精神と心理

脳科学が解き明かす、記憶力アップの為に神経新生を活性化させる方法と、嫌な記憶を忘れる方法!

2016年2月29日

「記憶力」を高めることが出来たらどうだろう?

勉強ははかどるし、良い思い出も忘れないし、人生を有意義に過ごせるはずだ。

人間の記憶には、脳にある海馬と大脳皮質が密接に関わってくる。海馬で起こる”神経新生”が記憶の定着にとても重要らしいのだ。

今回は、受験生から物忘れの酷くなった老人まで、神経新生を活性化して記憶力をアップする方法、そして嫌な記憶を忘れる方法を紹介したい。

神経新生が記憶を再編する

まずは記憶の仕組みを簡単に説明しよう。何か新鮮な体験や新しい知識を得た場合、まずは脳の”海馬”という部分に記録される。

海馬の神経細胞の数は約1億個と言われている。海馬だけではそんなにたくさんの量のデータを記録しておくことは出来ない。というわけで、海馬に記録されたデータは、不要なものは消去され、重要だと思われるものは大脳皮質へと移動する。

大脳皮質の神経細胞の数は約100億個、海馬の100倍だ。そして、大容量の大脳皮質へと移動した記憶は、長期間消える事のない思いでとして定着する。

 

これが新しい記憶が定着するまでの簡単な流れ。

そして海馬→大脳皮質への記憶の移動が、記憶力の秘密を握っている。この移動がスムーズであれば、新しい記憶が定着する可能性が高いってわけだ。

そしてそれを活性化するのが”神経新生(ニューロン新生)”だ。

海馬の中で新しい神経細胞(ニューロン)が生まれることを神経新生と呼ぶ。神経新生は海馬の記憶を消去し、その記憶を大脳皮質にコピペする機能があるのだ。

この神経新生はこどもの頃は活発で、高齢になればなるほど衰えていく。老人が物覚えが悪いのはこのためといわれている。

では、どうすれば神経新生を活発化し、記憶力を維持できるのだろうか?

神経新生を活発化する方法

神経新生を活発化する方法は極めてシンプル。

つまり、運動をすればいい。

ウォーキングやランニングなどの軽い運動で十分。運動をすることで神経新生の量が2倍に増えることもあるという。運動は脳や記憶力をアップさせる効果があるのだ。

他にもアルツハイマーの治療薬や抗うつ剤で神経新生が増える場合があるが、やっぱり運動が手軽でオススメ。

ただし、ひとつ気を付けて欲しいことがある。

神経新生は記憶の忘却にも密接にかかわっていると言われているのだ。

海馬で神経新生が活性化すると、記憶の再編が進み、記憶の定着と同時に記憶の忘却も行われているという。

既存の神経回路に再編が生じるため、それまで海馬の神経回路に蓄えられていた記憶は忘れてしまう可能性がある。

 

マウスの実験でも、神経新生が多いこどものマウスの方が大人のマウスよりも記憶力が低かった。

人間もこどもの頃の思い出はあやふやな場合が多い。これはこども時代に神経新生の量が凄すぎて、そのため記憶もあやふやになっていると考えられる。容量の少ない海馬で神経新生が起きて新しい記憶容量が増えると、その分だけ大脳皮質に記憶が移動する。しかし、神経新生の量が多すぎると、記憶することも多いけれど、移動されないまま忘れてしまう記憶も多いのだろう。

 

こどもの頃の思い出は、忘れることも多いけれど、しっかり覚えている思い出も多い。

大人になってからの思いでは、ある程度覚えているし短期的な記憶力もこどもよりいいけれど、しっかり覚えている思い出は少ない。

ということだろう。確かにこどもの頃の思い出は、「小学校5年の頃に○○があった!」なんて覚えているけれど、大人になってからは「27歳のころ○○があった!」なんて曖昧で思い出せなくなっている。

 

でも、神経新生で忘れるならどーすりゃいいの!?と思うだろう。

…神経新生で記憶力を高めるには、そのタイミングが大事。

勉強した後に神経新生を高めるために運動すると、勉強の内容を忘れてしまう可能性がある。神経新生を上手く利用するには、運動して神経新生を高めたに勉強するのが有効なのだ。

そう、しっかりと勉強した後は、運動せずに静かに眠ることが大事。

では次に、神経新生と共に記憶力に重要と言われる「睡眠」についてだ。

睡眠は重要か?一夜漬けの実験

一般的に睡眠時に記憶が定着すると言われている。受験生に対して「徹夜せずにしっかり眠れ!」というアドバイスはよく聞くだろう。

確かに実験でも、睡眠中に海馬の記憶を大脳皮質の記憶を固定化しているという結果は判明している。

海馬→大脳皮質への記憶移動は睡眠中に活性化するのだ。

 

昔テレビ番組で面白い実験が行われていた。

「記憶には睡眠が大事っていわれるけど、ホント?」これを検証する実験。

勉強した後にたっぷり眠ったグループと、一夜漬けで知識を詰め込んだグループ、どちらの方が翌日のテストで優秀な成績を収められるかためしてみたのだ。

その結果は驚くべきものだった。

眠らずに一夜漬けでテストをした方が、成績が良かったのだ!!(しかもちょっとした差ではなく圧倒的な差で!!)

これには、そのテレビ番組に出演していた脳科学者も困惑していた。

…ただし補足しておくと、数時間後に同じテストを再度やった場合、睡眠をとったグループの方が成績の下降が緩やかだった。

一夜漬けで詰め込んだ知識は忘れやすいということ。思い当たるフシもあるんじゃないだろうか?

これは睡眠時に海馬から大脳皮質への記憶の移動が、あんまり行われていなかったからだろう。

 

つまり、記憶の定着にとって、睡眠はとても大事なのだ。

神経新生まとめ

記憶力を高めるには海馬の神経新生を活発化させると良い。ただし、神経新生には記憶の再編という機能もあるため、同時に忘却をも促進する可能性もある。

神経新生を高めるには、ウォーキングやランニングなどの適度な運動が最適。

記憶力を高めて勉強したい場合は、勉強前に軽い運動をして神経新生を活性化しておく。

なにかしら嫌な記憶を忘れたい場合は、その後に運動をして汗を流すことで神経新生が活性化され、記憶が整理されることで忘れることが出来るだろう。

また、夜にしっかりと睡眠をとることで、海馬から大脳皮質への記憶の移動が促進される。一度大脳皮質に記憶されれば、それは忘れにくい”思い出”に変化するのだ。

フラれた後に海へと走る

片思いの女性に思い切って告白!

「ずっと…好きでした!付き合ってください!」

「ごめんなさい…わたし今、ときめきメモリアルガールズサイドに夢中でリアルに興味ないの…」

「そ、そっか…ごめんね、急に変なこと言って。じゃあ、また明日、学校で!」

無念にもフラれた時、実に95%以上の男性は泣きながら海に走るという。全速力で。

そして夕日の暮れなずむ太平洋に向かって叫ぶ「青春のバカヤローーーーッ!!!」と。

…これは脳科学的に、実に理に適っていることになる。

走ることで神経新生が活発化し、フラれたという無念の記憶が薄まっていくからだ。

おもいっきり走り、叫んだあと、以外にもスッキリとしたサワヤカな気持ちだけが残っているのも納得できる話だ。

ケンカをして親友に

普段から犬猿の仲の二人。ある日、肩がぶつかりあうという些細なきっかけで殴り合いの大喧嘩に。

「あ?」

「あぁ!?」

「やんのかテメー!」

「んだとコラー!!」

「あーーッ?」

「あ”ぁぁーーーーー!!」

ボコッ!!バキッ!!ゴスッ!!モフッ!!

散々殴り合った後、ふたりは疲れ果て、土手の草むらに倒れる。

視界には真っ青な空が広がり、なんだか自分がちっぽけに思えてくる。

「おめーなかなかやるじゃねーか!」

「へっ!お前もな!!」

イチチチチ…と殴られたほっぺたを擦りながら、それでも笑みがこぼれる。

そうして二人は、一生涯付き合える大親友となったのだ。

…これも脳科学的に、実に理に適っているということになる。

ケンカすることで神経新生が活性化し、お互いの嫌な部分が記憶から薄まっていくのだ。

(逆に口ゲンカは言葉を発することが記憶の定着を促すので、相手への悪感情が増幅されて余計に仲が悪くなるだろう)

結論

  • 受験生は朝にジョギングをして、夜はグッスリ眠るのが記憶力アップに良い!
  • 老人は加齢により神経新生が衰えるので、積極的に運動をした方が良い!
  • 内容を忘れてもいい一発勝負のテストなら、一夜漬けも有効!!
  • 嫌なことがあったら部屋でウジウジ悩むな!海や山の頂上まで走れ!そして叫べ!!
  • 嫌いなやつと口ゲンカはやめろ!おもいっきり殴り合え!!!

脳科学的には、こういう事になるんじゃないだろうか。

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