ある日、ちょっと熱っぽかったので体温を測ると、35.9度だった。
「…微熱だな」
体温の平熱が35.4度の私にとって、平均よりも0.5度高い35.9度は微熱になっちゃう。
これくらいの微熱の時に眠ったり栄養をとったりしてしっかり対処できれば、本格的な風邪をひくこともない。
一時期体温を上げる”温活”なんて言葉はもてはやされたように、「体温が高い=免疫力が高く健康」というイメージがある。
だけど本当にそうなのだろうか?
私は平熱が35.4度でもすごく健康だし、あんまり風邪もひかない。
冷え性でもないし、寒さにはむしろ強い。冬に暖房をあまり使わないので、家族に寒がられるくらいだ。
そこで体温と健康の関係について調べてみると、面白い記事を発見した。
専門家である医師の記事も、素人のブログでも、雑誌記事でも、ニュースサイトでも、「体温が高い方が健康!」という情報が溢れていた
だけど「低体温の方が長生きできる」という調査結果を紹介した記事もあったのだ。
だとしたら、平熱が35度台の人の方が長生きできる?
今回はそんな不思議な調査結果を紹介したい。
平熱が低い方が長生きできる4つの理由
「BMJ」というイギリスの医学雑誌は、毎年クリスマスにちょっと毛色の変わった研究論文を掲載します。2017年は「平熱の個人差:患者記録の縦断ビッグデータ解析」という論文が発表されました。
(中略)
病気の他に性別や年齢なども平熱と関係していましたが、これらを全部合わせても平熱の高さの違いの8.2%しか説明できませんでした。では、平熱が高いか低いかの違いと最も結びついていたものは何だったでしょうか。それは死亡率でした。つまり、平熱が高い人ほど死にやすい傾向があったのです。平熱が0.149度高いと1年間の死亡率が8.4%高くなっていました。
アメリカの外来患者約3万5000人を調査し、体温と病気の関係を徹底的に調査!!
外来患者であれば、平熱も病気歴などもわかるし、効率的だ。
で、それらのデータを調べてみると、体温が高い人と体温が低い人で「病気リスク」にそれほど違いがないことがわかった。
そんな中で最も違いが現れた項目が「死亡率」だったという。
そのくわしいメカニズムは不明。
ただ、大規模なデータを分析した結果、なぜか体温低い方が死亡率が低くなるという客観的な結果が示されたのだ。
なぜ、体温が低いと長生きできるのか?
その理由を考えてみよう。
①低体温だと長寿遺伝子が活性化する
一時期アンチエイジングの方法のひとつとして”長寿遺伝子を活性化させる方法”が脚光を浴びたことがある。
どうやら長寿遺伝子と呼ばれるサーチュイン遺伝子が活発だと、老化スピードが遅くなるとか。
活発化させる方法は、ズバリ「カロリー摂取を制限する」ってこと。
動物実験では、カロリーを制限したグループの方が制限なく食べさせるグループよりも遥かに長生きするのがわかっている。
高い体温を維持するには、それなりのカロリー摂取が必要になる。
食事量と体温は密接な関係があるのだ。
体温が低い→食事量が少ない→カロリー制限している人は長寿
体温が低いひとは、食事量が少ないから長い気になっているのかもしれない。
②低体温だと活性酸素が少なくなる
普段から体温が高い人は、体内での代謝も高く、免疫力も高いが、そのぶん活性酸素がたくさん作られている可能性がある。
体内で熱を作るのは細胞内のミトコンドリアという器官。このミトコンドリアが酸素から熱(エネルギー)を作り出すときに、同時に活性酸素も作られる。
太古の生物は細胞にミトコンドリアを取り込むことで「酸素を吸ってエネルギーを獲得する」という驚くべき機能を得た。それが生物の爆発的な進化へのきっかけになったわけだけど、それは同時に”危険な毒”を飲み込んだってことなのかもしれない。
なぜなら活性酸素は細胞にダメージを与え、老化を促進させてしまうからだ。
ともあれ、低体温の人は活性酸素の生成量が少ないため、死亡率が下がっているのかもしれない。
③低体温だとビタミンCが保持される
健康に良い栄養といえば真っ先に思い浮かぶのが「ビタミンC」だ。
ビタミンCは風邪予防や美肌に良いというイメージがあるけれど、寿命にも大きな影響を与えている。
マウスの実験ではビタミンCの摂取量を減らすと、寿命が4分の1になってしまったとか。
ビタミンCはアンチエイジングに効果的な最強の栄養素のひとつなのだ。
そんなビタミンCの唯一の弱点は「水溶性ビタミン」であるということ。
水に溶ける性質があるので、いっぺんにたくさん摂取しても汗や尿としてすぐ体外に排出されてしまう。
そう、汗にはビタミンCが含まれているのだ。
体温が高い→汗をかきやすい→ビタミンC垂れ流し→体内でビタミンCが不足→老化促進
もちろん平熱が高いからといって全員が汗をかきやすいわけではないけれど、そんな”傾向”はたしかにあるだろう。
(ビタミンCは老化を促進する活性酸素を除去する働きもあるよ!)
④平熱が低いと常に冬眠状態である
アラスカに生息するアメリカクロクマの冬眠中の平均体温は33度で、夏季の活動時と比べわずか5~6度低い程度にも関わらず、代謝を通常の4分の1にまで落とすことができるという。
参照元:冬眠中のクマの驚くべき体内メカニズム(ナショナルジオグラフィック)
冬眠中のクマは体温が低く、しかも代謝も4分の1になる!!!
冬眠中は老化しない…とまではいわないけど、何も食べずにジッとしている冬眠中は細胞分裂のスピードも下がるだろうし、ほとんど老化しないのではないだろうか。
まさにコールドスリープ状態。
コールドスリープ (和製英語: cold sleep) とは、宇宙船での惑星間移動などにおいて、人体を低温状態に保ち、目的地に着くまでの時間経過による搭乗員の老化を防ぐ装置
参照元:コールドスリープ(Wikipedia)
平熱が低い人は、常にちょっとコールドスリープ状態にあり、それが長生きできる秘訣なのかもしれない。
低体温は健康なのか?まとめ
- 長寿遺伝子が活性化する
- 活性酸素が少なくなる
- ビタミンCが保持される
- 代謝が下がりコールドスリープ状態になる
以上が低体温が長生きできる理由としてパッと思いつく要因。
もちろん科学的根拠は特にないので注意が必要だ。
とはいえ、「低体温だから健康」というわけではないから注意が必要だ。
今の時点でわかっていることといえば「低体温の人はなぜか死亡率が低くなる」ってことだけ。
ただひとつ確かに言えるのは、低体温だからといって体温を上げようと無理しなくていいってこと。
世の中には「体温が高い=健康」という説がはびこっているけれど、低体温にもそれなりにメリットがありそうだし、それほど気にしなくていいのではないだろうか。
おまけ:長生きできる記事まとめ
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