うつ病の人が使う言葉には、意外な特徴や傾向があるという。
その特徴を知ることができれば、例えば友達のLINEの返信で「ちょっとうつ傾向があるかも。悩み事がないか聞いてみよう」とか、ブログの日記を読んで「この人はうつ病かもな…」なんて判断できるかもしれない。
最新の研究で判明した、うつ病の人のが使う言葉の特徴を紹介しよう。
うつ病の人が使う言葉の特徴
最近ではコンピュータを使って膨大なデータがものの数分で分析できる。わずかな時間で多く言葉から、語彙の多様性、文章の長さやパターンなど、いろんな分析が可能となった。
イギリスにあるレディング大学の研究者が、そういった技術を利用してうつ病傾向がある人の言語的特徴を導き出すことができたという。
言葉は「内容」と「表現方法」の2つの要素によってきまる。
まずは、その人の発言や書いた文章の「内容」におけるうつ傾向を表す特徴を紹介しよう。
うつ病の人の言葉の”内容”に隠された特徴
うつ的傾向のある人の言葉の特徴といえば、やっぱりネガティブな表現が多いということ。
これは言葉の「内容」の特徴のひとつ。
- 寂しい
- 悲しい
- 悔しい
- 辛い
発言の中や、文章の中に、こういった負の感情が多くなってきたら、それはうつ病のサインかもしれない。
…というのは誰でも予測できるだろう。
だけど、うつ病の人の言葉の内容における”もう一つの特徴”は、結構意外かもしれない。
うつ病の人は一人称の代名詞を多用し三人称の代名詞をほとんど使用しない。
一人称の代名詞は「わたし」「僕」「オレ」であり、三人称の代名詞は「彼」「彼女」「あいつ」「あの子」「あいつら」という表現。
たくさんの言葉を分析した結果、このような結論が導き出された。しかもこれはネガティブな発言数よりも、より正確にうつを判断できるという。
その理由として研究者は、うつ病の人は自分の事しか考えられない状態になっていたり、他者との関わりが少なくなっているからと予測している。
では、実例を見てみよう。
ブラック企業に勤めていて、身も心も疲弊したよしお君とたかし君。彼らは久しぶりに会った友人に愚痴をこぼしている。
愚痴はほぼ同じ内容だが、うつ病の危険があるのはどちらだろうか?
よしお「もう、なんか仕事やる気でなくて。お前はいいよな、仕事楽しそうで。オレの職場最悪なんだよ。職場のやつらがさ、すげえ性格悪くて。この前なんて上司に契約横取りされたんだぜ!!マジ卍だよ!意味わかんないけどさ~」
たかし「もう、オレ、何もかもやる気でないよ。オレの職場最悪なんだ。オレがどんなに頑張っても認めてくれないんだよ。なんかオレの努力が足りないのかな…。まあ、もう少し頑張ってみるよ、オレがやりたくて希望した仕事だからな」
うつの危険があるのはたかし君の方だ。たかし君は「オレ」という一人称が多く、意識が自分にしか向いていない。
よしお君の方は「お前」や「職場のやつら」という言葉が含まれていて、意識が適度に外部に向いている。自分以外の人のせいにできているのもうつ予防に効果的。
もし身近な人で「わたし」とか「俺」という言葉を多用している人がいたら、その人は周りに目を向けられないほど追い詰められているのかもしれない。
或いは自分自身が、一人称を多用するようになっていたら、うつの危険があるだろう。
では次に、うつ病の人の表現の特徴について。
うつ病の人の言葉の”表現”に隠された特徴
分析の結果、うつ病の人は絶対主義的な言葉を多用することがわかった。
- 必ず
- 常に
- 完全に
- 完璧に
- 絶対に
- 無意味
絶対主義的な言葉とは、このような100%絶対的な確率を表す表現のこと。或いは0%を表す表現、とんでもなくスケールのデカい表現など。
これはうつ病の人が「白か黒かハッキリさせたがる」「100%か0%かで物事を考える」という性格的傾向のためだと考えられる。
では実例を見ていこう。
重要な仕事で失敗してしまったよしお君とたかし君。
いつものように昔なじみの友人を呼びだして愚痴っているのだが…
たかし「オレは常に完璧に仕事をこなしていた。絶対にオレのせいじゃない!こんな仕事これ以上続けるのは無意味だ。必ず辞める、絶対辞めてやるッ!!!」
よしお「オレはまあ、テキトーに仕事やってたよ。確かに。でも今回のプロジェクトの失敗はオレのせいじゃなくね?まあ別にいいけど。給料もらえれりゃいいよ。え?おれ仕事辞めないよ。転職とかめんどくせーじゃん。マジ卍だよ!!」
もちろん、うつの危険があるのはたかし君だ。
文章の中に白黒ハッキリつけたい頑固さと一途さ、不器用な真面目さがにじみ出ている。
それに比べて、なんでもかんでもいい加減なよしお君にうつ病の心配はないだろう。
うつ病にならない人生には極端になりすぎない、いい感じのバランス、つまり「中庸」が大事みたいだ。
ちゅう‐よう【中庸】
[名・形動]
1 かたよることなく、常に変わらないこと。過不足がなく調和がとれていること。また、そのさま。「中庸を得た意見」「中庸な(の)精神」
2 アリストテレスの倫理学で、徳の中心になる概念。過大と過小の両極端を悪徳とし、徳は正しい中間(中庸)を発見してこれを選ぶことにあるとした。
goo辞書より参照
うつ病の人の言葉の特徴をまとめ
将来的には、その人のSNSでの発言やブログの内容を分析することで、優秀なセラピストよりも正確にうつ病の診断ができる可能性があるという。
いまでも自分のネットでの検索履歴や閲覧したページのデータが集積されて、自分の趣味嗜好に合わせたネット広告が自動で表示されるようになっている。
将来的には自分のSNSやブログでの発言が自動的に分析され、それに合った広告が表示されるようになるかもしれない。
もしネットを閲覧していてカウンセリングや精神科のクリニックの広告ばっかり表示されるようになったら、自分が無意識のうちにうつ病に侵されていた、なんてことになるかも。
では、改めてうつ病の人の言葉の3つの特徴をまとめてみよう。
①ネガティブな発言が増える
②一人称を多用する
③絶対主義的な言葉を多用する
自分の使っている言葉で上記のような特徴に思い当たるのなら、意識してそういった言葉を使わないようにしよう。
「言葉だけ変えたってしょうがないよ、何も変わらない」
なんて思うかもしれないけれど、言葉を変えるだけで性格も人生もちょっとだけ変わる。
そしてもし、身近にいる人がこんな特徴を兼ね備えていたとしたら、うつ病の傾向がある…かもしれないので、少しだけ気にかけてあげよう!!
参照記事:People with depression use language differently – here’s how to spot it(The CONVERSATION)