なまずが暴れると地震が起きる。そんな民間伝承を聞いたことがあるだろう。
…こんな俗説が広まったのは江戸自体頃だという、
安政2年(1855年)の安政江戸地震では、なまずが暴れるのをみて「なまずが暴れると地震が来るって聞いたことあるな~、いちおう逃げておこうかな」と家財道具一式をもって避難し、事なきを得た人もいたという。
民間伝承というものは、人間の培ってきた経験の集積だ。調べてみると科学的な根拠があり、確か効果的なものも多い。
製薬会社の新薬開発では、この民間伝承がヒントにして行う方法もあるらしい。
なまずと地震の関係。これも科学的な根拠があるのではないだろうか?
神奈川工科大学のなまず研究
この研究では、「なまずが暴れる」という行為を測定するために水槽に赤外線センサーを取り付けた。
なまずがそこを横切った回数を測定するというもので、これならなまずの行動を客観的に計測することが出来る。
比較のために同様の状況下で熱帯魚も測定した。
測定の期間は2003年1月~10月。
この期間の間に、地震は53回起こり、M6.0以上の規模を持つ地震も13回起こった。
果たして地震の前に、なまずに変化はあるのだろうか?
結果は変化ありだった。
なまずも熱帯魚も動きの変化があった場合には、52%の確率で地震が発生したのだ。
ナマズに限らず、地震の前には熱帯魚も活動が活発化することがわかった。
またこの研究では、ナマズを飼っていた神奈川県内に地域を限定したり、規模の大きな地震に限定すれば、その予測確率はさらに上昇するのではないかとしている。
神奈川県水産技術センターの研究
神奈川県水産技術センターでは昭和54年~昭和59年の6年間にわたって、なまずの異常行動と地震の関係についての研究を行った。
この6年間に横浜で震度1以上の地震が発生したのは162回。
結論として、この研究ではなまずの異常行動と地震の発生は殆ど相関関係が得られなかった。
なまずの異常行動で震度3以上の地震を的中させた回数→10回
なまずが異常行動を起こしていないのに震度3以上の地震が起きた回数→14回
なまずが異常行動を起こしたのに震度3以上の地震が起きなかった回数→140回
なまずの異常行動の後に実際に地震が起きた確率は、わずか約6%。
偶然で片づけて問題ないレベルであった。
なまずの異常行動が激しかったり、時間が長かったりした場合は、わずかに地震が起きる確率が上がったものの、全体としてはほとんど関係がないといっていい結果であった。
東京都水産試験場のなまず実験!
東京都水産試験場においてナマズと地震との関係に関する研究が1976年4月~1992年3月までの16年間という長期間にわたって行われた。
その結果、震度3以上の規模に限定して検証を行ったところ、なまずは確かに発生前に異常行動を起こした。
この実験では、なまずが地震前に予測を成功させた確率はおおよそ30%程度だったという。
なまずは地震を予測するのか?
なまずと地震との関係を調べる実験では、それぞれにかなり違った結果が得られた。
生物であるなまずの飼育環境や、個体の健康状況などなど、地震発生以外にもいろんなファクターが結果を左右する為であろう。
ともあれ、実験結果の全体的印象としては、なまずが暴れたら地震が起きそうな気がする。
では何故、なまずは地震を感知できるのだろうか?
なまずが地震を感知する科学的根拠のひとつに、なまずの持つ鋭敏な感覚器官がある。
なまずの皮膚下には「ロレンチー二器官」と呼ばれる、微弱な電流を感じる感覚器官が分布しているのだ。
地震発生の前には地下の地盤が破壊され、その際に電磁波が空中に放出されるといわれている。
ひょっとしたら、なまずのロレンチー二機関が、その微弱な電磁波を感知しているのかもしれない。
地震予知のために、家でなまずを飼ってみるのもいいだろう。相場は一匹数千円ほどだ。
なまずって意外とかわいい顔してるし、飼ってみるとハマるかもしれないね。