東京直下型地震というのは本当に起きるのだろうか?
今、発生が危惧されているのは「首都圏直下型地震」だ。
ここでいう”首都圏”とは関東地方のすべて、さらに長野県も含まれるかなり幅広い範囲を指している。
例えば大きな首都圏直下型地震であった関東大震災は、東京の直下型地震ではない。その震源は駿河湾であった。
もし東京都に発生地域を限定した場合、その直下で地震が発生したケースは思いのほか少ない。
歴史を紐解いても、ときたま東京湾北部を震源として大きな地震が発生しているくらいであり、その規模もマグニチュード7レベルだ。
本当に東京直下型地震は発生するのだろうか?
東京直下地震と首都直下地震
今まで東京で大きな地震があった時を思い出して欲しい。
大きく揺れたのでびっくりして、すぐさまテレビを付けて震度や震源の速報を確認する。
その時、震源が東京都であったことがあっただろうか?
…あまり無いような気がする。
実は東京都が震源の地震というのは、思いのほか少ないのだ。
内閣府が定義する「首都直下地震」は下記になる。
- 地殻内(北米プレート又はフィリピン海プレート)の浅い地震
- フィリピン海プレートと北米プレートの境界の地震
- フィリピン海プレート内の地震
- フィリピン海プレートと太平洋プレートの境界の地震
- 太平洋プレート内の地震
- フィリピン海プレート及び北米プレートと太平洋プレートの境界の地震
では次に、有名な首都直下地震の震源を見てみよう。
1677年延宝房総沖地震は千葉県の東である房総沖が震源。
1703年元禄地震は房総半島の南方が震源。
1782年天明小田原地震は神奈川県西部が震源。
1923年関東大震災は神奈川県の南に位置する相模湾が震源。
これを見てもわかるように、東京都内を震源とする大きな地震はほとんど起きていない。
しかし、東京都内を震源とする地震は、たしかに過去に発生している。
いま危惧されている東京都内を震源とする地震
東京都内を震源とする規模の大きな地震は、その殆どが東京湾の北部を震源に発生している。
1855年:安政江戸地震 マグニチュード7(と思われる)
1894年:明治東京地震 マグニチュード7
これら地震が東京湾北部を震源としている大きな地震だ。直近では2015年12月26日に、東京湾北部でマグニチュード3程度の地震が1時間以内に5回連続発生している。この小さな地震の震源は、安政江戸地震や明治東京地震ほとんど同じ場所なのだ。
もうひとつ、東京で最も有名な断層に「立川断層」がある。
埼玉から立川近辺まで貫く断層であり、政府の地震調査研究推進本部が発表しているリスクは「地震の規模はM7.4程度」「地震発生確率は30年以内に、ほぼ0.5%~2%」とされている。
東京大地震研究所の最新の研究によると、この立川断層で大きな地震が起きたのは、直近のものでも1300年~1400年も前にさかのぼる必要がある。しかも立川断層の活動周期は3,000年とみられているため、あと1,000年以上は地震が起きる可能性が低い。立川断層の地震リスクは、地震調査研究本部の試算よりも遥かに低い可能性があるのだ。
というわけで、もしこれから東京直下型地震が起きるとしたら、もっとも可能性があるのが東京湾北部を震源とした地震だろう。
東京直下型地震が起きる可能性が低いからといって、実は何の気休めにもならない。
歴史を紐解くと、東京湾北部を震源に大きな直下地震が発生する可能性がある。それ以外の東京都の地域で規模の大きな直下型地震が発生する可能性は意外と少ないのではないだろうか。
しかし東京直下型地震が起きる可能性が低いからといって、実は何の気休めにもならない。それにはふたつの理由がある。
①地震はどこでも発生する
結局のところ、地震はどこでも発生する可能性がある。地震の可能性が低いと思われていた熊本で大地震があったように、どの地域でも地震の可能性はゼロではないのだ。
そしてそれは東京都にも言える。
②東京も震度7くらいは揺れる可能性がある
今現在、東京都民が危惧すべき地震は、相模湾を震源とした「東海地震」と、それをきっかけに連動して発生するだろうと思われる「南海トラフ巨大地」だ。
そしてもうひとつは、糸川-静岡構造線断層を震源とした地震。糸川-静岡構造線断層は長野県北部から山梨県南部にかけて走る活断層。この地域ではマグニチュード7.5程度の地震が発生するリスクが高いといわれている。
東海地震は東京都から南西、糸川-静岡構造線断層は東京都からかなり西に位置している。しかしこの地域に大地震が起きたとしたら、東京も震度6~7くらい揺れる可能性があるだろう。東京都内でもかなりの被害が想定される。
もし東京直下地震が起きるとしたら、東京湾北部が最も可能性が高い。とはいえいま備えるべきは、東京湾北部地震よりも、これらの”首都直下地震”なのだ。
首都直下地震で生き残る方法
東京に住んでいるということであれば、直下型地震の被害にあう可能性は低い。しかし、だからといって巨大地震の被害にあわないというわけではない。関東大震災があったように、震度6~7レベルの地震が発生する可能性は大いにある。
その時に注意してほしいのは、東京に起こる大地震には前震があるという事だろう。
地震はスピードの速い揺れである”P波”と、スピードの遅いが大きく揺れる”S波”の2段階で襲ってくる。直下型地震は震源が近いため、P波とS波がほとんど同時に襲ってくる。(熊本地震はこのケースであった)
しかし、東海地震や糸川-静岡構造線断層震源の地震は、東京とかなり距離がある。つまり、P波とS波の到達にかなりの時間さがあるという事。(とはいえその誤差は1分もないだろうが)
東京都内で大きな地震に遭遇した過去があるなら思い出してみて欲しい。必ず前震があり、その後に本震が来ていなかっただろうか?
首都直下地震では「カタカタカタカタ…」と小刻みに揺れる前震から、大きく揺れる本震までわずかながらタイムラグがある。それはつまり、避難する時間があるということだ。
東京で首都直下地震が起きた場合に生き残る確率を上げるには、小さく揺れる前震で適切に避難することが大事だろう!