台湾にある地震予測研究所が熊本地震の発生を予測していた!と話題になっている。
そしてさらに、同研究所が「4月22日までに福岡県北九州市でM8.0クラスの地震が発生する」という予測を公開して、これまた話題になっている。
この予測を不安に思った市民による問い合わせがNHKに殺到し、NHK公式ブログで「地震予知は確立されていません」と否定するほどだった。
実は…地震予知は当たらないッ!(知ってた?)
日本にどれだけの地震予知専門家がいるかはわからないが、阪神淡路大震災も東日本大震災も新潟県中越沖地震も熊本地震も、それらの地震予知は何の役にも立たなかった。
なぜ地震予知は当たらないのか?
地震予知に否定的な東京大学教授の地震学者ロバート・ゲラー教授の論文から、地震予知が不可能な理由を紹介しよう。
地震予測は当たったためしがない!!
「『22日にすごい地震が起きる』『北九州にM8の地震が来る』のは本当ですか?」といった質問が増えています。
現代の科学では時間や場所を具体的に特定する地震予知は確立されていません。
日本はどの地域でも地震への備えが必要ですが、あやふやな情報にはくれぐれもご注意下さい参照元:NHK公式Twitter
台湾の地震予測研究所というブログが4月9日に「3日以内に南日本または台湾でマグニチュード6.3の地震が起きる」と予測していた。
それを見た市民が不安に思い、NHKに問い合わせが殺到。この様な発言をNHKが公式ツイッターですることは極めて異例だ。
「現代の科学では時間や場所を具体的に特定する地震予知は確立されていません」
確かに地震大国日本に生まれてこのかた「○○教授の地震予知のおかげで事前に避難できました」なんて話は聞いたことがない。
それを裏付けるのが政府のハザードマップだ。地震調査研究推進本部は日本全国の地震リスクを調べたハザードマップを公表している。
そのハザードマップでは、阪神淡路大震災が起きた地域の地震発生確率は0.02%~8%であった。
さらに熊本地震が起きた布田川断層はほぼ0%~0.9%であったという。
地震発生の確率が低いと思われていた場所で、大地震が発生しているのだ。
「ハザードマップではなくハズーレマップだ!」
「ハザードマップはむしろ害悪だ!!」
地震学者のゲラー教授は、地震調査研究推進本部の発表するハザードマップに辛辣な発言をしている。
ハザードマップで地震の確率が低いからといって、安心して耐震対策を怠ってしまうケースも考えられるからだ。
ロバート・ゲラー教授の論文内容
そんなゲラー教授であるが、実はその論文が(敵である?)地震調査研究推進本部のホームページで確認できる。
地震調査研究推進本部設立20周年特別企画で寄稿したものだ。
その内容をかいつまんで説明するとこうなる。
「地震予測に批判的な自分に論文を依頼してくれてありがとう。でも地震調査研究推進本部は組織としてホント腐ってるぜ!地震予測もまったくあてにならない!ハザードマップなんてむしろ害悪だ!だけど地震や地殻変動の計測データはまじ、役に立ってるよ!」
では、ゲラー教授の「地震予測は不可能」という根拠とは何なのだろうか?
過去、地震予知に成功したケースは…?
まずは簡単に、地震調査研究推進本部の歴史を。
1965年「地震予知研究計画」が始まる→1969年「地震予知計画」に(名称から”研究”という文言が消える)→1995年阪神淡路大震災を受けて「地震調査研究推進本部」に名称変更(名称から予知という文言が消える)
政府の地震予知研究は1965年からスタートし、実に40年以上の歴史があるが、地震予知に成功したケースはゼロ!!
1995年に地震調査研究推進本部と名称が変更され「政府は地震予知に白旗を上げた」と、そうゲラー教授は語る。
地震調査研究推進本部にはおおきくふたつの役割がある。「観測業務」と「予測業務」だ。地震や地殻変動の計測データはとても有益なものであるが、一方で地震予測の方は問題だらけ。
ゲラー教授が調べたところ1978年~2011年の間に死者10名以上を出した大地震は、東日本大震災も含めてほとんどが、震災の危険が少ないとされていた地域で発生したという。
その一方で1978年から大地震が起こると危惧されていた東海地方には、いまだ何も起こっていない…。
これが意味するものは、地震はどこでも起きる可能性がある、地震予知は信用にたるものではない、ハザードマップを参考にしてはいけないということだろう。
比較的安全と言われていた熊本で大地震が起きたことで、ゲラー教授の発言は再び注目を集めている。
地震予測が不可能である3つの根拠
ゲラー教授がアメリカの研究者ともに、世界中のハザードマップと発生した地震を検証したところ、今までの地震発生の常識を覆すデータが現れた。
①プレートとプレートの圧力エネルギーが限界に達して地震が発生する。
②地震は同じ地域に繰り返し発生する。
このふたつの大前提ともいわれる”仮説”は、実際のデータを当てはめるとまったくあてにならないことがわかった。
結局のところ、地震についてはまだまだ謎が多いということなのだ。
まとめるとこうなる。
①地震発生の正確なメカニズムは、いまだ解明されていない。
②地震発生のメカニズムは、地域や規模が違えばその都度に変わってくる。
③自然現象はたくさんの要素が相互作用することで引き起こされる。
これらの3つ理由から、たとえ地震予測研究がこれから進展したとしても、正確な予測は困難であると予想される。
地震はどこでも起こる可能性があるし、起こらない可能性がある
「科学の判断基準は唯一データであり、データと合わない学説はNGである」
ゲラー教授が、教授の論文を批判した地震学者に送った言葉だ。
ハザードマップで安全な地域でも、大きな地震が発生する可能性はある。
それは逆に、南海トラフ地震もまったく起きない可能性もあるという事。
ハザードマップで今後30年以内に80%の確率で地震が起きるといわれている地域も、ほぼ0%といわれている地域も、その潜在的なリスクはほとんど同じといえるだろう。
地震予測はほぼ不可能。しかしだからといって、個人的には地震予測研究をすべて投げ出すべきではないと思っている。天気予報は流体力学や熱力学といった科学的根拠を元に行っている。それでも、100%予測することは難しい。それでも、天気予報は我々の生活に有益な情報をもたらしてくれる。
これから研究が進み、何らかの地震発生の理論が見つかれば…天気予報程度の精度でも、地震予測が可能になるかもしれない。
しかし今のところ、地震予測は科学的データの裏付けのない曖昧な根拠を元に行われているのが実情だ。
今、地震調査研究推進本部以外でも、いろんな方法で、たくさんの専門家が、独自の地震予測研究を発表している。だが、過去のデータを照らし合わせた時、信ぴょう性のある研究はどれほどあるのだろうか?
テレビや雑誌では「次に地震が発生するのはココだ!!」なんて見出しで、過激な意見が飛び交っている。しかしそれらの情報に惑わされて、いたずらに怖がったり安心したりしてはいけない。
結局のところ、どこに住んでいようとも、しっかりと地震への備えをしておくのが大事なのだと、そうゲラー教授は語っている。
2017年に国は地震予知を”諦めた”
この記事は2016年に書いたものだけれど、翌年の2017年に日本政府は地震予知についての考え方を大きく転換させた。
つまり地震予知を”できる”から”できない”に大転換したのだ。
東日本大震災も、熊本大地震も、北海道地震も、そのすべてをまったく予知できなかった政府は、ついにその考え方を変えざるを得なくなった。
「少なくとも現在の科学力では、制度の高い地震予知は難しい」という結論に至り、その後は地震予知にこだわらず、地震の研究で”減災”に繋げることを考えていくとか。
確実な予知は将来もできないんじゃないかと思っています。何年何月何日にマグニチュード(M)いくつの地震がどこで起きるなんていうのは絶対に無理。
でも、たとえば1週間以内にM8の地震が起きる確率が50%以上と言うことができれば、だいぶ確実性が高く、警戒宣言の基にできると思います。
参照元:「確実な地震予知は将来もできない」山岡耕春・日本地震学会会長
たとえ科学が進歩しても地震の正確な予知は難しいだろうと、日本地震学会会長も明言している。
ただし、天気予報くらいの制度の”予測”であれば可能かもしれない。
ともあれ、日本に住んでいる限り、どこで大きな地震が発生するかはまったくわからない。
安全な地域なんてない。
全員がもしもの時のためにしっかりと備えておくのが大切なんだろうね。