東日本大震災や阪神淡路大震災の直前に「ゴゴゴゴ・・・」という地鳴りの音を聞いたという話を聞いたことがある。
はたして地鳴りとは大地震の前兆現象なのだろうか?
地鳴りが発生する原因と地震との関係について調べてみよう。
そもそも、地鳴りの原因とは??
まず、地鳴りとは何なのだろうか?
地震は地面そのものがゆれる。その影響で建物が揺れて軋み「ドドド…」というような音を発する。
対して地鳴りは「ゴゴゴゴ…」という不気味な音が地面から聞こえてくるが、地面は揺れることはない。
地面から音がするという地鳴り、その原因とはなんだろう?
地鳴りではなく空振説
軍用機などの飛行機やヘリコプターなどが低空飛行で飛んだために起きる空気の振動、これを空気が振動するいうことで”空振”と呼ぶ。
地震の空気版という感じ。
この空振を地鳴りと勘違いしてしまう場合がある。
低空飛行の航空機が遠くで飛んでいたら「ゴゴゴゴゴ」という音が聞こえるかもしれないし、強い空振動がもたらす空気振動によって窓ガラスが小刻みに揺れたり、家全体が揺れる場合もある。
空振は火山噴火や核爆発、隕石の落下や爆弾爆発なんかでも発生する。もし近くに活火山や核実験場がないのなら、自分の家で感じる空振の原因としてを飛行機の方が現実的だろう。
ちなみに航空機が音速を超えた時に発生する空振をソニックブームと呼ぶ。ソニックブームはとんでもない爆発音と空気振動を伴うというが、これを地鳴りと勘違いしてしまう確率は低いだろう。
ダウンバースト現象説
ダウンバーストと呼ばれる自然現象がある。
ダウンバーストは規模の大きな下降気流のこと。ダウンバーストが起きると、巨大な下降気流が地面に激突し、四方八方に凄まじい突風を引き起こす。
ダウンバーストの影響で航空機が事故を起こしたり、発生した突風でガラス窓が割れてたり、車が横転したりといった被害が及ぶ場合がある。
この激しい風が住宅そのものを振動させ、あたかも地鳴りのような「ゴゴゴゴ…」という音が聞こえる場合がある。
ダウンバーストはアメリカでの被害報告が多いけれど、日本で発生しないわけじゃない。
ダウンバーストは”発達した積乱雲”から発生することが多い。そして発達した積乱雲は”大気の状態が不安定”なときに発生する。
最近は世界的に異常気象が続いているし、日本でもダウンバースト現象の発生が増える…かもしれない。
地鳴りスロースリップが原因説
地鳴りの意味を辞書で調べるとこう記載されている。
地震などで地盤が振動して鳴り響くこと。また、その音。
つまり地鳴りは”地盤”が振動することで発生する。
地震も地盤が大きく動くことで発生するわけだから、地鳴りも地震も発生メカニズムはとても似ているということになる。
では、地鳴りは地震の前兆現象になるのか?
可能性としして考えられるのがスロースリップだ。
スロースリップは地盤がゆっくりとズレる現象のことで、体感では感じられないほどの小さな地震が頻発する。
「ゆっくり地震(スロースリップ現象)が大震災を呼ぶ!?」という記事でも紹介しているが、スロースリップは大地震の前に多く発生するといわれている。
固い地盤がゆっくりと動くことで発生する微細な振動、これが地鳴りを引き起こしている可能性もゼロではない。
スロースリップが大地震の前に発生しやすいとしたら、地鳴りもまた大地震の前に聞こえやすくなるのではないだろうか。
地震のP波による影響説
地鳴りは実際、地震の前兆現象として発生する。
ある震源地で地震が発生すると、その地点を中心にP波とS波と呼ばれる振動が”同時に”発生する。
P波の特徴は「スピードが速く、エネルギーは小さい」というもの、対してS波の方は「スピードが遅く、エネルギーが大きい」という特徴を持っている。
地震が起きると、まずP波が観測地点(自分のいる場所)に到達する。エネルギーの小さな振動によって家具がカタカタと揺れたり、窓ガラスが小さく揺れる。
その後に本震ともいえるS波が到着!
エネルギーの強いS波によって、家屋全体が大きく揺れる。地震はほぼすべてこのパターンで発生する。
小さい揺れ→大きな揺れ、このP波とS波のスピードの違いを利用して、地震速報は地震の到来を予測することが出来るのだ。
さて、地鳴りに話を戻そう。
地震発生後、最初に訪れるエネルギーの小さなP波、これが地鳴りの正体だと言われている。
P波のエネルギーで地面奥深くにある地層や鉱石が振動することで、振動無く地面全体が音を発する場合があるのだ。
もし、P波が原因の地鳴りを感じたとしたら、その直後にはS波による本震が訪れるはず。
地鳴りを感じた直後に地震が発生しないとしたら、それはP波が原因の地鳴りではないといえるだろう。
地鳴りそのものよりも”地鳴りの回数”に注意しよう
巨大な地震が発生した場合は、本震が到達する前にP波の影響で地鳴りが発生する場合がある。
実際、阪神淡路大震災や東日本大震災では、直前に地鳴りが発生したという。
つまり、地鳴りは地震の前兆現象なのだ。
しかし、地鳴りが発生しただけで、その直後に本震が来なかったとしたらどう解釈したらいいのだろう?
少なくともただ一度発生した地鳴りをもって、地震がくるかも!?と怯えるのは早計だろう。
空振やダウンバースト現象の可能性もあるし、もし本当にP波の影響による地鳴りだったとしても、その直後に地震が発生しなければ問題ない。
気を付けなければならないのは、地鳴りの回数。
発生した地震がとても小さな規模だった場合は、P波・S波とも地鳴りとしてしか感じ取れない場合もあるかもしれない。そんな、体感できない地震が頻発していたとしたら、それは大地震の前兆現象の可能性がある。
小さな地震が頻発するのはスロースリップの特徴だし、スロースリップが発生するとマグニチュード5.0以上の地震リスクが高まる。
実際に東日本大震災の直前には、震源地を中心に小さな地震が頻発ていたことが知られている。
地鳴りが増えたり、震度3以下の地震が増えることが、大地震発生の前兆現象なんて可能性もあるだろう。
地鳴りが起きたこと自体は、その原因が何であれ大地震の前兆現象ではないし、むやみに心配する必要はない。
ただし、最近地鳴りを感じる回数が増えてきたなんて時は、ひょっとしたら大地震が迫ってきている!!
…のかもしれない。
親戚から聞いた地下からの奇妙な音
ちなみに私は福島県出身だ。
東日本大震災当時は地元にはいなかったが、親類から奇妙な話を聞いた。
その親戚曰く、東日本大震災直前に「バーン!バーン!!」という奇妙な音が地下から聞こえたというのだ。
それは音だけで、地震などの揺れはなかったという。
その親類が住む地域の地下には断層が走っているらしく、ひょっとしたら巨大な断層の歪みが地盤を破壊している音だったのかもしれない。
これは地鳴りとは言えないかもしれないが、ひとつの地震の前兆現象なのではないだろうか。