①自己中心的でワガママ、自分さえよければ他人のことなんかどうでもいいと思っている人間
②正義感が強くて優しく、自分よりも他人を優先してしまう人間
どちらがネットでの誹謗中傷や炎上に参加しやすいだろうか?
答えは言うまでもなく、「正義感が強くて優しく、自分よりも他人を優先してしまう人間」だ。
なぜか?
その心理の奥底には、「利他的な本能」が隠されているかもしれない。
人間はルールを破った人間に罰を与えるとき、脳内に快感物質が放出される。
たとえ自分には何の得がなくても、損失や苦痛を伴ったとしても、ルールを破った人間を罰することを優先する人すらいる。
復讐のためにすべてを捨てて生きているような非情で冷徹な映画の主人公も、その根本は利他的な本能に突き動かされている。
なぜ他者を罰することに対して、脳は快感物質を放出し、その行動を促すのか?
それは恐らく、社会の安定を保つためだろう。
例えば法律も警察もない、人口100人程度の原始的な村社会があったとしよう。
そこでは「狩で得た獲物はみんなで分け合う」というルールがあった。
ルールを破って獲物を独り占めした人は、他の村人から激しい罰を受けるはずだ。
そしてその罰を恐れるからこそ、社会に厳格な規範が生まれる。
ルールを破った人間に対して、たとえ自分が損を被ったとしてもその人を罰するのは、社会の規範を守るため。
そう考えると、罰を与える行為は利他的であるといえる。
脳は食欲、睡眠欲、性欲など、人間の生存と繁栄に大切な行為に対して強い快感を与えるよう出来ている。
栄養豊富なものは美味しいと感じるし、腐ったものや毒を含んだものは不味く感じる。
人間は脳が与える快感と不快感に支配されている。
罰に伴う快感もまた、人間の生存と繁栄に重要な役割をしているということになるだろう。
他者を罰する行為の根本には、正義とか道徳とか常識とか、そんな高貴な人間心理や複雑な動機などない。
飲食や排泄や性欲と同じレベルの、原始的欲求に突き動かされた結果というわけだ。
では、話をネット上の誹謗中傷やSNSの炎上に戻そう。
ネット上の悪口・批判に参加してしまうのは、とても原始的な本能に従った結果ということになる。
参加者は他罰行為に強い快感を覚え、それがやめられなくなってしまう人もいるかもしれない。
しかしおそらく、ほとんどの人たちはそんな炎上に参加したり、誹謗中傷を書き込んだ経験などないだろう。
なぜならば、わたしたちは進化の過程で脳の前頭葉を発達させ、感情の制御や行動の抑制などができるようになっているからだ。
簡単に言えば、本能にあらがう理性。
他者を罰することで得られる快感は、脳内の線条体という部位が司っている。
対して、理性を司るのが前頭葉だ。
線条体と前頭葉のガチンコバトルで線条体が勝利した場合、人は本能の赴くままに行動し、結果として炎上騒動に参加、強い快感を得ることとなる。
まとめると、ネットで他人を批判したり悪口を書き込んだりする人とは、「利他的で自制心が低い人」ということになる。
誹謗中傷そのものが利他的な行為ってんだからたちが悪い。
自分が悪いことをしているとは感じないし、強い快感を得られるんだからそりゃあ楽しいに決まっているだろう。
SNSで炎上が発生する根本的な原因が「美味しいラーメン屋に行列ができる原因」と一緒なのだから、世の中から炎上騒動を消すのは不可能に近いのかもしれない。
最後に、脳の機能だけに絞って炎上騒動に参加しやすい人の特徴をまとめよう。
①男性
女性と比べて男性の方が前頭前野が小さい傾向にある。バカなことをする可能性は男の方が高い。
②高齢者
加齢により脳の機能が低下し、前頭葉の機能も低下する。
③出産中、子育て中の女性
出産中、子育て中の女性はオキシトシンが大量に分泌される。オキシトシンは攻撃性を増したり、社会秩序を守る方向に働く。
理性的で常識的な大人なら、他者に罰を与える快楽を我慢することができる。
炎上や誹謗中傷に参加するような人間は、3時のおやつを我慢できない幼児レベルの理性しか持ち合わせていない、とも言えるだろう。
しかしながら、人間の本能に根差した炎上や誹謗中傷は、混沌としたネット世界にある種の秩序をもたらしている…のかもしれませんね。