略)
今回の研究では、週末に寝だめできるのは男性に限られるらしいことも分かった。男性は金曜と土曜の夜に長時間の睡眠を確保できていた一方、女性が長時間眠れたのは金曜の夜だけだった。
ライト氏は、女性には男性とは違った睡眠不足の影響があるのかどうかについて、さらに研究する必要があると指摘している。
この研究のポイントがこちら。
- 睡眠不足が続くと食べる量が増える。週末にグッスリと寝ても、平日に睡眠不足だと結果は同じ
- 男性の方が睡眠不足の影響で太りやすい
- 週末に寝だめするとインスリン感度が高まり、糖尿病リスクも高まる恐れがある
- 寝だめは女性よりも男性の方が得意
週末に寝だめしたとしても、平日に睡眠不足が続いている無意味。
食事の量が増えて太りやすくなるし、体内のホルモンバランスが崩れてしまう。
だけど!!
ボロ雑巾のように世間に酷使され、ズタズタに引き裂かれた心身にとって、底なし沼の奥の奥に潜んだ冷たい泥のように昏睡すること以外に選択肢があるというのだろうか?
いやない。
私たちは自分の体内時計が10時間ずれようが、24時間ずれようが、それで寿命が短くなろうが眠るしかないのだ。
…でも安心してほしい。今まであまりお勧めされていなかった”寝だめ”だけど「したほうが健康に良い」とされる研究結果も発表されたのだ!!
寝だめで長寿になる研究の内容とは?
スウェーデンにあるストックホルム大学の研究チームが「週末の睡眠は死亡率を低下させる」という研究結果を発表した。
43,880人を対象にして、13年間も追跡調査した結果だ。
対象人数や期間をみても、かなり信頼のおける研究発表といえるだろう。
その研究結果を簡潔に紹介しよう。
- 常に睡眠時間が5時間以下だと7時間以上眠っている人に比べて死亡率が高くなる。
- 毎日睡眠時間が8時間以上の人も死亡率が高くなる傾向にある。
- 平日に睡眠時間が短くても、週末に朝寝坊している人の死亡率は7時間睡眠の人とあまり変わらない。
- 65歳以上になると睡眠時間と死亡率に差はなくなる。
この研究結果から、最も健康長寿になるための睡眠習慣が2つ導き出される。
長生きするための睡眠のコツ
①毎日6~7時間くらい眠る(5時間以下または8時間以上の睡眠時間は死亡率が上がる)
②毎日5時間以下の睡眠時間が続くのなら、休日にしっかり寝る。
たとえ毎日よく眠れない日が続いたとしても、一週間に1日でもしっかりと眠ることができれば、日々の睡眠不足がカバーできるってわけだ。
では次に、より効果的な寝だめの方法を、体内の時計遺伝子の観点から考えてみよう。
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時計遺伝子的な正しい寝だめの方法
”朝起きて朝日を浴びると体内時計がリセットされる”
そんな話はだれもが聞いたことがあるだろう。
これはある意味で正しい。
脳内の視神経が交差している場所「視交叉上核」には全体を司る時計遺伝子があり、太陽の光を浴びることで1日のリズムをリセットしている。
この時計遺伝子が刻む体内リズムが崩れると、体調不良やうつ病・躁病の原因になるともいわれている。
しかしながら、もうひとつ、私たちの体内時計に影響を与える要素がある。
最新の研究では、脳以外の臓器や筋肉にも抹消時計遺伝子というものが備わっていて、日々の活動リズムをコントロールしていることがわかっている。
この抹消時計遺伝子の方は日光を浴びてもリセットされない。
では何が大切なのかというと、食事のタイミングだ。
マウスの実験でも給餌刺激が抹消時計遺伝子に強い影響を及ぼすことがわかっているし、これは人間でも同じことがいえる。
このことから、私たちの体内時計が日々正確にリズムを刻むには「2つの生活習慣」が必要になってくることがわかる。
体内時計のリズムを整える方法
①毎日同じ時間に起きて日の光を浴びる
②毎日同じ時間に朝食を食べる
これを踏まえたうえで、正しい寝だめの方法について考えてみよう。
確かにスウェーデンの大学が行った研究では、休日に長時間眠ることが長寿に繋がるという事実が示唆されたわけだけれど、休日にず~っと寝ていたら体内時計が狂うのも確か。
そこで、体内時計のリズムを保ったまま休日に長く眠る方法を紹介しよう。
その方法はいたってシンプル。
つまり早く寝ること。
時計遺伝子的に見た正しい寝だめの方法とは「早寝遅起き」ということになるだろう。
プレミアムフライデーで日本国民の平均寿命は劇的に短くなる
最近ではプレミアムフライデーなどという言葉が作られ、お偉方が普及させようとしているようだ。
金曜日の週末は飲みに行ったり、遊びに行ったりして楽しみましょう!
お金を使って経済を回しましょう!!
断じて”否”である!!
毎日毎日、労働力を搾取され、馬車馬のように働かされ、酷使させられた労働者が行うべきはただ一つ。
明日が休みとくれば、さっさと家に帰って早寝遅起きだ。
そうすれば、たとえ毎日睡眠不足気味だったとしても、いつまでも健康に長生きできるだろう。
プレミアムフライデーだからといって遊び歩いていては、体内時計のリズムが崩れ、結果的に翌週の仕事効率も下がるばかりか、寿命が短くなる恐れすらある。
「金曜日の夜は早く帰ってしっかり眠りましょう!」
これこそが今の日本に必要なスローガン。
金曜日に早寝遅起きをすれば、土曜日、日曜日と充実した休日を過ごせるはずだ。
長生きしたいのなら、人生を充実させたいのなら、仕事で結果を残したいのなら、金曜日の夜の職場の飲み会には絶対に参加してはいけないのだ!!