幸せはお金で買えるのか?
はたして金持ちは幸せなのか?
人それぞれ意見のわかれそうな微妙な疑問に対して、明確な答えはないのかもしれない。しかし、普遍的な回答を得るためのヒントはありそうだ。
そんなヒントとなりそうな、おもしろい研究を紹介しよう。
幸せになれるお金の使い方
米ハーバード大学ビジネススクールのマイケル・ノートン教授が今月開かれたニューヨーク・タイムズ紙の講演会で発表した。出費行動について科学的な研究を進めた結果、物にお金を使うよりも、体験のために出費した方が一般的には幸福度が高いことが分かったという。
参照元:CNN「幸せはお金で買える」 ただし使い方次第 米研究
お金を使ってした体験、たとえば旅行であったりアミューズメントパークでの思い出などでは、悪い思い出は忘れてしまい、良い思い出は記憶に残る確率が高いという。
「体験は消えてしまうからこそ、私たちは素晴らしかった現実を作り上げ、幸せになることができる」と教授は解説している。
どうやら我々は、楽しい体験にお金を使った方が幸せになれるようだ。
これは「物」にお金を使うのか、それとも「体験」にお金を使うのか、という選択であるが、同時に1人で楽しむことにお金を使うのか、それともみんなで楽しむためにお金を使うのか、という選択肢でもあるだろう。
確かに最も幸せを感じやすい行為は「他者貢献」であることは明白だ。私たち人間は社会的な動物として、他者への貢献に最も質の良い幸せを感じるようにできている。
きらびやかな高級腕時計をしたからといって、それで幸せになれるだろうか?
豪華なソファーを買ったからといって、それで幸せになるだろうか?
どでかい宝石のアクセサリーを身に着けて、それで幸せになれるだろうか?
何千万もするスポーツカーを買ったからといって、それで幸せになれるだろうか?
何億の豪邸に住んだからといって、それで幸せになれるだろうか?
確かにそれだけで幸せになれる人もいるだろう。最初の一時は幸せだけれど、慣れてしまえばなんとも思わなくなる人もいるかもしれない。最初から幸せなんて感じない、そんな奇特な人もいるかもしれない。
総じて考えてみると、物がもたらす幸せってのには限度があるような気がしないでもない。
では、これならどうだろう?
仲の良い友達や家族とディズニーランドに行ったからといって、それで幸せになれるだろうか?
仲の良い友達や家族と草津温泉に行ったからといって、それで幸せになれるだろうか?
仲の良い友達や家族と、グアム旅行に行ったからといって、それで幸せになれるだろうか?
この問いであれば、素直にイエスと答えられるのではないだろうか。
何となくではあるが、行為がもたらす幸せは物がもたらす幸せより強いような気がしないでもない。
確かに比較して考えてみると、物よりも行為にお金を使う方が幸せになりそうだ。
幸せになれる年収
「物を買ったからといって幸せになれないだって?寝言は寝てから言えよ!!行為に金を使うような道楽を楽しむ余裕はウチにはねぇーんだよっ!!!」
そんな悲痛な声が聞こえてきた。耳を澄ませてみると、その声はなんと、私の心の内からの声にならない叫びであった。
…確かにそうだ。
行為に金を使うまえに、私は明日の為に米や味噌を買わなければならない。まあ、確かにそれらの食物もいくばくかの幸せを運んでくれるが…。
かなり昔の事だが、日経新聞に興味深い記事が乗っていた。幸せとお金の相関関係についてだ。
日本は戦後から現在にかけて発展し続け、GDPは何倍にもなったが幸せと感じる人の数は殆ど変わっていないらしい。
確かに、成功し金銭感覚が狂い没落したミュージシャンや所得隠しで告発された倒産会社社長。金持ちだからって必ずしも幸せな訳でもなさそうだし、成功が不幸を招いてしまった様な人達もいる。
貧しくとも日本なんかより幸福度が高い国もあるし、だったら幸せに金なんて関係ない!?
でも「そうだ!幸せになるのに金なんかかんけーねーよ!」なんて言ってるのは、漏れなく金を稼ぐ事を知らない貧乏人。
それに明らかに「金持ちでも不幸」より「貧乏で不幸」の方が遥かに多い気がする。
日経新聞に掲載された幸せとお金の相関関係についての記事によると、ポイントは年収1500万円らしい。
実は年収1500万以上になるとその後どんなに収入が上がっても幸せレベルはあんまり上がらない。つまり収入がそれ以下の人は貧乏であればあるほど不幸な人が多いという事。
幸せの形は人それぞれだけど、事経済的な面から捉えると年収1500万円というのが1つの基準値になりそうだ。金持ちって言うと何億も稼ぐ社長をイメージしちゃうけど、年収1500万以上稼いでいれば金持ちってカテゴライズしてもいいかもしれない。
幸せとお金の関係まとめ
①幸せを感じるには「物」を買うよりも「行為」の為に使った方が良い。
②年収1500万までは収入アップ=幸せ!であるが、1500万を超えたあたりからその相関関係は薄くなる。
最初に紹介した「体験は消えてしまうからこそ、私たちは素晴らしかった現実を作り上げ、幸せになることができる」というノートン教授の年収がいくらかはわからないが、遊びに出かけて楽しい思い出を作るよりも、暖かい毛布を買った方が幸せって人も絶対にいるはずだ。
これらの事を踏まえて幸せとお金の関係を考えてみると、年収1500万円くらいまでは「物」を買ったほうが「行為」を買うよりも幸福感を感じやすいが、年収1500万円以上になってしまうと物を買うよりも行為を買う方が幸福感を感じやすい、ということになるだろう。
ある意味では、何十億という資産を持っている人物が莫大なお金を投じて得た行為と幸せ、それと同等の幸福感を、夜のスーパーで98円のシュークリームが20%割引になっていることに感じるとしたら、それはそれで幸せなのかもしれない…。
ともあれ、人間にとっての幸せは「お金よりも人間関係の中からもたらされるものの方が素晴らしい」という事が言えそうだ。