暴力や暴言は、脳への深刻なダメージになる。
これは様々な研究でも明らかになっている事実だ。虐待を受けて育ったこどもは脳が委縮したり、変形してしまい、精神的な問題が発生しやすくなる。
日本では「愛の鞭」という言葉があり、虐待による教育が肯定されてきた。そんな習慣を根絶してこどもへの体罰をなくすために、厚生労働省が「愛の鞭ゼロ作戦」を立案し、遂行しようと企てている。
ついつい子どもに手を上げてしまったり、怒鳴ったりしてしまう子育て中のお母さん。
そんな悩める方々のために、愛の鞭ゼロ作戦の概要と、それを遂行するための方法を紹介したい。
愛の鞭ゼロ作戦の内容とは!?
ではまず、愛の鞭ゼロ作戦の概要を紹介したい。
子育てをしていると、子どもが言うことを聞いてくれなくて、イライラすることがあります。
つい、叩いたり怒鳴ったりしたくなることもありますよね。
一見、体罰や暴言には効果があるように見えますが、恐怖により子どもをコントロールしているだけで、なぜ叱られたのか子どもが理解できていないこともあります。
最初は「愛の鞭」のつもりでも、いつの間にか「虐待」へとエスカレートしてしまうこともあります。
体罰や暴言による「愛の鞭」は捨ててしまいましょう。そして、子どもの気持ちに寄り添いながら、みんなで前向きに育んでいきましょう。
子どもが言うことを聞いてくれなくても、愛の鞭は振るわずに、気持ちに寄り添って前向きに育てましょう。
これが厚生労働省の立案した「愛の鞭ゼロ作戦」の大まかな作戦内容だ。
…言うは易く行うは難し、である。
愛の鞭ゼロ作戦を遂行するために、まずは親の愛の鞭が子どもに与える深刻な悪影響について知るべきだろう。
愛の鞭の脳への悪影響
子どもの頃に親から暴力を受けて育つと、前頭前野が委縮してしまい、なんと平均に比べて19.1%も小さくなってしまうという。
さらに親からの暴言に晒された場合、脳の声を知覚する部位である”知覚野”が変形してしまうというのだ。
前頭前野は社会的な行動をコントロールする大切な部位で、この部分が縮小してしまうと、反社会的な行動が多くなる。欲望を律することができず、努力が続かず、攻撃的で思いやりの欠如した大人になってしまうだろう。
自分の子どもこんな大人になったら、当然、親である自分との関係も最悪なものになる。虐待を受けて育った子どもが一生親を恨み続けるのはよくある話だ。
「自分は子どもに一生恨まれてもいい。老後の世話なんかしてもらいたくない。わがままで自分勝手な大人になって欲しい!!」
ということであれば、愛の鞭を多用して子育てするのは間違いではない。でも、思いやりがあって常識のある大人になって欲しいのなら子育てに体罰や暴言は一切必要ないだろう。そこに”例外”は存在しない。
どうすれば愛の鞭を止められるのか?
そもそも、なぜ虐待は繰り返されるのか?
それは子育てをする親がイライラやストレスを感じているから。
子どもが言うことを聞かずにギャーギャーとわめいていても、心に余裕があってストレスを感じていなければ、暴力や暴言で解決しようとはしないだろう。
「暴力や暴言は脳を委縮させる。子どもへの愛の鞭は絶対ダメなので止めましょう」
それで納得して子どもへの暴言や暴力を止めたとしても、親が感じているイライラはなくならない。
親が自分の感じているストレスやイライラを我慢していたとしたら…いつかは爆発するだろう。それは取り返しのつかない事件に発展するかもしれない。
それを予防し、安全に、健康的に愛の鞭を止めるにはどうすればいいのか?
愛の鞭ゼロ作戦でオススメされている作戦行動を2つ紹介したい。
①爆発寸前のイライラをクールダウン
言うことを聞かない子どもを前に、誰だってイライラするもの。疲れていたり、不愉快なことがあったりすると、さらにイライラもパワーアップしてしまう。そんなイライラが爆発して子どもに手を上げる前に、自分なりのクールダウン方法を見つけておくのが大切。
- 激しくてテンポの速い音楽を聴く。
- 窓を開けて深呼吸する。
- 好きなバラエティ番組を観て笑う。
- 嫌な出来事をノートに書き殴る。
- コーヒーや紅茶を飲んで一息つく。
- 好きなアロマを嗅いでリラックス。
自分だけのイライラ解消法を見つければ、子どもに不条理なイライラをぶつけることもなくなるだろう。
②親自身がSOSを出そう
自宅で引きこもってず~っと子どもと一緒にいたら、イライラするし、ストレスだって溜まるのは当然。そんな時は自分一人で抱え込まずに、夫や親や友達に話を聞いてもらったり、手伝ってもらう。
近くに頼れる親族・知人がいない場合は、自治体やNPOなどの支援サービスを探して、利用を検討してみる。このような子育てしている親をサポートする”社会資源”は、自分が知らないだけでかなり充実している場合がある。
無料で相談に乗ってくれることも多いので、せっかく税金を払っているのだから使わなければ損!!
イライラが爆発する前に、自治体のホームページを見たりして、自分を助けてくれるサービスを探してみるのもいいのではないだろうか。
「叱る」と「怒る」の違いとは?
「愛の鞭はダメなのね。わかった、じゃあ怒らないように子育てしよう!」
そうやって自由奔放に、何をやっても許してしまっては、会社の資金をカジノにつぎ込んで何億もの損失をたたき出した某有名企業の御曹司のような、常識が欠如したバカ殿さまが出来上がるだけだ。
親は子どもをきちんと正しい道に教育しなければならない。
そのためには、しっかりと「叱る」ことと「怒る」ことの違いを認識する必要がある。
怒るとは、自分の感情を相手にぶつけること。感情の爆発を伴う一方的な命令であり、相手に強制と抑圧を感じさせるもの。
叱るとは、相手を育て、成長させるための指導。子どもに正しい事、間違っていることを理解させる行為であり、子どもへの愛と信頼、一人の人間として尊重する心構えが必要。
では、10回叱ってもわからない子どもにはどうすればいいか??
その場合でも、けっして怒ってはいけない。
どうすればいいかというと…11回叱るしかない。言い方を変えたり、やり方を変えたり、相手に寄り添って工夫しながら。
暴力や暴言でむりやりいうことをきかせたとしたら、それの行動の変化の根底には”恐怖”がある。
正しいことを自分で判断する道徳観や倫理観ではなく、親や権力者への恐怖が行動の動機になるような大人になるだろう。
親は自分のストレスを適切に管理しながら、子どもを理性的に叱り、社会性を身につけさせなければいけないのだ!!
…とはいっても、なんだか難しそうだ。
だから、超シンプルに”これだけやってればOK”ということを一行にまとめよう。
「子どもに愛の鞭を振るってはいけない」
これさえやっていれば、後は大丈夫。世の中なんだかんだで、なんとかなるもの。子どもがしっかりとした大人になると信頼して、楽しみながら子育てを頑張ろう!!
「愛の鞭も時には必要だ!!」という人は…
「言っても聞かない場合は暴力を使うしかないだろ!!」
「オレはそうやって育ってきたんだ!!」
「相手を思った暴力は躾だ!!」
という発想をする人は、こどもの頃に暴力を受けていた可能性がある。虐待は連鎖するからだ。
つまり…
虐待を容認するような人物は、そもそも脳が委縮している可能性がある。
まあ、脳をスキャンして調べたわけでもないし、実際にそうとは限らないけれど、虐待を容認するような人は「脳が委縮しているのだな…可哀想に…」と思ってあまり関わらない方がいいだろう。
私自身といえば親からの暴力はなかったものの、学校では先生は平気で生徒をぶん殴っていた時代に育っている。
あれはあれで、今となってはいい思い出なんだけど…基本的に物覚えは悪いし、いろんなことを忘れやすい。あの竹刀を持った体育教師のおかげで、脳が委縮しているのかもしれない。
愛の鞭は絶対にやっちゃダメだ!!
*厚生労働省が作成した「愛の鞭ゼロ作戦」のパンフレットはこちらです→子どもを健やかに育むために~愛の鞭ゼロ作戦~