「夜にたくさん食べると太るよ!!」
…という話は誰もが聞いたことがあるはずだ。
でも、なぜ夜にたくさん食べると太るのだろう?
その”正確な理由”を知っている人は少ないかもしれない。
夜は食べた後にもう寝るだけだし、昼に比べて活動量・運動量が低下している。
消費カロリーも少なくなるので、たくさん食べると脂肪として蓄えられてしまう。
一般的にはそう考えられているかもしれない。
確かにそれも理由のひとつもしれないけれど、実はそれよりも重要なのが時計遺伝子のひとつBmal1(ビーマルワン)だ。
夜にたくさん食べると太りやすい本当の理由、体内時計システムや時計遺伝子について、そして体内時計を利用した太らない食生活を紹介したい!!
概日リズムと時計遺伝子Bmal1とは?
夜食べると太る理由には、私たちの体内時計を司る時計遺伝子が重要な役割を持っている。
なので、まずは体内時計のシステムについて簡単に説明したい。
私たち人間は自然と調和して生きていくための「体内時計」があり、1日24時間のサイクルに沿った体内活動が行われている。
これをサーカディアンリズム(概日リズム)と呼ぶ。
朝、自然と目が覚める。
昼時に活動が活性化する。
夜になると眠くなる…。
このような24時間に沿ったリズムは、体内の時計遺伝子が司っているとされていて、このサイクルは体内のあらゆる活動に影響している。
例えば食事の時間がが決まっているとしたら、そのちょっと前から消化器官は「これからメシがくるぞ~!」と準備万全にしておくし、夜になると自然と体温や血圧が下がり、眠るための準備を始める。
すべてはサーカディアンリズムと体内時計遺伝子の働きによるものだ。
ちなみに人間が持つサーカディアンリズムには大きな個人差があるが、平均すると24時間10分くらいらしい。
そんな時計遺伝子には、脳の中にあって身体全体の体内時計を司る「主時計遺伝子」と、各種内臓や脂肪細胞に存在する「抹消時計遺伝子」の2つがある。
主時計遺伝子と抹消時計遺伝子が、それぞれに影響を与え合い、バランスよく働くことで24時間の生体リズムを作り上げている。
ちなみに私たちが一般的に考えている「体内時計」ってのは、脳内の主時計遺伝子のことを差している。
「朝起きて日の光を浴びて体内時計をリセットしましょう」とか、「いつも同じ時間に起きてリズムを整えましょう」とか。
そういったリズムの整え方は主時計遺伝子へのアプローチとなる。
今回の話の主役であるBmal1は、主時計遺伝子ではなく抹消時計遺伝子のひとつで、サーカディアンリズムを制御するたんぱく質の事。
胃や腸、すい臓、肝臓、筋肉細胞、脂肪細胞、あらゆる細胞にBmal1はあり、それぞれのサーカディアンリズムを整える役割を担っている。
特に脳、リンパ球、脂肪細胞には多くのBmal1があるとされている。
このBmal1は脂肪細胞内で脂肪酸・コレステロールの合成を活性化させるのと同時に、脂肪酸の分解を抑制する効果がある。
つまり、Bmal1が多いときに食事をすると脂肪として蓄積されやすいってこと。(Bmal1を除去したマウスは昼と夜の区別がつかなくなり、脂肪細胞が委縮して低体重になってしまうという)
このBmal1は時間帯によって増減する。
夜に食事をすると太るのは、夜に細胞内のBmal1が増えるので、脂肪が蓄えられやすい状態になっているからなのだ!!
Bmal1ダイエット!太らないための食事
Bmal1は時間帯によって増減する。
通常の体内時計を持っている人なら、だいたい21時くらいからBmal1が増え始め、2時くらいにピークを迎える。
なので、21時以降に食事をすると、栄養が脂肪として蓄えられやすく、がっつり太る。
逆に1日で最もBmal1が少なくなるのが、14時くらいの時間帯。
この時間帯に食事をすると、食べてもあまり太らないといえるだろう。
1日のトータル摂取カロリーが、例えば2000キロカロリーだったとしても、朝に多く食べるのか、夜に多く食べるのかで太るかどうかは変わってくる。
朝・昼にたくさん食べて、夜には少しだけにする。
これが体内時計的にダイエット効果のある食事のコツといえる。
また、高脂肪食を食べ続けるとBmail1が増えるので、脂肪分の高い高カロリーの食事はほどほどにしておいた方がいいだろう。
朝食を食べて抹消時計遺伝子をリセットしよう
「朝食を抜くことで健康になれる」という健康法がある。
これは前日の夜から翌日の昼まで何も食べない空腹期間を作ることで、長寿遺伝子と呼ばれるサーチュイン遺伝子を活性化させる健康法。
実際、サルを使った研究でもたらふく食事を食べさせるグループよりも、ある程度の空腹感を感じさせた方が健康で長生きという結果が出ている。
だけど、サーカディアンリズム的に考えるのなら朝食は絶対に食べた方がいい。
なぜなら、抹消時計遺伝子は食事によってリセットされるから。
脳にある主時計遺伝子は、太陽の光を浴びるといった目からの刺激でリセットされる。
だけど、各細胞にある抹消時計遺伝子の方は、光の影響をまったく受けず、食事のタイミングの影響を強く受ける。
朝起きて朝食をしっかりと食べることは、体内リズムを整えるためにとっても大切なのだ。
特に朝食で食べるのにオススメなのが、ご飯やパンなどの糖質。
食事による体内時計の調節には、特にインスリンの影響が強い。
だからインスリンの分泌が増える糖質を朝に食べれば、抹消時計遺伝子がしっかりと調節できる。
もしず~っと朝食を抜き続けたら、抹消時計遺伝子のリズムがむちゃくちゃになってしまうだろう。
そうなると代謝異常の原因になる。Bmal1の増減のタイミングも不規則になるし、太りやすくなったり、メタボリックシンドロームのリスクを上げてしまう。
それに朝食を抜くと、相対的に昼食や夕食の量が増えちゃう。
夜の方がBMAL1も多いので、より太りやすくなってしまうはずだ。
もし食事を制限するというアプローチで健康効果を得たいのなら、朝ではなく夜の食事を抜く方がオススメ。
夜の食事の方が抹消時計遺伝子に与える影響は少ないことが、実験でも確かめられている。
夜は活動量が低下するので食べ過ぎると太るし、夜に食べない方が体内時計の乱れが少なくなるので一石二鳥だ。
Bmal1ダイエットまとめ
では時計遺伝子Bmal1を利用したBmal1ダイエットの方法についてまとめてみよう。
Bmal1ダイエットの5つのコツ
- 朝昼晩の食事時間を規則正しくする
- 抹消時計遺伝子をリセットするためにも朝はしっかりと食べる。
- Bmal1が少ない昼もガッツリ食べる。
- 夜の21時以降は何も食べない。
- Bmal1が増える原因になるので、高脂質の食事はほどほどにする。
私たちのサーカディアンリズムは24時間ではなく、平均すると約24時間10分のサイクルとなっている。
人によっては25時間だったり、23時間だったりもするだろう。
サーカディアンリズムが長い人は、自分のリズムで生きていくと夜更かしになり、生活のリズムが狂っちゃう。
このサイクルは高齢になるほど短くなっていくので、サーカディアンリズムが長い人も老後にはほぼ体内時計は24時間になるという。
若ければ若いほど、好き勝手に寝て起きてを繰り返していると、1日1時間ずつ体内時計がズレていくことになる。
不規則な生活で体内時計が乱れると、全身の機能も乱れてくるだろう。
末梢時計遺伝子は体中の細胞に組み込まれ、自然との調和をはかっている。
Bmail1ダイエットを実践して規則正しいリズムの生活を送れば、しっかりと栄養を摂取しながらも健康的にダイエットできるのではないだろうか。
余談ではあるが、地球の1日は24時間だけど火星の1日は約25時間だという。
以前は人間の体内時計はだいたい25時間と考えられており、なんと人間の祖先は火星からやってきたためにサーカディアンリズムが25時間なんだ、なんてトンデモ説があった。
最新の研究では体内時計が平均25時間ではないことがわかっており、体内時計を理由に人間と火星を結び付けるのは無理みたいだ。