イグノーベル賞とは「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して与えられる名誉ある賞のこと。
「はぁ?」という意味の言葉はどの言語にもあるという研究。
マウスにズボンを履かせ、性生活の変化を観察する研究。
ネコは個体でありながら液体であるという流体力学的な研究。
これまで、たくさんの「一見くだらないけどとても興味深い研究」が栄えあるイグノーベル賞を受賞してきたわけだけど、先日、2018年度のイグノーベル賞が発表された。
くだらないことを真面目に研究する、ということにかけては日本人は優れた才能を発揮するらしい。
日本人研究者は、何年も連続でイグノーベル賞を受賞してきたが、やはり今回も日本人研究者のひとりが受賞。
これで12年連続で日本人の研究者がイグノーベル賞を受賞してきたことになる。
その研究の内容と共に、2018年のイグノーベル賞の内容を紹介しよう。
2018年度イグノーベル賞の内容とは?
まずは2018年度にイグノーベル賞を受賞した研究の内容をざっと紹介しよう。
医学賞:ローラーコースターを利用した腎臓結石の早期治療の研究(アメリカ)
人類学賞:動物園のチンパンジーが客である人間のマネをする研究(スウェーデン・ルーマニア・デンマーク・オランダ・ドイツ・イギリス・インドネシア・イタリア)
生物学賞:ワインの専門家がワインを識別できるかを証明するために、ワインに1匹のハエを入れた研究(スイス・コロンビア・ドイツ・フランス)
化学賞:人間の唾液には汚れを洗浄する作用があることを測定した研究(ポルトガル)
医学賞:座位の方が大腸内視鏡は入れやすいという研究(日本)
文学賞:ほとんどの人が複雑な商品の説明書を読んでいないことを調べた研究(オーストラリア・エルサルバドル・イギリス)
栄養学賞:人肉からの摂取カロリーは、他の肉よりも大幅に低いことを計算した研究(ジンバブエ・タンザニア・イギリス)
平和賞:運転中の叫び声や呪いの頻度、動機づけについての研究(スペイン・コロンビア)
生殖医療賞:郵便切手を利用した夜間の陰茎勃起モニタリング手法についての研究(アメリカ・日本・サウジアラビア・エジプト・インド・バングラデシュ)
経済学賞:ムカつく上司をブードゥー人形で呪うと大きなメリットがあるという研究(カナダ・中国・シンガポール・アメリカ)
12年連続でイグノーベル賞を受賞してきた日本人。今回日本人研究者が受賞した研究の内容は「座った姿勢の方が大腸に内視鏡を入れやすい」という事実を真面目に調べたものであった。
その研究内容と共に、個人的に面白いと思った「ワインにハエを入れる研究」と「ムカつく上司を呪う研究」についても、もう少し詳しく紹介しよう。
肛門!ハエ!ブードゥー人形!イグノーベル賞の研究内容
人々を笑わせ、考えさせた研究に贈られる今年のイグ・ノーベル賞の発表が13日(日本時間14日)、米ハーバード大(マサチューセッツ州)であった。座った姿勢で大腸の内視鏡検査を受けると苦痛が少ないことを自ら試した昭和伊南(いなん)総合病院(長野県駒ケ根市)の堀内朗医師(57)が、医学教育賞を受けた。日本人の受賞はこれで12年連続となった。
参照元:座って大腸検査「苦痛少ない」自ら試しイグ・ノーベル賞(朝日新聞)
イグノーベル賞を受賞した堀内朗医師は、自ら内視鏡を肛門に挿入し、感じる痛みや不快感を丁寧に調べた。
その結果、イスに座って少し股を開いた姿勢で入れる方法が最も痛みや不快感がなかったという。
「驚くほど容易にできた」
そう堀内医師は語る。
ただ、座った姿勢で医師が内視鏡を入れる検査は、恥ずかしがって受けたがらない人が多く、採用していないという。
でも、恥ずかしがって受けたがらない人が多いなんて、この研究意味ないじゃないか!!?
あまりにも切なすぎる研究だ。
ちなみに私も、一度だけ大腸内視鏡検査を受けたことがある。
1週間ほど前から消化吸収の良い食事内容に切り替え、大腸検査の前には大量の下剤を飲み、大腸の中を綺麗にする。そのうえで肛門に内視鏡を入れて検査するわけだ。
私の場合は、検査台の上で横向きになってお尻を出し、そこに医師が内視鏡を入れていった。
目の前にはご丁寧に小さなモニター画面が設置されていて、自分の大腸の中をリアルタイムで見ることもできた。
この姿勢は、内視鏡を操作する医師をまったく見ることができないので、ある意味では羞恥心も少ないし、気が楽な部分もある。
これが、イスに座って少しだけ股を開いた状態で、おじさん医師と面と向かった状態でやられるとしたら…?
絶対嫌だ!!
少しくらい不快感や痛みがあっても、横になった姿勢を選ぶ。誰だってそうする。(美人女医なら考えなくもないが、それはそれで色んな問題が噴出しそうだ)
とはいえ、この「患者のことを第一に考える姿勢」は医師として賞賛に値するし、素晴らしい研究と言えるだろう。
ワインにハエを入れる研究
ハエは甘い香りを嗅ぎつけ、ときたまジュースやワインに飛び込み、そのまま溺死してしまうことがある。
このたった1匹のハエが、ワインの味を台無しにしてしまうという事実が判明した。
ワインの中に1匹のハエが落ち、そのハエが放出する、わずか1ナノグラムのフェロモンも、ワインの専門家は嗅ぎ分けることができるというのだ。
この実験には、経験豊富なワインソムリエが8名参加したという。
ハエの入ったワインを知らずに飲んだソムリエは、そのワインを「やや不愉快な味」と評価した。
…ハエが入っていたとは知らずに飲んだ、ワインソムリエにとっては最悪な実験だろう。
呪いのわら人形の効果が科学的に立証される!?
ムカつく上司がいた場合、その上司を模したブードゥー人形にハリを指したりして呪うことは、仕事に関するストレスの軽減に効果的だという。
この実験はアメリカとカナダの229人の労働者を対象として行われた。
実験参加者は厳しい上司、ムカつく上司から受けた仕打ちを思い出してもらい、ブードゥー人形にピンを刺したり、ロウソクで焼いたりしたという。
この恐るべき”呪いの儀式”は、労働者のストレス解消や自尊心の回復に役立った。
単純で無害な報復行為(ブードゥー人形を使った呪い)は個人に利益をもたらすだけでなく、組織全体に利益をもたらすかもしれないという結論が導き出されたわけだ。
日本ならば、これはわら人形に該当するだろう。
わら人形による呪いは、特に女性が行っているイメージがある。
男尊女卑社会であった昔の日本では、女性は虐げられ、しかもその復讐の機会を与えられていなかった。
そんな時代の数少ない復讐行為が、呪いのわら人形であったのかもしれない。
呪いのわら人形で儀式を行うことでストレスが解消され、それが村社会全体の機能を改善していた…そんな可能性もゼロではない。
このイグノーベル賞を受賞した研究は、「呪いのわら人形」の社会的なメリットについての回答とも言えるだろう。
ムカつく上司が多くて、サービス残業が多いブラック企業は、組織全体の効率を上げるために、休憩室などに誰でも無料で使えるわら人形を用意しておくのがいい。
もちろん、釘やマチ針も。
そうすればそのブラック企業の従業員のストレスも緩和され、業績が改善されるかもしれない!!
まとめ
面白くて考えさせらえる、役に立たないようで役に立つ、そんな研究を讃えるイグノーベル賞。
毎度のことながら、とても面白い。
個人的に、人生は無駄なことが多い方がいいと思っている。
人生に意味を求めるのは窮屈だし、不健康だ。
そんなユルイ人生観を持つ私は、イグノーベル賞にとっても共感してしまう。
イグノーベル賞は真面目に、詳細に、しっかりと、ヘンなテーマについて研究している専門家を全肯定している。
本家のノーベル賞とは違い、人類の発展にま~ったく貢献しない様々な研究は、まさに人間の人生の素晴らしさを象徴しているようだ!!
…というのは考えすぎだろうか。