ゲーム 精神と心理

ゲーム障害とは?新しい精神疾患としてWHOのICD-11に認定されるかもしれないゲーム障害の症状と治療法

2017年12月24日

”ネトゲ廃人”なんて言葉があるように、ゲームのやりすぎが日常生活に支障をきたすようなケースがある。

そんなゲーム依存症ともいうべき症状は、今までは精神障害として正式に認められていたわけではないのだが…

なんとWHO(世界保健機構)の最新の国際疾病分類であるICD-11で、ゲーム障害が新しい疾患として記載されるかもしれないというのだ!!

てゆーか、ICD-11とは何なのか?

そしてゲーム障害とは何か?

簡単に説明したい。

ICD-11とは?

「はあ…最近やる気がでないし、体も動かないし、なんだか死にたいなぁ~…」

なんて精神状態でメンタルクリニックに行ってみると、うつ病と診断されちゃったりする。

妄想や幻聴が酷い場合は「統合失調症ですね」なんて診断されるかもしれないし、やたらとハイテンションでおしゃべりが止まらなかったり、些細なことでブチ切れまくっていたら「躁病ですな」と診断されるかもしれない。

このように世の中にはたくさんの精神障害があるのだけれど、精神科医が患者の症状を診断するための"基準"にはふたつの流派があるのだ!!

 

ひとつが、アメリカ精神医学会が中心となって作成されたDSMシリーズ。

1952年に最初のDMS-Ⅰが作成され、時代と共に随時改良されていき、現在ではDMS-Ⅴが最新のものになっている。

DMSは、言うなれば「精神病の辞書」ともいうべき資料だ。

 

そしてもうひとつが、今回話題となっているICDシリーズ

ICDとは1900年にWHOが中心となって行われた、「死因や疾病を世界的に統一しよう」という試みによって作成された、言うなれば「病気の百科事典」ともいうべき資料。

そのため、ICDの中にはあらゆる病気が網羅されていて、その中のひとつに”精神疾患”のカテゴリーが含まれている。

ICD-10が最新版で、次に作成されるICD-11に今回取り上げた「ゲーム障害」が入るかもしれないと話題になっているわけだ。

 

ちなみに日本の精神医学会においては、DSMもICDもほぼ同じくらい重要視されている。ただ、厚生労働省がICDを採用しているため、最近ではどちらかといえばICDの方が優勢になってきている。

DMSとICDは互いに影響を与え合い、精神障害についての最新の研究を反映したバージョンアップを繰り返しているのだ。

 

では、ICD-11に記載されるかもしれないゲーム障害とは何なのだろうか?

ゲーム障害とはなんなのか!?

ゲーム障害の詳細については、まだICD-11が発表されていないので正式にはわからない。だけど大方の想像はつく。

精神障害とは、基本的に「本人」か「本人の周りの人」のどちらかが困っていることが必要条件とされる。

ホントにあり得るのかは置いておいて、酷いうつ病を患っていたとしても、本人も家族もまったく困っていなかったら、それはなんの”障害”にもならないだろう。

逆に言えば、どんなに普通な状態に見えたとしても、「本人」か「本人の周りの人」が困っていれば、それは”障害”といえる。

 

つまりゲーム障害とは、ゲームをやることで「本人」か「本人の周りの人」が困っている状態といえるだろう。

ゲームが自制心では止められずに睡眠不足になったり、栄養不足になったりして、不健康な状態になる。(実際にネトゲのやりすぎで睡眠をとらずに死に至るケースは報告されている)

また、ゲームが止められずに、普通の社会生活を送ることが困難になる。学校や仕事に行くことができず、不登校や引きこもりの原因になる。家族・友人とも正常な関係を築けなくなる。

このような状態に陥っている場合、それはりっぱな「ゲーム障害」といえるだろう。

 

お酒を飲む人のほとんどは、なんの障害もなくお酒というものを楽しんでいる。しかし一部の過剰にお酒を飲む人の中には、アルコール依存症に陥ってしまい、健康を害したり、正常な社会生活を送れなくなってしまうケースもある。

ゲームもまったく同じだ。

 

では、ゲーム障害はどれくらいの割合で存在するのだろうか?

オックスフォード大学は昨年、ゲーム依存症の割合を導き出す調査を行った。インディペンデント紙によれば、英国、米国、カナダ、独で1万9千人の男女を対象に行われた調査では、2-3%の回答者に米国精神医学会が精神障害の証拠として挙げる兆候の5項目以上が見られた。ただし、それがゲームに関連して引き起こされたものであるかは、今のところ証明されていない。

参照元:コンピューターゲーム依存症は精神障害  WHOが公式に認定

オックスフォード大学が19,000人の男女を調査した結果、なんとゲーム障害の兆候がある人が2~3%もいたという。

100人いたら、その内の2~3人はゲーム障害ってわけだ。

なんとなく、ゲームが止められないというとネトゲをイメージするかもしれないけど、スマホのゲームだって、オフラインのゲームだって、同様の依存性があると思われる。

「自分は違う!!ゲーム障害じゃない!!」

なんて思っていても、実はゲーム障害に片足を突っ込んでいる可能性もあるかもしれない。

ゲーム障害の治療法

一度でも依存症になってしまうと、自力での克服は困難を極める。

脳の構造が変形してしまい、ゲームをすることで報酬系が過剰に反応してしまったり、自制心を発揮する前頭葉の働きが弱くなってしまったり…自分自身の欲求を根性論でどうにかすることはほとんど不可能。

もちろん、家族が「ゲームは1日1時間!!」といくらキツく言ったところで、自分じゃあどうにもできないので、ゲームも止めることもできない。

これを理解できないと家族間のトラブルのもとだ。

もしゲーム障害を治療したい場合は、専門の医療機関を受診するのが確実で安全だろう。

ゲーム障害は最も恐ろしい依存症になる

ゲーム障害が本格的な精神病に認定されたとしたら、ゲームが始まる前に警告文が表示されるかもしれない。

このゲームは面白すぎるため、ゲーム障害の原因となります。あなたの健康と健全な社会生活を損なう恐れがありますので、遊びすぎに注意しましょう。

これからVR技術が発達し、さらに没入感の高い面白すぎるゲームが登場した場合、現実の世界から逃避してゲームの世界にのめり込む人々がたくさん現れるだろう。

24時間、ゲームの中。

食事は栄養補助食品、排泄は成人用おむつ。社会生活のすべてを放棄して、人生をゲームにささげる…。

ドキドキ、ワクワク、冒険に恋愛に友情、成長と挫折、かけがえのない達成感、そのすべてがゲームの中で十二分に体験できるとしたら?

 

そのとき、ゲーム障害は最も恐ろしい依存症のひとつになるかもしれない!!

 

…そして、一介のゲーマーとして、そんなゲームがやってみたくもあるのであった。

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