世界で最も古い歴史を持つ日本の皇族は、神の血筋を持っているといわれている。
今回は神様がどう生まれて、誰の子どもが天皇になったのか、そこらへんの話を簡単に話したい。
…と言いつつも、まず最初に結論を。
日本神話の主神で太陽の神さまである天照大御神(アマテラス)は誰もが知っているだろう。
そのアマテラスの孫が瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)という神様。
で、そのニニギノミコトのひ孫が、初代天皇である神武天皇となる。
神武天皇が即位したのが紀元前660年といわれているので、天皇家は2,600年続いているわけだ。
もちろん、天照大御神などの先祖を考えると、もっと長い歴史を持っている。
今回は神武天皇に続く日本の神話をめっちゃかいつまんで紹介したい。
そして混沌に、3人の神が生まれた…
まだ日本という国もなく、なんにもない世界。
その混沌とした世界が天と地とに分かれ、高天原に三人の神様(造化の三神)が生まれる。
- 天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)
- 高御産巣日神(たかみむすひのかみ)
- 神産巣日神(かみむすひのかみ)
この3人がすべての始まりだ。
高天原(たかあまはら):神々の住んでいる土地
その次に2人の神が生まれる。
- 宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)
- 天之常立神(あめのとこたちのかみ)
この最初に生まれた5人の神は、神の中でも特別なビックファイブ「別天津神」と呼ばれている。
なんとなく太陽の神アマテラスが最初に生まれたような気がするけど全然違う。
アマテラスが登場するのはもう少し後だ。
神セブンが登場!!
で、このビッグファイブの次には「神世七代」が登場する。
まさに”神セブン”だ。
1代目:国之常立神(くにのとこたちのかみ)
2代目:豊雲野神(とよぐもぬのかみ)
3代目:宇比地邇神(うひぢにのかみ)・須比智邇神(すひぢにのかみ)
4代目:角杙神(つぬぐいのかみ)・活杙神(いくぐいのかみ)
5代目:意富斗能地神(おおとのぢのかみ)・ 大斗乃弁神(おおとのべのかみ)
6代目:淤母陀琉神(おもだるのかみ) ・阿夜訶志古泥神(あやかしこねのかみ)
7代目:伊邪那岐神(いざなぎのかみ)・伊邪那美神(いざなみのかみ)
この神世七代の七代目に注目!
7代目に生まれたのが、あの有名なイザナギとイザナミ。
この男女の神が日本人のルーツとなるわけだ。
日本人のルーツ、イザナギとイザナミ
男神イザナギと女神イザナミは、まず最初に「国生み」を行い、日本国を生む。
最初に誕生した島は「オノゴロ島」と呼ばれており、それは今でいう淡路島だとか。
イザナギとイザナミはオノゴロ島に「天の御柱」を立て、その周りを回って最初の子どもを産む。
2人の最初の子どもが「蛭子」(ひるこ)という神。
しかし天の御柱の”回り方”を間違えてしまったためか、蛭子は不具の子として生まれ、すぐに捨てられてしまう。
その後、イザナギとイザナミは正しい”回り方”をしてたくさんの子を産むのだけど…。
最後に、ヒノカグツチという火の神を生んだイザナミは大やけどを負って死んでしまうのだ。
イザナギはイザナミの死を悲しみ、黄泉の国まで会いに行く。
イザナミは「もう帰ることができない」とイザナギを拒み姿をあらわさない。
けれどイザナギは無理やりイザナミを見てしまう。
するとイザナミは変わり果てた死者の姿になっていた。
びっくりしたイザナギはスタコラサッサと逃げ帰る。
自分のキモイ顔を見ないでと懇願したのに無理やりに見る。しかもそれを受け入れるどころか優しい言葉もかけずに逃げ出す。
…そんなイザナギの態度に、イザナミは当然のごとくブチ切れた!!!
イザナミは黄泉の軍団を引き連れてイザナギを追いかけていったのだ。
イザナギは命からがら地上に戻り、黄泉国と地上との境である黄泉比良坂(よもつひらさか)の扉を大岩でふさいだ。
イザナミ「てめえ!コノヤロー!てめえの国の人間を1日1000人ぶっ殺してやる!!」
黄泉平坂の扉をガンガン叩きながら、イザナミは脅した!
イザナギ「じゃあ私は母屋を建てて、1日に1,500人の子どもを産ませるもんね!!」
現世に帰ったイザナギは平然とこう言い放った!!(イザナミが可哀想だ)
そうして命からがら黄泉の国から帰ったイザナギは、穢れを払うために禊(みそぎ)を行う。
そのときに、イザナギの左目から太陽神「天照大御神」が生まれ、右目から月の神「月読命」が生まれ、鼻から荒ぶる神「須佐之男命」が生まれたのだ。
まったくの余談だが、イザナギとイザナミが生んだ「ヒルコ」をモチーフにした日本のホラー映画「ヒルコ妖怪ハンター」における竹中直人の怪演は私のトラウマになっている。
やっとこさ登場!天照大御神(アマテラス)と須佐之男命(スサノオ)の物語
ここでやっと、日本神話の主神であり、太陽の神であるアマテラスが登場した。
アマテラスの弟であるツクヨミとスサノオ。
ツクヨミは月のように影が薄くてあんまり活躍しないんだけど、問題は乱暴者のトラブルメーカーであるスサノオだ。
スサノオが高天原でめっちゃ暴れるものだから、姉であるアマテラスは根の国と呼ばれる闇の国にスサノオを追放しようとする。
「まあ、しょうがないか…」
最後に姉のアマテラスに別れを言おうと高天原を訪ねるスサノオ。
しかしアマテラスは「きゃぁぁぁぁぁ!!スサノオが攻めてきたわ~!!」と勘違いをしちゃう。
焦ったスサノオは身の潔白を証明するためにアマテラスと誓約(うけひ)を行い、邪神がないことを認めてもらう。
「疑いが晴れたぜ。よかったよかった!」
安心して調子に乗ったスサノオは、その暴れん坊気質をいかんなく発揮して、高天原を混乱させてしまう。
その傍若無人な行為に若干うつ気味になったアマテラスは、なんと主神のくせに「天の岩戸」にひきこもってしまう。
現在の日本では”ひきこもり”が問題になっているが、日本歴史上最初のひきこもりは、日本神話の主神であるアマテラスだったわけだ。
太陽の神様アマテラスがひきこもると、当然のことながら、世界が真っ暗になってしまった!
困った神々は一計を案じ、天の岩戸の前でどんちゃん騒ぎを開始する。
楽しそうな歌声や笑い声…。
「あら、なにやってるのかしら?楽しそう…」
アマテラスが天の岩戸からちょっとだけ外の様子を覗き込むと…
その瞬間!
力持ちの神タヂカラオが、天の岩戸を思いっきりこじ開けてしまった。
しょうがないので、アマテラスはひきこもりをやめて、世界には光が戻ったのでした。
で、ことの発端であるスサノオはブチ切れられ、根の国に追放されてしまう。
そうして、根の国にたどり着いたスサノオの大冒険が始まる。
あの有名なヤマタノオロチを退治する伝説も、この時代のスサノオの冒険での出来事だ。
まあ、スサノオの大冒険の話は置いておいて、次はアマテラスの孫であるニニギノミコトについて話そう。
根の国:根の国は闇の国とも常世の国呼ばれる、神々が住む高天原とは別の世界。一説には、現在の出雲地方に根の国があったのではないかと言われている。
天孫降臨!!ニニギノミコト登場
日本神話では世界は3つに分かれる。
神々の住む高天原。
闇の世界(冥界)である根の国。
そして、その中間に存在する芦原中国(あしはらなかつくに)だ。
高天原は天にあり、根の国は地下にあり、芦原中国はこの地上であるといわれている。
高天原のトップであるアマテラスは、その孫である邇邇藝命(ににぎのみこと)に「芦原中国を治めてくるのだッ!!」という命を与え、三種の神器を授けて芦原中国へと送り出す。
天孫(アマテラスの孫)がこの地上に降臨したのだ!!
三種の神器:八咫鏡(やたのかがみ)・八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)・天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)の神具3点セット。現在もなお天皇家に受け継がれていて、天皇ですら実物を見ることはできないとか。
ついに初代天皇が誕生する!!
ニニギノミコトは日本統一を目指し、各地の征服していくのだが…。
その旅の途中、ニニギノミコトは木花開耶姫(コノハナサクヤヒメ)と出会う。
コノハナサクヤに一目惚れしたニニギノミコトは、彼女との間に子どもをもうける。
魚釣りが得意な海幸彦(兄)と、狩猟が得意な山幸彦(弟)だ。
ある日、山幸彦は海幸彦から借りた釣り具をたずさえて魚釣りに行く。
「大きな魚が釣れるかな~♪…!?あれ、兄ちゃんから借りた釣り具が…ない!!?」
山幸彦は大切な釣り具を失くしてしまったのだ。
困っていると、なぜか海の神様があらわれて海底の神殿に招待されちゃう。(まるで浦島太郎!!)
そこで乙姫…ではなく海神の娘・豊玉姫(とよたまひめ)と出会い、ちゃっかり結婚してしまう。
そうして2人の間に生まれたのが鸕鶿草葺不合尊(うがやふきあえずのみこと)だ。
鸕鶿草葺不合尊はなんと、自分の実の叔母、豊玉姫の妹の玉依姫(たまよりひめ)と結婚する。
おそらく年上女房だったのだろう。
そうして豊玉姫は4人の子どもを産む。
長男、彦五瀬命。
次男、稲飯命。
三男、三毛入野命。
そして四男が火火出見尊(ひこほほでみのみこと)。
火火出見尊こそが、日本(芦原中国)を統一し、歴史上最初の天皇である神武天皇となったのだーーー!!
ちなみに火火出見尊が初代天皇に即位したのは紀元前660年頃なのだとか。ということは、天皇家は約2,680年続いているってわけだ。
そして天皇は現人神から人間へ…
…というわけで、神から天皇家までの繋がりをまとめてみよう。
混沌から別天津神が生まれる→神世七代の七代目イザナギとイザナミ(日本のアダムとイブ)→太陽神アマテラス→孫のニニギノミコトが日本に降臨→ひ孫の火火出見尊が日本統一して初代天皇になる
その後天皇家は日本を統治し続けるんだけど、貴族の世界になったり、武家の世界になったり、時の権力者に利用されたり、されなかったり、第二次世界大戦で総大将を務め全世界と戦ったりと、それはもう紆余曲折、激動の歴史を辿る。
ただ変わらないのは、日本の歴史は常に天皇家と共にあったってこと。
その血筋は2,000年以上絶えることなく、三種の神器も今に伝わっている。
そんな天皇家のターニングポイントが昭和天皇時代に起きた第二次世界大戦だ。
昭和天皇までは、天皇は実際に”神”であった。日本人にとって。
…が、第二次世界大戦を指揮した昭和天皇は、敗戦し、終戦後の詔勅で人間であることを宣言する。
てんのうにんげんせんげん【天皇人間宣言】
1946年1月1日に出された詔勅の通称で,この中で天皇の神格を否定した部分があるのでこの名がある。この詔勅では太平洋戦争敗北後の新日本建設の指針として1868年(明治1)の五ヵ条の誓文を掲げ,ついで天皇と国民の紐帯(ちゆうたい)は神話と伝統によって生じたものではなく,また天皇を現人神(あらひとがみ)としそれを根拠に日本民族の他民族に対する優越を説く観念に基づくものでもないとして,天皇の神格を否定した。
こうして天皇は日本のトップであることをやめ、政治とも距離を置き、”日本の象徴”という存在になっていったわけだ。
神の国高天原から日本に降り立った神は、何世代もかけて日本を統一し、長い歴史を築き上げた。
そしてついには植民地支配を広げる白人社会と真っ向から激突し、有色人種として唯一無二の激闘を見せ、そして原爆をぶっ放され、豪快に負けた。
その結果、天皇という存在が、やっと、神から人間になったわけだ。
何もない混沌の時代から21世紀の現代まで、天皇家の歴史を駆け足でまとめてみたけど、これだけでも「天皇家ってすげぇ!!」と思っちゃう。
天皇の血筋がここまで長く続いたのは、日本は島国であり、他国に完全に支配されたことがないということもあるのだろう。
ここまで長い伝統と歴史を持つ国は、世界広しと言えども日本だけなのではないだろうか。
世界最古の王国ランキング
8位:スウェーデン王国
設立:西暦970年 最初の王様:Eric the Victorious
7位:デンマーク王国
設立:西暦935年 最初の王様:Gorm the Old
6位:ノルウェー王国
設立:西暦885年 最初の王様:Harald Fairhair
5位:イギリス
設立:西暦871か西暦1066年 最初の王様:Alfred the Great か William the Conqueror
4位:モロッコ王国
設立:西暦788年 最初の王様:イドリース1世
3位:オマーン王国
設立:西暦751年 最初の王様: Al-Julanda bin Mas’ood
2位:カンボジア王国
設立:西暦68年 最初の王様:王女柳葉
1位:日本の皇室
設立:紀元前660年 最初の王様:神武天皇
神話とフィクション
世界中の民族や宗教に”神話”はあるけれど、そのどれもがある程度は”本当にあった出来事”をベースにしていると考えられている。
おそらく日本神話も「実際の起きた日本統一の物語」を、フィクションを交えつつも、神の物語として再構築したものなのだろう。
高天原も、芦原中国も、根の国も、日本に実際あった土地で、それぞれに統治者がいたはず。
そんな日本統一の物語を、文字を持たない当時の日本人たちが語り継ぐため、神話が生まれた。
どこまでがフィクションで、どこまでがノンフィクションなのかわからないけど、とにかく天皇家には長~い歴史があるのは確かなのではないだろうか!?