この世の中で最も人間の”生”と”死”が交差する場所、それが病院だ。
命が生まれる産婦人科や、地下にひっそりと備え付けられた霊安室、瀕死の怪我人が運び込まれるICU、そこには常に生と死が隣同士に存在している。
だからこそ、病院には心霊関係の噂が絶えない。
一説には医療関係者のほとんどが何らかの心霊体験をしているとかいないとか。
…ボクの母親は地方の大きい病院で定年まで看護師長として活躍していた。
そんな彼女に看護師時代に心霊体験があるのかどうかを聞いてみたのだけど、その答えは驚くべきものだった!!
病院の七不思議とかあるんじゃないの?
ボクの母親はもう定年退職したけれど、もとは看護師長としてバリバリに活躍していた。
恐らく30年~40年は看護師として働き続けていたと思う。
幼稚園のころはICUの看護師さんたちが待機する場所に、よく連れられて行ったものだ。病院の売店で売っていてよく食べていたサンドイッチの味も、何となくおぼえている。
お盆に久しぶりに帰省したボクは、そんな母と何気なくテレビを観ていた。
観ていたのはお盆の時期に必ずやる心霊系の番組。
そこではとある医師の心霊体験が、ドラマ仕立てで紹介されていた。
頑張って手術したけど患者を死なせてしまったことがあった。
遺族には誠心誠意やれることはやったと説明した。
ある日の夜、その患者が自分のところの幽霊となってあらわれた。
幽霊は医師に「もっとくるよ」と語りかけた。
その意味がわからなかったけれど、誠心誠意対応したことが功を奏し、それ以降、自分のところに手術の依頼がたくさん来るようになった。
「もっとくるよ」はきっと患者さんのことだったのだ。
簡単に説明するとそんな内容。
ずいぶんとポジティブシンキングな医師だなぁと思いつつ、ふと、長いこと看護師経験のある母にもこういった類の心霊体験があるのではないかと思った。
そこで軽い気持ちで質問してみた。
ボク:かーちゃんは心霊体験とかないの?
母:ないよ、全然。
ボク:病院の七不思議とかあるんじゃないの?
母:ないない。
ボク:でも、地下に霊安室とかあるんでしょ?
母:地下にあるけど、(霊的なものを)感じたことないよ。
ただ、
お花畑を見たっていう患者は何人かいたけどね。
病院に幽霊なんかはいない。
だけど、臨死体験的なものは実際にあるみたいだ。
ボクは生まれてこの方心霊体験をしたことがなく、霊感もゼロ。
恐らく母も、まったく霊感はないであろう。
実は病院にたっくさんの幽霊が跋扈していたのに、母がまったく気づいていなかった、なんて可能性も大いにあるけどね。