イギリスの科学誌ネイチャーに掲載された論文によると、アミノ酸の摂取を制限することでがんの治療効果がすっごくアップするという。
とくに注目されたのが「メチオニン」というアミノ酸の一種。
”メチオニンはがん細胞の増殖を助ける「一炭素代謝」と呼ばれるプロセスで重要な役割を果たす”のだとか。
今回は発表された論文の内容と共に、メチオニンが多く含まれた食品、メチオニンが少ない食品を紹介したい。
食事の内容を変えるだけでがん治療の効果が著しく上昇する
実験の結果、単独では大腸がんに全く効果がなかった低用量の化学療法が、メチオニン制限と組み合わせると「腫瘍増殖の著しい阻害」につながることが明らかになった。同様に、軟部肉腫のケースで放射線治療をメチオニン制限と組み合わせると腫瘍の増殖が抑制された。
「非常に基本的なレベルで、がん細胞を特定の栄養素の欠乏状態に陥らせる」と、ロカセール准教授は説明した。
研究チームは今回の研究の拡張として、健康な被験者6人にメチオニン制限食を摂取させる実験を実施した。その結果、人の代謝への作用がマウスで確認される作用と類似するとみられることを発見した。これは、食事が人体の特定の腫瘍に対して同様の効果を持つ可能性があることを示唆している。だが、確定的な結論を導き出すのは時期尚早だと、ロカセール准教授は注意を促した。
参照元:「がんを栄養不足に」 食事が治療の助けに、マウス実験で新たな手掛かり(AFP)
科学誌ネイチャーで「メチオニンが含まれた食事を食べないようにすると、がん治療の効果が高まる」という研究結果が発表された。
がん細胞を栄養不足の状態に持ち込めるのだとか。
論文の主執筆者米デューク大学医学部ジェイソン・ロカセールはこう語る。
非常に強力な効果がある。
有効に作用する薬剤で確認されるのと同じくらい強力な効果だ。
メチオニンというのは必須アミノ酸のひとつで、人間が生きていくうえでも、健康を維持するためにも、とっても大切な栄養素。
だけど大事な栄養素ってのは、体内で突然変異したがん細胞も同じみたいだ。
「確定的な結論を導き出すのは時期尚早」と研究者は語っている。
なので、確実にメチオニンの制限ががん細胞の抑制に効果的なのかはわからない。
「がんになりたくないから予防のためにメチオニンを食べないようにしよう!」
なんて考え方は、健康の面から言ってもオススメできない。
…だけど、すでにがんに侵されていて、がんの治療の効果を高めるためにであれば、試してみる価値があるのではないか。
では次に、できるなら避けておきたいメチオニンが豊富に含まれる食品と、メチオニンが含まれていない食品をまとめてみた。
メチオニンが豊富に含まれた食べ物
食品名 | 100gあたりの含有量 |
かつお節 | 2200mg |
脱脂粉乳 | 830mg |
高野豆腐 | 780mg |
クロマグロ(赤身) | 760mg |
ナチュラルチーズ | 700mg |
まさば(生) | 690mg |
ぶり(なま) | 670mg |
鳥のむね肉 | 640mg |
豚ロース(赤肉) | 620mg |
きな粉 | 550mg |
鶏もも肉 | 530mg |
くるまえび(養殖・生) | 530mg |
牛サーロイン | 520mg |
豚ロース | 510mg |
うなぎ | 470mg |
カシューナッツ | 420mg |
牛タン | 390mg |
鶏卵 | 390mg |
クルミ | 260mg |
納豆 | 260mg |
ピュアココア | 240mg |
そば粉 | 230mg |
マカロニ・スパゲッティ | 220mg |
小麦粉(強力粉・1等) | 200mg |
アーモンド | 180mg |
玄米 | 170mg |
白精米 | 150mg |
小麦粉(薄力粉・2等) | 150mg |
うどん(乾) | 130mg |
食パン | 130mg |
ビスケット | 120mg |
魚や肉の赤身、大豆や米に小麦。
わたしたちが普通に食べるものばかりだ。
まあ、タンパク質が豊富な食品は、つまりアミノ酸も豊富に含まれているわけで、アミノ酸の一種であるメチオニンが豊富なのも頷ける。
たとえば白米を玄米にしたり、うどんやパスタを蕎麦にするとか、そんな風に工夫すればメチオニンの摂取を少なくできるかもしれない。
メチオニンが少ない食べ物
食品名 | 100gあたりの含有量 |
りんご | 2.4mg |
もも | 3.3mg |
大根 | 4.3mg |
根深ネギ | 5.6mg |
トマト | 6.1mg |
にんじん | 7.5mg |
たまねぎ | 7.8mg |
キャベツ | 13mg |
バナナ | 14mg |
乳酸菌飲料 | 25mg |
じゃがいも | 26mg |
アボカド | 45mg |
ほうれん草(葉・ゆで) | 47mg |
おにぎり | 66mg |
焼きおにぎり | 67mg |
豚ロース(脂身) | 77mg |
牛乳 | 83mg |
うどん(生) | 88mg |
無糖ヨーグルト | 88mg |
木綿豆腐 | 92mg |
基本的に野菜や果物であれば、メチオニンを気にせずに食べれるみたいだ。
ジャガイモもメチオニンが少ないので、主食となる穀物をジャガイモにしてしまうのもいいかもしれない。
先ほど白精米が「メチオニンが豊富な食材」としてあったが、ここではおにぎりや焼きおにぎりが「メチオニンが少ない食材」としてある。
おそらく米を炊くことで水分がたくさん含まれ。100gでのメチオニン含有量が減ったのだろう。
なぜか焼きおにぎりの方がメチオニンがちょっと多くなるので、メチオニンを摂りたくないのなら普通のおにぎりを食べた方がいいみたいだ。
また、もしデザートを選ぶのであれば、ケーキやクッキーなどは薄力粉が使われているので、果物、乳酸菌飲料やヨーグルトなんかがいいだろう。
100gあたりのメチオニン含有量で100g以上を「メチオニンが多い食材」、100g以下を「メチオニンが少ない食品」として分類したけれど、この分類に科学的根拠はない。
あくまでも参考までのデータとしてみて欲しい。
ちなみにデータについてはこちらのサイトを参考にして作成した。
まとめ
もちろん、メチオニンが豊富な食べ物を食べたからといってがんになりやすいわけじゃない。
メチオニンを制限した食生活を送ったからといって、がんになりにくいわけでもない。
ただ、現在がんの治療中の場合、メチオニンを制限した方が結果が良好になるかもしれないってだけ。
メチオニンはアミノ酸の一種であり、脂肪の代謝にかかわっていたり、血中コレステロールを下げる働きや、活性酸素を取り除く作用もある。
「メチオニンをまったく摂取しない食生活」もまた不健康であることを理解しなければならないだろう。